2000年後もラブソングを


≫Clap ≫Top

Devote my life to you+++


2


「いらっしゃいませ」


道中、なんだかんだとあるのかと思いつつも、終始パパが不機嫌なだけで済み、無事温泉旅館にたどり着いた私たち。
車も預けて、ママがフロントでチェックインを始めた。


「ではご予約は2部屋で、」
「……は?2部屋?」


フロントのお姉さんの言葉に、パパが声を裏返した。


「…………それはどういう部屋割りか聞いてもいいか?」
「どういう、って、そりゃあもちろん、私とパパ、フィーナとリヴァイさんでしょ?」
「ダメだ!」
「パパ、」
「お前っ!嫁入り前の娘が親同伴で泊まりがけの旅行してるというこの現状がすでにおかしいのに同じ部屋だと!?何を考えてっ」
「じゃあお義母さん、俺たちが同室になりますか。」
「はっ!?」
「…あぁ、そうね。そうなるわね。」
「なんでそうなるんだっ!!」
「だってよく考えてみてください。そうじゃなかったら俺とお義父さんが一晩中一緒なんですよ?2人きりで。せっかく日頃の疲れを取りに温泉地にまでやってきたのに、嫌でしょう?俺は嫌です。」
「………」
「ほら、私とリヴァイさんになるか、フィーナとリヴァイさんになるかのどっちかよ。」
「………………」


部屋割りに意義を唱えたパパに、リヴァイさんとママがダッグを組んで畳み掛けていた。
…この2人、いつのまにこんなに気が合うようになったんだろう…。


「いいかっ!娘に手を出すんじゃないぞっ!!?」
「だからお義母さんと同室でも俺は一向に構わないと、」
「それは俺が構うんだっ!!!」


苦渋の選択を強いられているような顔をした後で、パパは私とリヴァイさんが同じ部屋になることを認めた。


「なんだか先が思いやられますね。」


部屋についてカバンを置いたところで、思わずため息が出た。


「そうか?」
「え?」
「俺は楽しんでるぞ。」
「え、」
「かなりな。」


その証拠、とでも言うかのように、リヴァイさんは口の端を持ち上げ笑っていた…。
………パパが、気の毒に思うのは私だけだろうか…。


「さっきお義母さんから、無料で1時間家族風呂貸し切れるからお前と入ってきたらどうだと言われたがどうする?」
「家族風呂、ですか?」
「あぁ。一応露天になってるそうだ。」


露天風呂なんて素敵、と、思う反面、それってリヴァイさんとお風呂、と言う露天風呂に入りたい、と言う思いよりも高い壁がそびえ立った気がした。


「……入りたくないのか?」
「え?い、いや、そ、いうわけじゃ、」
「どうせお前のことだ。」
「はい?」
「風呂場で裸見られたらなんだと考えているんだろうが、お前の裸はとっくに見慣れてる上、前にうちでも一緒に入っただろうが。今更減るもんなんかねぇだろ。」


………いや、まぁ、そう、なんですけど、ね…。
そうなんですが、それを何故今あえてあなたが言うんですか、ね…?
そりゃあ、リヴァイさんとおつきあいしてちょっとした期間は過ぎてるわけですから、私の裸なんて見慣れているでしょう。
でしょうけれどもっ!!
それとこれとは別、と言うかこう…、言うなれば女心とでも言いますか、もう少しわかってくれてもいいんじゃないか、って言うですね…。


「残念だな。」
「え?えっ!?」


残念だ、そう言いながらリヴァイさんはいつの間にか私の耳元に唇を寄せていた。


「お前の話じゃ日頃の疲れを癒しに温泉へ行くってことだったが、」
「っ、ち、ちょっ、」
「お前は癒してくれないのか?」
「リヴァイさ、んっ…」


まるで逃げるように腰を引き気味に、リヴァイさんから体を離そうとしたら、ペタリ、と畳に座り込んでしまう形になり…。
意図せず徐々に畳の上を這うような格好になってしまったわけで。
そんな状況で、逃げられるわけないわけで…。


「フィーナ…。」
「っ、」


相変わらず耳元に唇を寄せ、囁いてくるリヴァイさんに、擽ったさと恥ずかしさが相まって言葉が出てこなかった。
………ところを、


「フィーナ!!準備できたか!?さぁ、温泉に入りに行こうっ!!」


部屋に荷物を置いたパパ(とママ)が乗り込んできた…。


「…パパ…」
「ここのお湯は美人の湯って言って肌にいいらしいから、ママとゆっくりしてくるんだぞー!!」
「………………チッ、クソオヤジが」


パパの、さぁ出かけよう、という言葉にかき消されず私の耳に届いてしまったリヴァイさんの舌打ちが、妙に心に響いた…。


「ねぇ、ママ…。」
「なにー?」
「…大丈夫かなぁ、パパたち…。」


カコーン、と、響く中、ママと2人曰く美肌になるらしいお湯に浸かりながら、男湯が今頃どうなっているのかと気が気じゃなかった…。




「…ふぅ…、確かに良い湯ですね。」
「そうだな。」
「……お義父さんもう顔赤いですよ?大丈夫ですか?」
「これくらい大丈夫だっ!君があがるまでは俺も入ってるつもりだから変な気使うんじゃない。」
「(このオヤジほんっと、おもしれぇな…)」




「パパ!顔真っ赤だよ!?」


お風呂から出て部屋に向かうと、ちょうどリヴァイさんたちも戻ってきたところなようで、若干フラフラとした足取りのパパを従え部屋のドアを開けているところだった。


「だ、大丈夫…?」
「あぁ、何、心配いらない。少し湯あたりをしたと言うか、」


夕飯は部屋食のため、そのままパパたちの部屋に雪崩込み尋ねた私に、後半ゴニョゴニョと口ごもるようなパパ。
そのパパに、ママがサッ、と、冷えたビールを手渡した。


「そっか…、パパって早風呂だけど、リヴァイさんお風呂長いもんね…。」


パパ、早ければ5分とかであがるからなぁ、なんて思った時だった。


「ちょっと待て。」
「うん?」
「なんでお前が彼の入浴事情を知ってるんだ!?」


ぷはっ、と、一口ビールを飲んでやや潤ったらしいパパが、私に詰め寄ってきた。


「な、なんで、って、」
「なんでって!!?」
「だ、って、一緒にいたら、わかる、でしょ…?」
「……………」




「お義父さん、本当におもしろい人ですね。」
「良かったわー!あの人の良さを一緒に楽しめる人が出来て!」
「(この人も大概だけどな)」




他にどう言ってみようもなく答えた私の言葉に、パパはさらに顔を赤くした後、誰の目から見てもわかるほど肩を落とした…。

.

prev next


bkm

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -