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無意識の怖さ



「ゾロアーク、ナイトバースト!」
「・・・あ、ワ、ワルビアル!かみくだく!」

ミヅキ君が指示をとばす姿を見て、私も少し送れてワルビアルに指示を送る。
そうして遅れた分がちょうどいいズレだったようで、ゾロアークの攻撃で弱った相手に、ワルビアルの攻撃がトドメになった。




「ねぇ、今日何か気になることがあった?」
「へ・・・?」
「いや、何だか普段より呼吸が合わなかったからさ」

ギアステーションのホームでそう問いかけられ、私は顔を青くした。
ズレた原因は分かりきっている。私が彼の勇姿に見とれてしまったせいだ。
しかし、それを本人に言えるものだろうか?いいや、言えるはずない。恥ずかしい。

だからメイはミヅキからの問いかけに「な、何でもないよ」という情けない答えしか返せなかった。

ミヅキはそのまま暫くメイの様子をじっと見ていたが、急にくるりと踵を返すと何処かへ行ってしまった。



「はぁ・・・」

溜め息を吐き、近くの柱に背を預けてズルズルと座り込む。

呆れられただろうか?
仕方ない、私が悪いのだから。

しかも、こんなミスが一回だけ・・・ではない。実はしょっちゅう同じ理由で呼吸がズレる。
もしかしたら、もうペアを組んでもらえないかもしれない。


『それは嫌だなぁ・・・』


じわ、と視界が歪み出す。泣きそうだと分かっていながら、それを止めることが出来ない。

嫌だ、ミヅキ君と一緒に戦えなくなるなんて。
嫌だ、嫌だ、嫌だ。



「・・・・・・嫌だよぉ」
「何が?」
「っ!!?」

驚いてガバッと顔を上げると、きょとんとした表情でミヅキがこちらを見下ろしていた。
途端、呟いた言葉を聞かれた羞恥心に顔が熱くなる。慌てて跳ね起きて手を振って言い訳を並べる。

「やっ、ややややや!何も言ってないよ!!うんうん!別に私は何も呟いてないし!『嫌だ』なんて言ってもないんだから!それに私落ち込んでなんてないし!だから弱気になって悲しくなったとかないし!そもそもミヅキ君は何も聞いてないんだよ!というか聞いてない!聞いてないよねっ!」
「・・・ぁ、うん」

思いっきりたじろがれたが何とか誤魔化せた。余計なことまで言ってしまった気もしないわけではないが、もう何が何だか分からなかったから無視した。


「えっと・・・とりあえずメイは元気・・・でいいのかな?」
「うぅん、うん!めっちゃ元気だよ!元気百倍!むしろ百万倍っ!!」
「あっはは!それじゃあ途中で力尽きちゃいそうな勢いじゃない。やっぱ休憩しようか。ハイ」

握り拳を作る私に、ミヅキ君が笑って何かを差し伸べてきた。が、それが何であるか認識する前に、頬へとてもひんやりしたものが押し当てられて思わず体が跳ねた。


「冷たいっ!!」


半ば悲鳴のような叫びと共に一歩後退すると、ミヅキが腹を抱えて笑いを堪えている姿が目に入った。そして、その手に握られたものも。

「くっふふふ・・・本当に元気なんだ・・・ハイ、サイコソーダ。もしかして炭酸苦手?」
「へ?ううん全然・・・ありがとう・・・・・・じゃなくって、笑うなんてひどいよ!!」
「ごめんごめんって」


未だ笑いを堪えながらこちらにサイコソーダを渡してくれたので、少し不機嫌なままそれを受けとる。
そして、フタを開けたところではたと気づく。


「もしかして、さっきこれを買いに行ってたの?」
「うん?あぁ、何だか調子良くなさそうに見えたからさ、気分転換にどうかな〜って」


嗚呼、なんてことだろう。
こちらのミスで迷惑をかけただけでなく、気をつかってもらうなんて。


「・・・ごめんね。私、ミヅキ君に迷惑しかかけてないよ・・・」

申し訳なさ過ぎてしゅんと頭を垂れる。

「そんなことない」

するとミヅキが、俯いた顔を下から見上げるように覗き込んできた。
そのまま頬を両手で挟まれ、ぐいと顔を上げさせられた。自然と、目と目が合う。

「そんなこと絶対にない。それにおれ、メイと一緒にいるの好きだから、むしろ感謝してるんだ。いつも一緒にマルチ乗ってくれてありがとう!」

にかっと綺麗に笑うミヅキに「ど・・・どういたしまして・・・」と弱々しく返し、わざと冷たいソーダのビンを頬に押し当てる。
火照った顔に、その冷たさがちょうどよかった。


「さっ!残りも蹴散らしてマスター目指そう!」
「う、うん!」



改めていつもの目標を掲げ、二人でサイコソーダを飲んだ。
冷たいはずのソーダは、ちょっとだけ温くなってしまっていた。






無意識の怖さ。

きっと意味は違うんだけど、それでも「好き」なんて言われたら恥ずかしくなっちゃいます。






++++++
そういえば二人きりなミヅメイは初めてでした。
ミヅキのしゃべり方迷走中・・・。

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