■6
「今のもなかなか良かった。」
スプラッシュマウンテンから始まり、順調にアトラクションを制覇していってる私たち。
ファストパスの時間になって、スペースマウンテンに乗ったら、リヴァイさんがぽつり、と呟いた。
「やっぱりこういう絶叫系が好きなんですか?」
「まぁ…嫌いじゃないな。」
最初のスプラッシュマウンテンの時からそうかな?って思っていたけど、案の定、とでも言うのか、リヴァイさんはいわゆる絶叫系をお気に召したようだ。
「なんだ?休憩か?」
「いえ、1つくらいパレードも見ておこうかな、って。」
ちなみに、私は絶叫系はあまり好きじゃない。
別に苦手とか、嫌い、ってわけじゃないけど、自分からは好んで乗らない。
スプラッシュマウンテンとかなら、まだいいけど、スペースマウンテンははっきり言って、乗った後ちょっと休憩がほしい。
……なんて言ったら、お前なんでコレ乗ったんだ?って言われそうだから、あえてパレードにあたりそうな時間でスペースマウンテンを選択した。
夕方陽も傾き始めた中でのパレード待ちの間、デジカメで今日撮った写真を見ていた。
「結構よく撮れてますね。」
「だな。」
隣で一緒に覗き込むようにデジカメを見ていたリヴァイさんにそう言いながらデジカメに入っている写真を見ていく。
…リヴァイさん、やっぱり無理してるんじゃないかなぁ、って。
デジカメに写る姿を見て、そんなこと思った。
そしてパレードも始まり、写真も撮って、音と共にパレードが去って行き、それまで座っていた人たちも立ち上がり、各々次の目的地へと歩き出し始めて行った。
「リヴァイさん、」
周囲の人たち同様に立ち上がり、次どこ行くんだ?と言いながら歩きだそうとしているリヴァイさんを呼び止めた。
「今日は、ありがとうございました。」
「あ?」
「すごく楽しかった。」
私の言葉にリヴァイさんは顔全体に「?」を飛ばしているようだった。
「もう、十分です。明日お仕事あるし、帰りましょう。」
そもそも最初からリヴァイさんはこういう場所は行きたくないと言っていた人だ。
昨日、行けなかったからとは言え、わざわざチケットを買って来るようなこと、しないはずだ。
しかももう2度とないんじゃないか、って、すっごく詰め込んであちこちつきあわせた。
だからこれ以上、つきあせるのは、悪い気がした。
「馬鹿かお前。」
「え?」
私の言葉にリヴァイさんはそれまで被っていたドナルドの帽子に手をかけた。
「わざわざここまで来たのになんでこんな中途半端な時間に帰るんだ?」
空いているもう片方の手で、私が被っているデイジーの帽子に手をかけた。
「どうせ来たからには閉園までいるぞ。」
そう言いながら、それまで自分が被っていたドナルドの帽子を私に被せ、私が被っていたデイジーの帽子を自分が被った。
「…明日、仕事が、」
「お前、人をオヤジ扱いするな。1日ここで遊んだくらいで、仕事に支障が出るような歳じゃない。」
ジロリ、と、私を睨むリヴァイさん。
「でも、」
「最も、お前が帰りたいなら話は別だがな。」
「そ、んなこと、」
「じゃあいいじゃねぇか。次はどこだ?」
リヴァイさんはマップを広げながら言った。
「リヴァイさん、」
「なんだ?」
「あ、まり、似合いません、ね…ピンク…。」
「馬鹿言え。俺だってそれなりに似合う。」
ほら行くぞ、と、私の手を引いて歩き出した。
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