Lと未熟な『ワタリ』の話。 | ナノ


  パシリにご褒美



「ロールケーキが食べたいです。」

ワタリ特製、カスタードたっぷりのシュークリームをほお張りLが言う。
朝からずっとシュークリームを食べ続けているのにまだ食べるつもりだろうか。
驚きを隠せない私を尻目にワタリさんは口元に笑みを蓄えながら追加のシュークリームを作る。

「ロールケーキって、今シュークリーム食べてるところじゃない。」
「これを見てください。」

カスタードがついた指でTVを指差す。
ちょうどお昼の情報番組でロールケーキの特集をやっているらしい。
滑らかなホイップクリームをふんだんに使ったロールケーキをTVのタレントは大げさにリポートする。
売っているお店はここからそれほど遠くは無い。

「早くしないと売り切れてしまう可能性があります。」
「だからって別に今日じゃなくても…」
「明日以降から番組をみた視聴者が押しかけしばらく手に入らないかも知れません。」

指のカスタードを妙に艶めかしいしぐさで舐め取りながらLは私を見上げる。
Lはめったに外に出かけたりしないし、ワタリさんも忙しそう。
この家で特に仕事も無くダラダラしているのは私だけ。
…どうやら私が行くしかないらしい。

「はいはい、分かりました!TVのと同じのでいいんでしょ?」
「よろしくお願いします。」

テーブルの上に置かれた携帯をもって家を出る。
私はパシリか。

「げ…、もう並んでる。」

TV効果なのかもともと人気店だったのか、放送からそんなに時間はたっていないはずなのにお店にはたくさんのお客さんがいて、店に収まりきらない客の長蛇の列が見える。
ため息をついてはるか先にある最後尾に並ぶ。

「日が暮れる前に帰れたらいいんだけど。」

お目当てのロールケーキが買えたとき、もうすっかり日は沈んであたりは暗く街の明かりが煌めいていた。
Lが今か今かとロールケーキを待つ姿が鮮明に映し出され、急いで家路に着いた
玄関のドアを開けると目の前にLが現れる。

「うわ、びっくりした。」

と私が言うのが早いか、Lが抱きしめるのが早いか。
気づけば私はLの腕の中だった。

「ちょ、ちょっと!」
「遅かったですね」

私の肩におでこを乗っけたままLが呟く。心地よい声が耳に直接響いてくすぐったい。

「想像以上にたくさん並んでて、遅くなっちゃった。ごめんね、待ってたでしょ。」
「いえ、ロールケーキは後で食べるのでいいです。私のせいでスミマセン。」

心なしかLの腕の力が強まる。
ケーキを持っていないほうの手でLの背中をぽんぽんと叩いて

「いいの、別に。ここじゃなんだからリビングに戻って。せっかく買ってきたんだから切り分けてきてあげる。ね?」

心配してくれていたんだろうか。
そう考えると彼がとても愛おしくて仕方が無い。
切り分けたケーキをむしゃむしゃとおいしそうに食べる姿を見ていると並んできたかいがあったというものだ。
パシリでもかまわない。Lが喜んでくれるなら使いっ走りぐらい安いもんだ。

「あまりにも遅いので何度も連絡を入れたのに全くつながらないので心配しました。」
「え?ほんと?携帯マナーモードだし全然気がつかなかった」

ポケットに入れっぱなしの携帯をみるとLと表示された不在通知が山のように来ていた

「おおかた、そんな所だろうと思いました。レミは携帯の意義を全く分かっていませんね。」
「これに関しては返す言葉もありません…」
「まぁ、いいです。こうしてケーキと一緒に無事に帰ってきてくれたので」
「なに〜?Lもしかしでレミの事心配してたんだ?」

すこし間をおいて「・・・多少は」とLが返す
あぁどうしよう。にやけがとまらない。
Lが私のこと心配して玄関で待っていてくれたなんて…

ーチュッ

頬になにやらやわらかい感触を感じてサッとLを見る。

「L、いまなにしたの。」
「レミにご褒美をあげただけです。深い意味はありません。」

そういってまた新しいケーキを口に含む。

「ねぇねぇ!もっとご褒美ないの!?」

舞い上がって詰め寄るがもうLの意識は完全にロールケーキだ。
残念、とばかりにため息をつくとLが耳元に顔をよせて

「食べ終わったら嫌というほどあげます。」とささやいた。

next / prev

[TOP]

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -