Lと未熟な『ワタリ』の話。 | ナノ


  布団の中の逢引



雨の音がする。
ポツポツという音からだんだん激しくザーザーと音を立て始める。
何か大事なものまで流れ落ちてしまいそうで雨はあまり好きじゃない。

「レミさん、雨がきつくなってきましたので窓を閉めましょう。お手伝い願えますかな?」
「あ、ワタリさん。もちろん」

柔らかな物腰で手前のカーテンを閉めるワタリさん。
返事をして椅子から降りて窓へ向かう。
Lが作ったこの家(家というより捜査本部って感じだけど)は窓がたくさんあって全部閉めるのにも一苦労だった。
どうせここから出ないで引きこもってるんだから窓なんていらないだろうに、

「しかし、ひどく降って来ましたね。」
「えぇ、今夜は一晩こんな調子が続くようです。レミさんの部屋も窓を確認してからお休みになってください。」

そういってワタリさんはLの部屋のカーテンを閉めに行く。
時計はもう12時を回りそう。私ももう寝よう。
窓を確認して布団にもぐりこむ。
あぁ、お布団ってなんてあったかくて気持ちいいんだろう。
その瞬間布団の中から腕が伸びてきて私を捕まえてグイッと自分のほうへ寄せる。
ここでそんな事ができるのは

「…えーる。いつからここにいたの?」
「レミが来る前から部屋にはいました。ベッドに入ったのはレミが入ってからです。」
「ワタリさん探してるんじゃない?」
「その心配はありません。ワタリには部屋にメモを残しておきました。彼なら、窓を閉める際に気づいてくれるでしょう。」

ずいぶんと用意周到だ。おそらく計画的に私のベッドに忍び込もうとしていたんだろう。

「女性の寝室に勝手に入るなんてちょっと不躾じゃない?」
「直接頼んでもレミは入れてくれませんから。」

「それに、」と付け足してLはさらに強く腕を自分のほうへ引く。
私の背中とLのおなかは隙間が無いほどぴったりとくっつき、私の頭の後ろからLの声が響く。

「雨の音がうるさくて一人じゃ寝れないんです。今晩だけですから」

そんな風に言われたらどう断わっていいか分からないじゃないか。
Lは私の扱い方を熟知しているようだ。

「しょうがないなぁ、そんな言い方されると追い出すにも追い出せないじゃない。」
「ありがとうございます。」

くるりと布団の中で体を回転させて向かい合う。
真っ暗だから何も見えないけれどLの顔がすぐ近くにある気配が伝わる。
耳をすませば私が今どれぐらいドキドキしているかなんて彼には聞こえてしまうんじゃないか。
これは想像以上に恥ずかしい!
見えないLの視線を感じてフイッと目線を下にそらせる

「レミ、目を逸らさないでください。」
「むむむっムリムリ!近いし、恥ずかしいもん…」

Lの指が私の顎をクイッと持ち上げて目線を合わさせる。
暗さに慣れてきた目でLもまた目線を逸らさずに私を見ていることが分かる。

「どうせ一度だけなんです。今日だけはこのままで…」

そういうとLの腕はまた私の後ろに回されてギュッと抱きしめる。
だんだんLの顔が近づいてきてキスされると思い固く目を閉じる。

Lの唇が触れたのはおでこだった。
そのあと左の瞼、右の瞼。鼻の頭と頬に優しくLの唇が触れる。
まるで小鳥がするような可愛らしいキス。
唇をむさぼるようないつものキスを想像していたからホッとしたような、残念なような…

「いつもの激しいヤツだと思ってた。」
「大丈夫です、今日はしません。」
「え!?うそ!なんで?」

確かにアレされると息できないし苦しいんだけど、でもせっかくこんな近くにLがいるのにアレができないなんて少し寂しい。
少ししょげていると次は耳元にキスが降ってくる。
くすぐったくてフフッと笑うと耳元でLが

「私もしたいのは山々なんですが、ベッドの上でキスしたらそれ以上のこともしたくなって我慢できません。」

とささやいた。
そんなLが可愛らしくて愛おしくて、彼の首に手を回して唇にキスをした。

next / prev

[TOP]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -