離れたくないよ
ねぇファイアル。
貴方はいつまでも私の傍に居てくれるかな?
いつか置いてかれたりしないかな?
ねぇファイアル。
「どうしたリフル?何か表情暗いぞ?」
「へ・・・?」
そう言われて意識を顔に集中する。
私何か変かな?
そう思うけど別段、いつもと変わりはないと思う。
しかし、指摘してきた主は、ずいと顔を近づけてこちらをじっと覗き込んできているので、どうもそうではないらしい。
「私・・・変・・・?」
「いや、変・・・とは違うかな。何か思い詰めてる感じだ」
考え事?と問われても思い当たる節がなくて首を左右に振ることしかできない。
何だか自分のことを自分で把握できていないのがちょっぴり気持ち悪い。どうか、したんだろうか。
色々思い返してもやっぱり分からない。何で?
「おいリフ。余計眉間にシワよってるぞ?」
「ん・・・・・・」
「ごめん余計なこと言っちゃったな。まあよく見ないと分からないような違和感だからさ。気にすんな」
な?と笑って、ファイアルの手がさらりと頭を撫でてくれる。
彼の笑顔と手のひらの感触は好きだ。心が落ち着いて、気持ちが温かくなる。ずっとこうしててもらいたあなぁ何てことも考えてしまうほど。
“いつまで続くの?”
ズキンッ。胸に痛みが走った。
“ファイアルはいつまで私の傍に居てくれるの?”
ドクドクと心臓の音が大きくなる。
「リフル?」
ファイアルが呼んでくれる声が遠い。
“ねぇいつまで?”
“いつまで?”
“ねぇファイアル”
“いつか、貴方と――”
「あ・・・・・・」
怖い。
それはあの日から心の底に刻みついた恐怖。
“さようなら”
あの日、一度私が消えてしまったあの時。
私が初めて、ファイアルと離れてしまったあの記憶。
ギリギリと胸が痛む。
怖い。
今、この穏やかな日々を過ごせば過ごすほどに。
怖い。怖い。怖い。
失うのが、怖い。
「リフル!」
青ざめていく彼女の方を揺さぶる。ハッとしたリフルの瞳は、だけどどこか虚ろだ。
「大丈夫か?やっぱり何か悩みごとでも・・・?」
「・・・・・・ねぇファイアル」
静かに響いた声に、一瞬息が詰まった。
重くて、苦しげな声。
リフルは青ざめ、怯えたような表情で俺を見上げてきた。
「何だ?」
「ファイアルは・・・ファイアルは、いつまで・・・一緒に居てくれるかな・・・?」
「え?」
それは唐突すぎる言葉で、呑み込むのに少しかかった。
いつまで?
そんなの決まってる。
だけどリフルは今にも泣き出しそうな顔でこちらを見上げている。いつの間にか握られた手から、彼女の体の震えが直に伝わってきた。
怯えている。
どうしてかは分からないけど、リフルは怯えている。
いつまでと、苦しそうに。
俺の返事は、決まってる。
「・・・ずっとだよ」
ぎゅっと手を握り返して答えた。しかし、リフルの表情は晴れない。怯えた瞳が再度問いかけてくる。
「ずっと・・・?」
「ああ、ずっとだ」
「ずっとって、いつまで?」
「ずっとはずっとだよ。リフルと俺はずっと一緒だ」
な?と念押ししても瞳から涙が引かない。
違う。
きっと俺の答えはリフルの求める答えじゃない。
でも、俺はこの言葉以外に彼女と歩む日々を表せれる単語を知らない。だから彼女の望む答えを答えてやれない。
情けない。
手を伸ばして、小さな体を抱きしめた。言葉で伝わらないなら体でとは、我ながら本当に情けない。
だけどリフル。この言葉にも行為にも偽りはないんだ。
あの日、一度君を失って、君を取り戻してからずっと変わらない気持ち。
隣にいたい。
リフルの隣でずっと一緒に過ごしたい。
だからこの気持ちが伝わるように、腕に力を込めて君を抱きしめた。
ねぇいつまで一緒に居てくれる?
ずっとだよ。
ずっとずっと一緒に居るよ。
ねぇファイアル。
なぁリフル。
私は貴方とずっと離れたくないよ。
ずっと一緒にいるから、もう泣かないで。
だって私(俺)は、貴方(君)が一番大事だから。
++++++
一緒にいたいよが伝わりあわない。
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