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ずっと一緒に



妖怪達に襲われて、がしゃどくろの姿から元に戻れなくなって、それを蜻さま達みんなが助けると言ってくれて。

そして、何も出来ない私の為にみんなが動き出して、ちよちゃん達が妖館に戻って行った。


今、私の隣には渡狸が居る。居てくれる。




気付けば、渡狸とはいつも一緒に居た。

世間で言う幼馴染み。

小さい頃、私がみんなから怖がられた時だって、渡狸だけは傍に居てくれた。

今だって、彼は変化している私に寄り添うように立っている。


『・・・ねぇ、渡狸』

「ん?どうしたカルタ?」


彼が私を見上げる。

がしゃどくろの姿はとても大きいから、いつもなら私が見上げているのにそれが逆転してる。
何だか不思議。



・・・そういえば、いつから私は渡狸のことを、見上げるようになったんだろう?

確か小さな頃は、おんなじ身長だったのに。

いつからだろう?



「どうしたカルタ?・・・やっぱりどっか変なのか?」


呼び掛けておいて、いつまでも黙っている私を見上げて、渡狸が不安気に私を見つめてくる。


『ううん、何でもないよ・・・』


心配させたくなくて、大丈夫だからと、いつもより大きなどくろの手を渡狸に伸ばす。

そうすれば彼は、当たり前のように、その手を握り締めてくれた。


不思議・・・。

この姿は殆んど感覚がないのに、渡狸が触れてくれると温かいって感じる。


『ねぇ、渡狸・・・』

「うん?」

『もしも・・・もしも私が一生元に戻れなくても・・・渡狸は・・・こうやって傍に居てくれる・・・?』



「居るに、決まってるだろう。さっきも言ったじゃねぇか・・・“ずっと一緒に居よう”って」


心なしか、渡狸が私の指を握る力が強くなった気がした。


「姿なんて関係ない!俺は・・・俺はこうやって、カルタと話ができて、カルタと一緒に・・・居られる・・・それだけでいい・・・!それだけで・・・!」

『渡狸・・・』


・・・嬉しい。

ぼんやりとする気持ちの中で、素直にそう思う。


ちょっと前、渡狸が小さい頃の話をしてくれた時とおんなじ。



渡狸が覚えていてくれる。
渡狸が大切にしてくれる。
渡狸が傍に居てくれる。


それだけで私は嬉しい。

・・・でも、きっとこのまま、ずっと一緒には居られない。




トクンッ




『―――ッ』


「・・・?カルタ、どうかしたか?」

『・・・・・・ううん、何でもないよ』


嘘・・・ついた。

波のようにうねる、私を襲う変な感じ。
自分が自分でなくなるような感覚。


怖い。


すごく怖い。

自分が消えてしまいそうで怖い。

渡狸を大事に思うこの気持ちも、失ってしまいそうで。




『渡狸・・・』

「ん?」

『・・・ありがとう』

「へ?あ・・・どうした急に?」


私の言葉に、ビックリしたのか、渡狸が戸惑いの声を出す。

真っ直ぐに私を見てくれる、渡狸の眼。
まだ、私が私である内に、伝えなきゃいけないって思った。


『一緒に居ようって・・・言ってくれたこと・・・。
ありがとう、渡狸・・・』

「な・・・べ、別にお礼なんて言われるほどのことじゃねぇし・・・あ、当たり前のことだろう・・・?
だから・・・その・・・」

『・・・うん、そうだね』


もう一度、渡狸に手を伸ばす。

やっぱり私の手、握ってくれた。


ねぇ、もしも私が元の姿だったら・・・。

今、渡狸は私の手を握るだけじゃなくて、私の体を抱き締めてくれたかな・・・?




ありがとう、渡狸。


『ずっと一緒に居ようね・・・』

「・・・!・・・ああ、ずっと一緒だ」


渡狸が大きく手を広げて、体一杯に私の腕を抱き締めてくれる。

すごく、すごく、温かい・・・。


ありがとう。

ごめんね、渡狸。




『大好きだよ』


想いを詰め込んだその言葉は、カルタの胸の中に染み込んで、消えた。







++++++
渡狸くんとカルタちゃんどストライクすぎてたまらん。

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