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伝わらなかった想い



ぼくは何時からかきみと一緒にいたんだ

笑顔のきみと、無愛想なぼく、周りからは凸凹コンビって

離れたかった、消えたかった、あまりに眩しすぎるきみ

だけどね、それ以上に甘えたかったの
だってぼくは きみが好き


友達のままでずっとずっといられれば、それだけでぼくはいいんだ

世界の全てを愛するきみ
誰よりも綺麗で、誰よりも優しい心の持ち主

光のきみと、影のぼく
それでいいよ
それでいいんだよ
裏と表でいいんだよ


十分すぎる幸せ

ああ、ぼくは幸福者(しあわせもの)



ずっと昔のお話、暗い暗い怪物達が世界のどこからか現れた

ぼくらが暮らす世界には、怪物が溢れていた

ぼくらのお仕事は 怪物を倒すこと

それはね、みんなみんなやらなければいけないお仕事

でもね、ぼくは知ってたよ
知っていたんだ
みんなみんな、こんなことしたくないって


そんな周囲の中であっても、きみだけはひとり頑張ってた

きみがぼくに言った

「世界が平和になったら、また一緒に遊びにいこうね」

指切りげんまん、小さな約束
ぼくときみの、最初で最後の誓い

笑うきみ、つられてぼくも微笑んだ

白いきみ、黒いぼく
交わらない
決して交わらない
でもそれでよかったんだ


きみの隣にいれれば

ぼくの世界の中心はきみだから



お仕事のある日、今日は足場の悪い瓦礫が積もり積もった悪条件

悲鳴をあげる怪物、怪我をする人間
だけど、ぼくは気にしない
きみとの約束果たしたいから

前を行くきみが走る
後ろのぼくには見える
一匹の怪物がきみに近づく

ぼくは―――・・・





宙に舞うぼくの身体を、体を真っ赤に染めた怪物が嘲笑う

地面叩きつけられる体
痛い、痛い、痛い、痛い
だけど、きみと約束したんだ
ぼくにはそれがあるから
ぼくにはそれしかないから

重い手足を叱りながら、ぼくは怪物に向けて走り出す
怪物が気持ち悪く笑う
滑稽だと笑う

ぼくが武器を持ってないから
でもぼくにはたったひとつ残された武器
重たい体を投げ打つように、ぼくは怪物に体当たり


直ぐ傍には、地割れでできた崖

ぼくは怪物と落ちていく

黄昏時を越えた真闇へ落ちていく・・・・・・・・・・・・










本当はね、本当はね、もっと我儘を言いたかったんだ

きみの笑顔を独り占めしたいって、きみを困らせてみたかった

だけど、ああ・・・もうそれは叶わないね
だってぼくは離れてしまった
ぼくは消えてしまった

望まぬことが現実に、望んだことが幻想に
こんな無慈悲な運命、それに支配されたぼくらの世界

その中でぼくは生きていた
きみと一緒に生きてたんだ

最低で糞野郎な世界に、それでも未練がましく手を伸ばして、ぼくはきみに言う


ごめんね

約束守れなかった

ありがとう

ぼくを隣にいさせてくれて

大好き

最期まで伝えなかった想いを

さようなら

どうか、きみが最期まで幸せでいられますように―――・・・・・・










“発信エラー”
(何回繰り返しても繋がらない)

“発信エラー”
(現実を受け入れたくなくて繰り返す)

“発信エラー”
(嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ)

“発信エラー”
(大好きな人が、暗闇の底に消えた)



(知っていた)
(怪物は決していなくならないこと)

(だけど、願っていた)
(愚かにも平和な毎日を)

(笑顔でいたのは、あなたを笑わせたかったから)
(約束したのは、あなたとずっと離れたくなかったから)
(全部全部、あなたが傍にいてくれたから)
(わたしはあなたが好きだったから)


(叶わないと知って願った)
(永遠にあなたの傍にいたいと)

(それでも、たったひとつの約束でさえ)
(運命は無惨に打ち砕く)


(瓦礫に埋もれたかつての街)
(大嫌いなお仕事の中で起きた、よくある悲劇)
(嗚呼神様、もういない神様、嘘だと言って)
(あなたが離れていったなんて、あなたが消えてしまったなんて)

(ねぇお願いたがら嘘だと言ってよ)
(だってまだ―――・・・)





「ーーっうわあああああ゙ああ゙ああああああ゙あああああぁああぁあぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」




“好き”を伝えていないんだ









++++++
なんか僕の書く一発ものは大体二人の登場人物で終わりますね。
あと悲恋ものが多い。

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