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乙女挟んで仲悪し


※名字を捏造してるので嫌な方注意。



「葉柴(はしば)ー!」

友人と雑談をしているところに担任に名指しで呼ばれる。
そちらへ振り返れば、腕をブンブン振って手招きをする教員の姿があったので彼は呼ばれるまま、担任の方に向かった。


「はい?」
「今日の日直はお前だったな?」


ニカリと白い歯を出して笑う、我らの体育会系教師殿はポンポンと傍らの何かを指す。



ゴミ箱だ。
正確に言えば燃えるゴミだ。


担任とゴミ箱を交互に見つめ、わざと首を傾げれば勢いよくGOサインが出される。




彼は友人に別れを言って、ゴミ箱を抱えて教室を出た。





三階から一階まで降り、体育館の外にあるゴミ収集所へ続く渡り廊下を歩く。

日直の仕事にやれやれと肩を竦めながら進むと、普段あまり見ることのない人影がその場所にあった。

立ち番の先生でも居るんだろうかと思いながら近づくと、作業をしていた人影と目が合った。


「あ・・・」
「あれ?こんにちはチェレン君」


そこに居たのは先生ではなく、自分と同じ生徒だった。

チェレン―隣の教室の眼鏡をかけた優等生。
彼女の幼馴染みの一人。

彼は最初、驚いたようにこちらを見ていたが、手元のゴミ箱を見ると納得の表情で口を開いた。


「君もゴミ捨てか、葉柴さん」


・・・いきなり臨戦態勢か。

そもそも彼は自分のことを名字で呼んだりしない。初めて会った翌日にはもう名前を呼び捨てにされていた。

しれっとした態度が性に触るが、それでも顔に笑顔を貼り付けたまま燃えるゴミを捨てる作業に入る。
隣の奴も数秒睨んでいたがその内に作業を再開した。


無言。ガサゴソというゴミを細かく別ける音しかしない。

只でさえ嫌な作業にこの空気は堪えるので、相手が相手だが口を開くことにした。


「君も日直だったの燈志田(ひしだ)君?」


ああでもイヤミ返しは忘れない。
チェレンはムッとした顔で一度こちらを睨むが、素直に返事を寄越してきた。


「そうだけど、ゴミ捨ては自主的にやってるだけで関係ないから」
「へぇ優等生だね」
「別に。担任の震えた体を見ていられなくて代わっただけだよ」


手と口を動かしながら頭の中で彼等の担任の顔を思い出す。
確かかなり高齢のおじいちゃん先生だ。

まぁあのヨボヨボとたまにふらつく姿でゴミ捨てに歩かせるのは、気の毒だと誰だって思うだろう。


「優しいんだね燈志田君は」
「当たり前のことを当たり前のようにしてるだけさ、頼まれて渋々やるような奴と違ってね」


とことんイヤミなヤツ・・・と心の中で毒づくと作業を終えたチェレンが空のゴミ箱を抱え収集所を離れる。

が、その歩みはすぐに止まった。

手だけ動かし様子を伺うが動く気配がない。
なにとなしに気になって見てみると、ヤケに真剣な瞳のチェレンがこちらを見ていた。


「なに?」
「・・・コトハのこと、諦める気は?」


いきなり彼女の名前が出たことに意表を付かれ「え?」と声を漏らしてしまった。

諦める?誰が?何を?




「・・・有り得ないね」
「そう」
「逆に聞くけど、オレが諦めたら君の都合でも良くなるのか?」

「いや」


首を伏せて、何と言おうか少し思案してから口を開く。


「そういうのはないさ」
「だったらどうしてそんなこと聞くの?それともチェレンもコトハのことがす・・・」

「トウヤ」


名を呼んだかと思えば彼はキッと強く睨んでくる。
まるで自分が悪役のように。


「そんなんじゃない、僕とコトハの関係は“幼馴染みの友達”というだけだ」
「じゃあどうして?」


「・・・あんたを見てるとイライラする」


「それだけだ」と言い残しチェレンは教室に帰るため歩き出した。


その背中に舌を出して手を払う動作をしてやる。


諦める気は?だって?



「誰がそう簡単に諦めるかよ・・・過保護者め・・・」


もう一度ヤツが去った方へ舌をつき出す。

どこかで誰かのくしゃみが聞こえた気がした。






(あれぇ?チェレンったら風邪引いたの?)
(違うけど。あれ?ベル、コトハは?)
(今日は別の人と帰るからって、隣の教室行ったよ〜)
(・・・・・・そう)
(私達も帰ろうか)
(・・・ああ)


++++++
名字をつけたかったがために書いた分もどきでした。
ちなみにコトハは「草凪(くさなぎ)」、ベルは「清ノ河(しのかわ)」。幼なじみトリオは最初のポケモンのタイプから、トウヤは半分語呂合わせで・・・。
楽しかったです。また学パロ書くかもです。にっこり。
そして誰か、僕にタイトルのセンスを下さい・・・。

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