地獄へ連行
「死んだのは、先週ぐらい。
友達と遊んだ帰りにわき見運転してた車にはねられちゃって、もう凄いんだから!
映画みたいにね、ポーンて飛んでいったわけ。それで気がついたらこの状態。」
まいは指で毛先を弄りながら今までの経緯を話した。
死んだもののどこへ行くわけでもなくただフラフラと歩いていたのだという。
「家とかに帰らないんですか?そういう人が多いんですけどね」
「一回は帰ったよー、でも泣いてるママとか落ち込んでる家族見るのなんて嫌じゃん?しかも葬式のときの遺影よりによってすっぴんの時の写真だったの!
もー最悪でしょ?どうせならプリとかにして欲しかったよ…」
と口を尖らせて怒ったフリをする。
たいていの死者はみんな文字通り生気が無く辛気臭い顔をしている。
特にまいのようにまだ若い人間は未練が強いものだ。
「それで?これからまいはどうすればいいわけ?」
「そうですね、ここは生者の世界ですしいったん十王の裁きを受けに行くべきですね。
本来なら魂が勝手に導かれたり、またはコチラからお迎えにあがるべきでした。」
鬼灯は淡々と事務的に説明すると
「我々も今から帰るところですのでお連れいたします。」
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三途の川のほとりに着くと
「では、また」とまいに一礼した。
その時、鬼灯のかぶっていた帽子がまいの手でとられた。
「へーホントにツノ生えてるんだね」
と彼のツノをまじまじと見た。
さすがに唐瓜も茄子も固まった。
「まいさん、でしたね?初対面の人の、ましてや年上の帽子をいきなり剥ぎ取るなんて失礼です」
「いや〜ツノってホントに生えてるのか気になってー、
ていうかお兄さんこそまいが自己紹介したのに自分は名乗らないなんて失礼じゃない?」
そういってサラッと流れた髪を後ろに流す。
「第5裁判官、閻魔大王の第一補佐の鬼灯です。」
目もあわせずに言うとまいの手から帽子をとって歩いていった。
唐瓜たちも慌ててついて行く。
「ふーん、またね。鬼灯」
まいは振り返らない彼に手を振った
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