JKに振り回されても鬼灯は冷徹 | ナノ


  その腕は誰の?




「まい。本当にいいんですね?」
「いいってば、何回も言わせないでよ」
「後で文句言っても知りませんよ。」
「はいはい、言わない言わなーい」


まいは鬼灯が何度も念押しするのをかき消すように「言わない」を繰り返して彼の腕に自分の腕を絡ませる。
そんなまいの態度に最初はムッとしていた鬼灯だが、組んだ腕と嬉しそうな彼女の横顔をみると諦めるかのように軽く息を吐いた。


「それにしてもお昼から丸々お休みなんてめずらしいね」
「そうですね、だいたいこの時期は亡者も少なくて比較的に仕事が楽なんですが今日ほど仕事が無い、というのも珍しいですね。」


どうやら多忙で有名な鬼灯は今日は昼からOFFらしい。
暇があれば金魚草やら視察やらで休みらしい休みを取らない彼の貴重な「何も予定の無い時間」をみすみす見逃す手は無いだろう。


「ねぇ!デパートに買い物に行きたいっ連れてって!」


半分駄々の入り混じったおねだりをして鬼灯を連行することに成功したのだ。


鬼灯の言ったとおり比較的仕事が少ない時期だからかデパートに行っても仕事を早めに切り上げた獄卒たちで賑わっていた。


「そういえば、」
「ん?なに?」
「デパートに連れて行け、と言われたので連れて来ましたが何の用事ですか?」
「え〜、特に無いよ。何にも無い」


「は?」という声とともに隣の鬼灯から身震いするほどの寒気が伝わってくる。


「用事も無いのに人の休みつぶしてこんな所につれてきたんですか。」
「ち、違うってば!そんな怒らないでよ」
「黙りなさい。何も違わないでしょう。」


いよいよ鬼灯のただでさえ釣りあがった目がより一層釣りあがる


「まいはただ鬼灯と一緒に出かけたかったの!
ウィンドウショッピングとかあるじゃん?あーいうの。
特に買う物は無いけど2人でブラブラ歩いて、欲しい物見つけたらソレ買って…みたいな、ねっ」


「ねっ」と一緒にとびきり可愛く笑って見せるが鬼灯は眉一つ動かさず依然としてまいを見下ろす、いやにらみつけるといった方が正しいのか…


「はぁ〜、ハイハイ。目的を作ればいいんでしょ。目的をつくれば!え〜と…そう!帯が欲しいの、帯!」
「帯ですか?」
「そう、帯。この間お香さんに着物もらったじゃない?で、着物はあるんだけど帯が無いから着れないの。そうそう、まい帯が欲しかったんだ〜忘れてた」


まいの言葉を胡散臭そうに鬼灯は見るが、確かにお香の帯はお香自身が大好きな蛇なのでまいがつけるわけにはいかない。
まいの言う、「帯が無い」のも事実といえば事実だ。


「はぁ〜、本当に、あなたはしょうもないですね。では帯を探しに行きましょうか」


そういって鬼灯は比較的若い女性獄卒がこぞって買いに来るお店の前にやってきた。


「わぁ〜可愛いっ」
「買う場所はここでよろしいですか?」
「いい、いいっ!むしろ想像以上なんだけど!」


繊細な装飾品が施されたかんざしや金糸の模様が美しい帯や着物などまいだけでなくどんな女の子の心もくすぐるようなアイテムにまいは目を輝かせる。


「それはなによりです。ではここで待っているのであなたは好きな物を選んできなさい」
「え〜!?なんで?鬼灯も一緒に見ようよっ」
「あなたはともかく、あーいうお店に私みたいなのが入ると私もなんとなく気まずいですし回りも気まずくなるんですよ。あの店は女性の領域なんですから男の私は入らないほうがいいんです。」


ぶーっとほほを膨らませて拗ねて見せるが鬼灯も譲れないといった様子でしかたなくまいはお店の入り口へ歩き出した。


「つまんないの、鬼灯と一緒に買い物したくて来たのに…」


最後の抵抗にくるっと振り返って鬼灯を見ると、なんと金髪のショートヘアの美しい女の人が鬼灯と楽しそうに話をしている。
鬼灯のほうも女性と顔見知りのようでまいの知らない世界がその場に広がっていた。


「え…どうしよ、あの人だれ!?」


一種のパニックになってしまい店のほうに向かうことも鬼灯の元に戻ることも出来ずまいはその場に立ち尽くす。
が、女性がじゃれるように鬼灯の腕にしがみついた瞬間にまいの頭は真っ白になり、体だけが鬼灯達のほうへ駆け出す。


「その腕は、まいのなんですけどっ!」


鬼灯がまいの存在に気づいた瞬間にはもう彼の唇はまいの唇によって塞がれていた。
なにか言いたげに「モゴモゴ」と声を漏らすが観念したのかまいが唇を離すと同時にまいの顔をつかんでまた角度を変えてキスを繰り返す。
そんな鬼灯に答えるようにまいも自分の腕を鬼灯の首に回そうとした、が


「あら、見せ付けちゃって。鬼灯様も大胆ね。」


先ほどの女性の声で我に返って2人とも顔を離す。


「可愛らしい方ね、初めまして。リリスよ」


リリスと名乗る美しい女性はやわらかく微笑んで手を差し出す。
反射的にまいもオズオズと手を差し出した。


「リリス様、先ほどは失礼しました。こちらが先ほどお話した保留中で私が監視員を務める亡者のまいです。」
「あら、てっきり恋人なんだと思ってた。鬼灯様も案外やるわね、まい、ちゃん?いきなりでごめんなさいね。あれはアタシなりのあいさつみたいなものだから気にしないでね。アタシ、とってもステキな財h…だんな様がいるから」


「いま財布って言いかけましたよね」という鬼灯のつっこみに触れないでリリスは去っていった。


「…公衆の面前であんなことしてごめんなさい。」
「おや、めずらしい。何で怒られるかちゃんとわかってたんですね。」


鬼灯は反省してうつむくまいの頭に骨ばった大きな手をおいて


「まぁ、私もあなたの誘惑にのってしまったので今回は何もいいませんが」といってやさしく撫でた。


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