Lと未熟な『ワタリ』の話。 | ナノ


  チョコレート争奪戦



「ねぇ、L。ちゅーしよっか!」
「…」

聞こえているのか聞こえていないのか、きっと聞こえているけどあえて無視しているのだろう。
ソファの上で膝を立てて座るLとそのソファの肘置きに腰掛けているレミのこの会話はもうすでに4回目だ。
Lはワタリが置いていったであろう山のように積み重なったドーナツを片手にぱらぱらと捜査資料をめくる。

「ねーえ!無視してんの?断わるなら断わってよ〜、無視じゃなくてさー。」

きっとLにとって今はレミの会話に答えるのですら時間が惜しいのだろう。
2冊の捜査資料を交互に見ながら器用にコーヒーに角砂糖を入れていく。
当然、レミとしては面白くない。
しかしいいことを思いついたようでヒョイとソファの腰掛から降りるとキッチンに向かいなにやら戸棚の中を物色する。

彼女が再びLのいるリビングに戻ってきたとき、大量にあったドーナツの山は消えうせ、口がさびしいのか自分の親指でしきりに唇を弄りだすL。
いつもならそうなる前にワタリが新しいお菓子をまた山のように積んで補充しに来るのだが今はあいにく買出し中。

まさに絶好のチャンス。
キッチンから持ってきたビニールの包装紙を大げさに開けながらまた元の肘置きに腰掛ける。
持ってきたのは某有名洋菓子店の一口サイズのチョコレート。

「わぁー、すごい。可愛いし口の中でチョコレートがとろけてすっごくおいしい!」

あえてLの横で大きな声でチョコレートを食べる。
案の定彼はチョコレートに釘付けだ。
でも自分からどうぞなんていうつもりは無い。さっきまで私を無視した罰だ。

「レミ、何を食べてるんですか?」
「すごくおいしいチョコレート!この間キッチンの戸棚にあるの見つけちゃったの。」
「私の分はないんですか?」
「…残念!今からレミが食べるのが最後の一個。もう少し早く言ってくれたらあったのにね。」

「そうですか」と呟いて捜査資料を机の上に投げ立てていた膝を地面に下ろす。
その姿をみてよっぽどショックだったのだと感じ、少し申し訳ない気分になる。
しかしその瞬間、腕をグイッと掴まれてそのまま後ろのソファに倒れこむ。
Lの膝の上にすっぽりと収まり上から彼が見下ろしている。

「どうしてレミはそんなに私に意地悪するんですか。」
「別に?Lだってさっきまでレミの事無視してたでしょ?お互い様。」
「さっきまで忙しかったんです。そのあとキスしようと思ってました。」
「ふーんだ。今さらしても遅いんだから。もうこれは、わたひが食べひゃったもん。」

最後のチョコレートを口に放り投げてニヤリとLを見上げる。
すると私の後頭部を手で支えてゆっくりとLの顔が近づいてきた。
深くクマが刻まれた目と形のよい唇が迫ってくる。
思わず口を結んだけれどチロチロとLの舌が唇をなぞってこじ開けられてしまった。

長いLの舌が口の中を犯してゆく。
私の口の中を弄るように自由に動き回り、

「はぁ、チョコレートいただきました。」

私の口に残ったのはLの熱とチョコレートの残り香だけで
口に入れたばかりのチョコレートは簡単にLに奪われてしまった。

「ずるいっ!さっきまであんなにたくさんドーナツ食べてたのにっ!返してっ」

今度は私がLの顔をガッチリと固定して唇を重ねる。
さっき自分がされたようにLの口の中のチョコレートを探す。

「んっ、ふぁ…チョコ。かえしてよぉ」
「私からそう簡単に取り返せると思わないでください」

チョコを探そうにもそのたびにLの舌が私の舌に絡み付いて邪魔をする。
そうして結局

「んん、あ…。はぁ、残念。もう食べちゃいました。」

そういって子供みたいに笑ってまだチョコの味の残る唇が私に近づいてきた。


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