2000年後もラブソングを


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Devote early summer to you++


3


また直接会って勉強を見てもらうから、って、特に何かがあったわけじゃない。
それはそうだと思う。
だって、20歳過ぎた男の人が、中学生なんて、相手にするわけが、ない。
だからただただ、私がドキドキワクワク、もしかしたら何も起こらないことに、ちょっぴりがっかりしていた。
そんな期間がしばらく続いた。
そんな時間が決定的に変わる出来事が起こったのは、10月の終わり頃。
その日は大雨で、学校帰りにマックに行くのも大変かも…、って日だった。


「あれ?先生からだ…今日、雨が酷いか、ら、」


『今日、雨が酷いからうちで勉強するか?お前の学校から、マックよりうちの方が近いだろう。』


そのメッセージを見た瞬間、どう思ったのかは正直覚えていない。
ただ、興奮して、先生がいいならお願いします、と返信したのは覚えている。


「お、お邪魔、します。」


放課後、それまで以上にドキドキしながらリヴァイさんのマンションに向かった。
何度も言うけど、20歳過ぎた男の人が、中学生なんて相手にするわけがない(しかもモテると思われる人だし)
だから…「何かが起こる」と言うことを期待して、とかじゃなく、純粋にリヴァイさんの家に行ける!ってことにドキドキしていた。


「お前、紅茶でいいか?」
「あ、はい。ありがとうございます。」


家に着くとリヴァイさんが飲み物を出してくれた。
でも…。


「…なんだ?何がおかしい?」


紅茶を淹れている姿に軽く吹き出した私に、リヴァイさんが聞いてきた。


「あ、す、すみません。どうした、ってわけじゃないんですが…、」
「なんだ?」
「…先生、あんまり紅茶飲まないのかな?って。」
「あ?」
「だって、全然蒸らさずにカップに淹れるから、」
「あぁ…、蒸らす時間がめんどくせぇ。」
「でも蒸らした方が美味しいんですよ?」


めんどくさい、と言う理由で紅茶をすぐにカップに淹れるリヴァイさんが、あまりにもリヴァイさんな気がして、クスクス笑っていたのを覚えている。


「じゃあ次からはお前が淹れろ。」
「はい、いいですよ。」


なんて、会話の流れで答えたけど、冷静に「次」があるのか、とツッコミを入れたくなったのは、この数分後だった…。


ブブブ


その日はやたら、リヴァイさんのスマホのバイブが鳴り響いていた。
そしてスマホが鳴るたびに、リヴァイさんの機嫌が斜めになっていったのを覚えている。


「フィーナ。」
「はい?」


それからどのくらい経った時か、リヴァイさんが1度舌打ちをしてから私の名前を呼んだ。


「お前、今日時間あるか?」
「え?…大丈夫、です、けど…?」
「悪いが急用が出来た。」
「あ、じゃあ、」
「2〜30分で帰ってくるから、ここで待っててくれ。」


じゃあ、今日は帰ります、と言おうとしたら、リヴァイさんが先に言葉を繋いだ。


「え?で、でも、」
「とりあえず、ここまでやってろ。終わったら適当にテレビでも見ててもいいし、なんか飲みてぇならそこらへん開けて見てくれて構わない。」


ほんとに帰ります、と、言おうと思ったら、どんどんリヴァイさんの中で話が進んでいた…。
そしてリヴァイさんはあっ!と言う間に出て行ってしまった…。
どうしようかと思ったものの、ここまでやって待ってろ、と、言われたからには、与えられた課題をやっていよう、と、1人取り残された部屋で黙々と問題に取り組んでいた。
でもそれも15分くらいで終わってしまい…。
あともう少しで帰ってくるなぁ、なんて思いながら、ボーッとしていた。
このくらいの、所謂成長期、と言う時期って、何をしてても突然睡魔に襲われることがあると思う。
成長ホルモンが寝ている時に分泌されるため、体が成長を促すために睡魔を与える、みたいなことを聞いたことがあるけど…。
それはこの時の私も例外じゃなく…。
ソファとお揃いのクッションが置いてあって、そのクッションを抱きしめながらボーッと座っていたら、いつの間にかすっかり、寝入ってしまった。


「…」


自分が寝ている、と言うことに気づく直前に、ふとした違和感に襲われた。
「襲われた」なんて言うと、大袈裟だけど…。
唇の、少し上辺りに、「何か」が触れたような、そんな感覚に、パチリ、と、目を見開いた。


「あぁ、起きたか。」


目を見開いた先には、今までにないほど、至近距離のリヴァイさんがいた。


「…え?あ、れ…?」
「悪かったな。少し手間取った。」


そう言われ時計を見ると、リヴァイさんが出て行ってからゆうに1時間は過ぎていた。


「今日はもう遅いし、雨も酷いから家まで送る。」
「え?い、いや、」
「今やったところは、次会う時に見てやる。帰る支度しろ。」


淡々と言うリヴァイさんは、いつも通りの無表情で。
私1人だけ、頭にクエスチョンマークが飛び交っていて、その日は無言で家まで送ってもらった(と言うか、雨音が酷くて会話にならなかった)


「…」


家に帰ったらまずうがい手洗い、と言う習慣がついている私は、真っ先に洗面所に向かい、そこにあった鏡で自分の顔を見た。
…あの時、私は寝ていた。
でも、唇の、少し上に「何か」が触れたような感覚で目が覚めた。
すぐに目を開けると、そこにはリヴァイさんがいて…。
目が覚めた後も、しっかりとその感触は、残っていた…。
それはつまり、どういうことか、と言うと…。


「…っ…」


私はこの時すでにリヴァイさんのことが好きだった。
でも、20歳過ぎた男の人が中学生なんて相手にするわけがないって頭のどこかでは思っていた。
だから現実の男の人に恋をした、と言うより、今思うとアイドルとかを好きになるそれに近かったんじゃないか、って思う。
だけどこの時初めて、リヴァイさんが「男の人」なのだと言うことを、身を持って認識したんだと思う。



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bkm

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