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秘相談
「なぁ・・・ルカ」
「ん、何リグゼート?」
「その・・・いきなりで悪いんだが・・・ボクの胸ってそんなに小さいか?」
「・・・・・・へ?」
リグゼートの口から放たれた言葉に、ルカの時がピタリと止まった。
「え・・・えっと・・・どしたの急に?」
狼狽えながら状況を把握しようと必死なルカ。
リグゼートは質問を驚かれたことに少し肩を落としながら言う。
「その、毎日毎日ナズにからかわれてるとどうしとも・・・気になって」
「あぁ・・・えっと・・・うーん・・・色々聞きたいことはあるけど・・・何で僕?」
「何で?」
彼の疑問を聞いて心底不思議そうにきょとんとする彼女。
自覚なし。
「や、ふざけてるのかどうかは知らないけどさ?僕、男だよ?」
「ふざけてないぞ!ルカが男なんて百も承知、だが・・・あの、他に相談しやすそうな人が思い当たらなくて・・・」
顔を伏せてもじもじする。
ルカは心の奥底で、ナズが「リットかーわーいーい♪」と連呼する心情を理解できた気がしたようなしないような。
「えーと・・・つまり君は異性だけど話しやすいだろう僕に悩みを打ち明けてみた・・・と?」
「・・・・・・(こくり)」
「はぁ・・・でもだからといって僕じゃなくてもさ・・・琥珀とか憂透ならそういう話がしやすいんじゃない?似た者同士って感じで」
どう?と小首を傾げて提案を持ちかけるルカ。
しかしリグゼートはその言葉を聞いてわなわなと震え出す。
「・・・・・・じゃないか」
「へ?」
赤い顔をもっと赤くして彼女がぽつりと呟く。が、ルカの耳には届かず彼はリグゼートの方へ耳を傾けた。
「えっと、なんだって?」
「ふ・・・二人とも・・・、ボクより年下なうえに、その・・・育ちがいいじゃないか・・・!」
「あ・・・」
プルプルと震えながら今にも泣き出しそうな声。
悪気はなかったといえ、相手を傷つけたことにルカは慌てる。
「いやっ、性格が似てるからもしかしたら話しやすいかもー?と思って言ってみただけで。そういえばそうだったなーって今気づいた所存でして・・・あー!ごめんなさい!言った僕が悪かったです!!」
「・・・別に、気にしてない」
勢いよく土下座するルカだがリグゼートは顔を逸らしたまま。あからさまに落ち込んだ。
「・・・そうだ、よく考えたら話が思いっきりずれてるじゃねぇか。
おいルカ!もう一回聞くぞ、ボクの胸はそんなに小さいか?」
「え゙っ」
再びルカを問いただすリグゼート。
しかし少年は何と言い繕えば良いのかと迷い、冷や汗をかいた。
正直な話、彼女のバスト部分はお世辞にもご立派ではない。いや、寧ろ無いに等しい。
だがそれをはっきり告げられるほどルカは酷い子じゃない。故に答えに窮している。
「頼むルカ!正直に言ってくれ!ボクの胸は小さいのか!?」
「・・・・・・正直に、言っていいんだね」
「・・・!・・・・・・ああ」
両者、ごくりと唾を飲み構える。
少年は緊張の汗を一筋流しながら真っ直ぐ少女に顔を向けた。
「・・・正直に言うよ。
君のそれは同年代の女性の平均サイズより少し脂肪が足りてないと僕は思います」
「・・・・・・ルカ」
「・・・はい」
「回りくどく誤魔化さなくてもいい、ハッキリと言ってくれ。
ボクの胸はまな板だと」
「ごめん、そういうの僕にはハードルが高過ぎる」
「まな板を肯定したな?」
「・・・!?な・・・なんのこと・・・?」
突き刺さってくる空気にルカは思いっきり視線を彷徨わせる。
「・・・まぁでも、質問に答えてくれたんだ。ありがとなルカ」
「り、リグゼート・・・」
「ふふっ、気にしない・・・っ」
キラリと光る彼女の目元。
無理に平静を装っているようだがどう見たって涙目である。
ルカは胸が締め付けられる思いだった。
「ご・・・ごめんリグゼート」
「謝ってくれるな・・・あ、そういえばルカ、お前さっき『脂肪が足りてない』って言ったよな?」
「うぇ?」
パッと表情を変え彼の顔を覗き込むリグゼート。
いきなりの変化にルカは戸惑う。
「い、言ったけど・・・?」
「つまり・・・脂肪が溜まれば育つってことか?」
「・・・あ、の・・・女性の発育事情は知らないけど・・・まだ16の成長期だし育つんじゃありませんか?」
「そうか・・・!」
よしっとよく分からない気合いを入れ出す彼女。
そして立ち直ったその顔はいつも通りの明るいリグゼートのものだった。
「お役に立てたかな?」
「おぉ!何か元気出てきた!ありがとうルカ!」
ガバッ!
「うわっ?!」
元気百倍なリグゼートが全力でルカに抱きつく。
女の子からの抱擁に健全な男子のルカは僅かに顔を赤らめる。が、
「あ、あの!り・・・あ、頬擦りはくすぐ・・・!」
「おおぉ!ルカの肌すべすべ・・・!」
「聞いてないし」
扱いはどう考えても男女のそれではなくて。
ルカは小さく息を吐くと暫くリグゼートの気がすむまでされるがままになっていた。
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