2000年後もラブソングを


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Devote sweet time to you


3


「…はい、」
「あ、フィーナ?あのさぁ、昨日頼み忘れちゃってディズニー行ったら今しか売ってないダッフィーのぬいぐるみ買ってきてほしいんだけど、」
「…」
「シェリーメイとセットで買ってきてほしいんだけどいい?」
「……」
「…ね?お金払うからさ?」
「………リコちゃん、」
「うん?」
「……リコちゃん、」
「…………お前、泣いてる?」
「リコちゃん、」
「は?今どこ!?ディズニーじゃないの!?」


翌朝、スマホの電源を入れた直後、リコちゃんから電話がかかってきた。
一晩寝て(厳密にはあまり眠れなかったけど)少しは落ち着いたと思っていたけど、リコちゃんの声を聞いたらそうでもなくて…。
涙が溢れてきた私にリコちゃんは敏感に感じ取ったらしく、そのまま事の経緯を伝えた。


「仕事だから、仕方ないと、思う、けど、」


リヴァイさんが言った通り、仕事で大変なミスがあって同じ部署の人たちが出社、ってなった時、一応「部下」と言う人間がいる立場のリヴァイさんが、まさかディズニー行くからって休めるわけがない。
それはわかってる。
わかってる、けど…、


「…何も、今日じゃなくて、いいじゃない、って…。」


納得がいくか、って言ったら、それはやっぱり別な話なわけで…。
そう思ってしまうのは、きっと私がまだ学生で、リヴァイさんのように責任ある仕事をしたことがないからなのかもしれない。
でも、それでも。
よりによって、今日じゃなくて、いいじゃない、って…。
そう思わずには、いられなかった…。
そして、きっと今、仕事を頑張ってるリヴァイさんに対してそう思ってしまう自分が、嫌で嫌で仕方なかった。




「…なんだこれは?」
「で、ですから改めて作成し直した書類を、」
「全然なってない。全てやり直せ。」
「え!?ぜ、全部やり直すんですか!?でもそれじゃあ、」
「おい。」
「はい。」
「グダグダ言ってる暇あったらさっさと仕事しろ。いいか、これは『命令』だ。今日中に全て終わらせろ。明日も仕事する気なんざねぇんだ、わかったな?」
「………はい。」
「おい、お前らもだ。俺が言った各自のノルマの3分の2が終わるまで昼飯に行くことも許さん。いいな?」
「(…リヴァイさん、機嫌悪ぃ…)」
「(誰だよ、こんなミスした奴…)」
「(でもリヴァイさんが誰より仕事抱えてるから誰も文句言えねぇ…)」
「手が止まってるぞ!!」
「「「はいっ!!」」」




「それで?アイツはなんて?」


ポツリ、ポツリと電話越しに愚痴った私に辛抱強くつきあってくれているリコちゃん。


「わかんない、」
「わかんないってなんで?」
「…さっき、」
「うん?」
「Line見たら何通かメッセージ着てたけど、まだ開いてないから…。」
「…」


私の言葉を聞いて、リコちゃんは大きなため息を吐いた。


「お前、自分で言っただろう?仕事で仕方ないことだ、って。」
「…」
「なのにスルーするの?」
「…そ、れは、」


呆れたような声を出すリコちゃんに、すごく居た堪れなくなった。


「けどまぁ、フィーナの気持ちもわかるけどね。」
「…」
「あのチビがそういうとこ行こうなんて、もう2度と来ないかもしれないし。」
「…うん。」


そこなんだ、結局。
リヴァイさんが仕事なのは仕方がない、って思っても、日にち指定でもらったチケットを使わなくなって、きっともうディズニーに行くことないだろうな、って。
そう、思うから…。


「でもアイツが言ったんだろ?『この埋め合わせはする』って!」
「うん。」
「なら『埋め合わせ』させればいいじゃん?行けなくなったディズニー、今度こそ連れていけ、って言って!」
「…………けど、」
「あのねぇ、」


そこまで言うと、リコちゃんはもう1度、大きなため息を吐いた。


「思ってること言わずそうやってウジウジしてる方が、アイツには堪えると思うよ?」
「…」
「Line、見てみなって。何通か入ってる、ってことは、きっと今日の謝罪と、明日は会えるか〜とかそんなところじゃん?」
「……」
「だから言ってみたら?ディズニー行くなら会ってやってもいい、って!」


リコちゃんは笑いながらそう言った。


「………そこまではさすがに、」
「そ?言ってみても大丈夫だと思うけど?」
「…や、ほんとに、」
「アイツのころだから?」
「うん?」
「今頃なっかなかフィーナから返信こないどころか既読すらつかないからすっごい機嫌悪くなって同僚に当たり散らしてそうだよね。」
「…や、さす、がに、それは、」
「可哀想なのはアイツの同僚だよな。休日出勤な上、機嫌悪い同僚抱えて仕事が捗るかどうか…。」
「…」
「本人たちも嫌だろうに、ほんっと、可哀想。」
「……」
「そう思わないか?」


リヴァイさんが私の態度に機嫌が悪くなっているかはわからないけど、休日出勤で機嫌が悪いと言うのは、わかる気がした。


「…ち、ちょ、っと、Lineして、みる。」
「そ?じゃあ電話切るよ?」
「うん。ありがとう、リコちゃん。」
「ディズニー行った時はダッフィーとシェリーメイね。」
「うん、わかった。」


そう言って、リコちゃんと電話を切り、Lineのリヴァイさんとのトークページをタップした。


『本当に悪かった』

『今度必ず行こう』

『日曜は暇か?会いたい』


スタンプも何にもない画面に短い文が並んでいた。
すごく、リヴァイさんらしい。


『お疲れ様です。充電切れてしまってて気づきませんでした。はい、今度、一緒に行きましょう。日曜、時間あります。私も、会いたいです。』


それだけ打って、スマホを置いた。



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bkm

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