2000年後もラブソングを


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Devote early summer to you++


5


「紅茶で良かったよな?」
「え?あ、は、あ…?」


私1人あわわ、となっているうちにリヴァイさんのマンションについてしまい、座って待ってろ、と言われた通り、以前着た時と同じように、ソファに座って待つことになってしまった。
スーッ、と、息を吸い込めば(偏見かもしれないけど)男の人部屋のわりに良い匂いがした。
ここまで来てしまったらもう腹を括って割り切って勉強して終わったら一目散に帰ろう。
この時の私は、本気でそう思っていた。


「今どこまで進んでる?」
「あ、は、はい、」


自分で飲むマグと、私の分を手に持ち、ソファにやってきたリヴァイさん。
ドキドキと、徐々に心音が上がっていくのがわかった。
落ち着いて、勉強に集中、勉強に集中、と言い聞かせていた。


「あぁ、ここは、」


その甲斐あってか、それともリヴァイさんが以前となんら変わらない態度だったからか、リヴァイさんちにお邪魔してから20分が経過しようとする頃には、すっかり普通の家庭教師と生徒になっていた。
カリカリと、私が走らせるシャーペンの音だけが部屋に響いた。
私は普段、髪を耳にかけている。
それがテーブルに向かってノートを書き進めていたことで、はらり、と、左横の髪が前の方へと落ちてきた。
それをいつもの癖で左手で再び耳にかけようとした瞬間、


「…………」
「…………」


何を思ったのか、リヴァイさんが私の前の方に落ちた髪を指先で掬い、すーっと、左耳にかけた。


「…………」
「…………」


その直後、体が、ぎしり、と、音を立てて動かなくなった気がした。


「…………」
「…………」


今、この人は何をしたんだろう。
私の横に座っているこの人は、私の肌に触れることはなかったけど、私の髪に触れて、何をしたんだろう。
なんでなんでなんで。


「いいのか?」


そんなこと思っている時、リヴァイさんが口を開いた。


「……な、何がっ、ですっ、か…?」


自分でも若干、声が上ずっているのがわかった。


「っ、」


私の言葉を聞いて、リヴァイさんが少し、身を乗り出した。


「そこの問題は、もういいのか?と聞いてるんだ。」
「………えっ?問題?」


リヴァイさんが私の参考書を指さしながら聞いてきた。
………………物凄く、穴を掘って埋まってしまいたくなった。
自分のちょっとした「勘違い」に、無性に泣きそうになったことを覚えている。
これはもしかしたらこの間のアレも私が何か勘違いしてるんじゃないだろうか、って。
リヴァイさんを好きって思いが強くて何かとても失礼な勘違いをしてしまってたんじゃないだろうか、って。
それならここ最近のリヴァイさんに対する態度が物凄く申し訳なく思えてきて…。


「…ははっ!」


そんなこと思い始めた時、リヴァイさんが隣でいきなり噴き出した。
そう、言葉通り「噴き出した」
この人のこんな姿、この時が初めてだった。
何事だ、と思って見遣ると、


「…あぁ、悪い。続けろ。」


すごく。
本当にすごく、おかしそうに笑っていた。


「…………」


からかわれた。
脳がそう理解した時、それまでとは違った意味で泣きそうになったことを、覚えている。
この時の私は、きっと口をへの字に曲げて、すっごく不細工な顔をしてたんじゃないか、って思う。


「フィーナ。」
「…」
「悪かった。」
「…」
「そう怒るな。」


でも、そう言いながらも、リヴァイさんはどこか楽しそうな声色で。
それがすっごく、悔しいと思った。
直後、


「っ!?」


ぐぃ、っと腕を引っ張られ、唇すれすれのところまで、リヴァイさんの顔が近づいてきた。


「………」
「………」


どのくらいの時間をそうしていたのかわからないけど、お互い目を見開いたまま(リヴァイさんは普通に見ていただけだと思うけど)お互いの顔を見ていた。


「フィーナ。」


その時不意にリヴァイさんが私の名前を呼んだ。


「俺はお前に嫌われたいわけじゃない。」
「…」
「だから今はこれ以上は何もしない。」
「……」
「この続きはお前が卒業してからだ。今は勉強を頑張れ。」


リコちゃんに話したら、なんで既に上から目線なんだ、と非難轟々なんじゃないか、って思うけど…。
でもこの時の私は、


「……………はい。」


振り絞って出た返事がこれだった。


「いい子だ。」


その返事を聞いたリヴァイさんは、機嫌よく私の頭を撫でた。




「じゃあフィーナは?」
「え?………気がついたら?」
「気がついたら年上のあんなイケメン彼氏が出来てたっておかしいでしょ!?何したの!!?」
「い、や、何、って、」
「あ、それ私も知りたいかも。」
「え!?リコちゃんまで何言って、」
「だってほんとに気がついたらつきあってなかったか?フィーナ一時期あのチビから逃げてたのに。」
「………や、逃げて、た、と、言うか…、」
「「「と言うか?」」」
「………もう、よく、わかんない…。」
「そこが1番大事なところでしょっ!!!思い出してっ!!!」
「そうだよっ!!!私たちもっ!!年上イケメン彼氏がほしいのっ!!!!」
「えっ!?………だ、って、勉強頑張ってたら、でき、た…?」
「はっ!?勉強!?デートじゃなくて勉強!!?」
「無理、詰んだ。」


きゃーきゃーと、クラスメートが騒ぐ。
リヴァイさんを「男の人」として、意識して避けてしまったのは事実。
だけど…。
私の髪に触れた手が、とても優しくて、やっぱりもっと、触れてもらいたいと、思った。
………から、そのまま受験勉強を頑張っていた、ような、気がする。
だけどリヴァイさんはどうだったんだろう…。
自分自身でも、当時のリヴァイさんの心中がわからず、うーん、と唸り声をあげた。

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bkm

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