自縛霊女子高生
鬼灯は大きな帽子をかぶり、日ごろ着ている黒い着流しを脱いだ。
彼は時たま視察をしに現世にやってくる。
着流しではさすがに浮いてしまうので現代にあわせた服に着替えるのだ。
この服はどこから調達してくるかは謎である。
「茄子さん、唐瓜さん準備はできましたか?」
鬼灯の問いかけに彼同様現代の服に身を包んだ唐瓜たちが返事をした。
今回の視察にも彼らが同行するようである。
「今回の目的は今の現世と地獄の罰の内容とが対応しているかを視察に行くのでくれぐれもはぐれないように。」
「わかりました、鬼灯さま!」
現世に下りた3人は現世の街をみてまわって。
はたから見れば観光にやってきた兄弟のようである。
「あれ?茄子さんついてきてます?」
「え?…いない。」
さっきから異様に後ろが静かだと感じた鬼灯が後ろを振り返ると後ろには唐瓜の姿しかない。
「はぁ〜すいません!多分どこかで道草してるんだと思います。おれちょっと見てきます。」
「分かりました。見つけたら連絡ください。私はあっちを探してきます。」
唐瓜は自分達が通った道をさかのぼっていった。
白髪の茄子はすぐにわかった。
どうやら誰かと話しているようである。
「いた!こら茄子っ!勝手にいなくなるなよ。」
「あっ唐瓜っ。違うんだよ〜この女の子が…」
唐瓜の目線の先には一人の女の子が立っていた。
先ほど茄子と喋っていたのは彼女らしい。
唐瓜が抱いた彼女の第一印象はまさに「現代の女の子」である。
胸まで伸ばしたサラサラの髪の毛は亜麻色に染め上げられ
ブレザーに包まれた体からすらりとした手足が伸びており、意志の強そうな目が印象的だった。
「あ、友達?迷子じゃなくてよかったね。」
彼女は唐瓜をみて言った。
「おおおお、お前っ!人間にそんな喋りかけたりしちゃダメだろ!?」
「ちがうんだよぉ〜、」
唐瓜は茄子の襟元を掴んでブンブン揺らす。
茄子は首をカクンカクンさせながら首を振った。
「あ、見つかったみたいですね。」
背後から鬼灯が現れた。鬼灯は茄子をみると
「勝手にはぐれたら時間の無駄になるでしょう。行きますよ」
というと踵を返してもと来た方向へ歩いていった。
唐瓜も茄子を引きずるように後を追う。
「違うんだってば〜、お姉さん亡者でしょ?こんなところにいちゃダメだよ。」
空気がぴたりととまった。唐瓜と鬼灯は彼女のほうを見る。
彼女は茄子を少し驚いた顔をして見つめた。
「なんで分かっちゃったの?君すごいね〜。確かに死んでるよ。
まい多分自縛霊なんだぁ〜」
まいと名乗った女の子はにこっと笑って「JKだよ」と付け足した。
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