2000年後もラブソングを


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Devote sweet time to you


2


「フィーナ。」
「はい?」
「…これを会社の同僚から貰ったんだが、」


いつものように、放課後、リヴァイさんとお家デートをしていた時のこと。
ご飯も食べて片づけよう、っていそいそと動きだそうとしたら、リヴァイさんが徐にカバンの中から何かを取り出してテーブルの上に置いた。


「なんですか?これ…。」
「見ていいぞ。」
「え、えぇ、っと、…チケット?どこの、」


リヴァイさんの言葉に、テーブルに置かれた封筒を手に取り、中を見るとディズニーリゾートのパークチケットが2枚入ってた。


「なんの会話の流れだったか、それを貰うことになってな。」
「…」
「見てわかるように日付指定されているが、」
「……」
「お前、行くか?」
「………」
「……まぁ、いらないなら他の奴にでも」
「いいんですかっ!?」
「あ?あぁ…。」
「2枚ってことはリヴァイさんと、ってことですよね!?」
「まぁ、そうだな。」
「本当にいいんですかっ!?」
「…まずいならそもそも誘わないと思うんだが…。」


いきなりの出来事にチケットを握りしめながら話す私を前に、リヴァイさんは食後の紅茶を飲みながら答えた。


「そうですよね!えぇっと、2週間後の土曜日ですねっ!大丈夫です!!絶対行きます!!」
「…」
「あぁ、でも2週間後だと、まだ天気予報出てませんね!晴れるかなぁ…!」
「……」
「けどあんまり天気良すぎるのも大変なんで曇りくらいが理想ですよね!」
「………」
「そう思いません!?」
「あ?あぁ、そうだな…。」
「ですよねっ!!」




「(たかがチケット見ただけで、こんなに喜ぶとは思わなかった…)」




すっかり舞い上がった私は、リヴァイさんがそんなこと思ってるなんて知る由もなかった。
それからは(私の中だけで)大変だった。
「あの」リヴァイさんのことだ。
こんなことが無い限り、もうディズニーになんて行くわけがない。
だからもう最高の思い出!と言うくらいに良い思い出にしなければ…!
現地でのプランもそうだけど、まずどの服を着て行こうか、なんてところから始まるわけで。
写真もいっぱい撮らなきゃ、じゃあパパからデジカメ借りて行こうかな、でもスマホで撮るから大丈夫かな、スマホ充電やばくなる気がするな、とかとか。
とにかく1人で目まぐるしくいろいろと考えていた。
そしていよいよ明日、って日。
着る服もばっちりだし、持っていくものもばっちりだし、後は明日を待つばかり!って時(もちろん学校には行ったけど、授業なんて聞いているようで聞いていなかったと思う)
スマホが着信を告げた。


「はい。」
「フィーナか?」
「リヴァイさんお疲れ様です!明日なんですが、」
「すまない。」
「え?」


嫌な予感はした。


「俺の部署で重大なミスが見つかって、全員出社になった。」
「…」


だってリヴァイさん、すごく申し訳なさそうに、声を振り絞るように口にしたから。


「一応、部下がいる身だ。俺が出ないわけにはいかない。」
「……」


だから「すまない」って言われた段階で、覚悟はしていた。
…してたけど…。


「この埋め合わせは必ずする。」
「…い、いえ、」
「あ?」
「大丈夫です。」
「は?」
「お仕事なら、仕方ないです、し。」
「…」
「あ、明日頑張ってくださいね。」
「…フィーナ、」
「あ!ママにお風呂呼ばれてるんで切りますね。じゃあ、」
「おい!まっ」


ピッ、と、ボタンをタップして通話を切った。


「………」


リヴァイさんはすごく申し訳なさそうにしてくれた。
それにリヴァイさんは「仕事」で行けなくなったんだ。
だから本当に、仕方ないこと。
………なん、だけど……。


「…行きたかった、リヴァイさんと…」


きっとリヴァイさんは、もう行こうなんて、言わないと思う。
だって、騒がしいところが嫌いな人、こういう機会でもなければ、行こうなんて、言わなかった。
…と、言うか、リヴァイさんは初めから「行こう」なんて言ってない。
ほんとは行くの、めんどくさい、とか…。
そんな風に思ってたりして…。
だから仕事って、形で、行かなくていいように神様がしてあげたのかなぁ、なんて。
そんなこと、思った。


『本当にすまない。この埋め合わせは必ずする』

『本当に大丈夫です。お仕事頑張ってください』


キンコン


それからすぐに、Line通知が着たのに気がついたけど…。
心にもないことを言ってしまった自分に余計傷ついて、そっとスマホの電源を落とした。

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bkm

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