2000年後もラブソングを


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Devote my life to you++


4


「………」
「………」


なに、話そう、か、なぁ……。
なんて考えていたら、すっかり話すタイミングを逃してしまったようで、かれこれ2分くらいは沈黙が訪れている。と、思う。


「悪かったな…。」


その沈黙を破ったのは、リヴァイさんだった。


「ファーランから聞いたと思うが、スマホを無くして連絡の取りようがなかった。」


リヴァイさんが、申し訳なさそうにそう言った。


「…でも、」
「うん?」
「…皆さんのところには、連絡がいったんですね…。」


病室に入った瞬間に感じた違和感、とでも言うのか…。
私は、お兄さんが連絡してくれたから、リヴァイさんの現状を漸く知ることが出来たというのに、ハンジさんやミカサたちは…。


「あぁ、財布の中に免許証やら保険証、あと俺の名刺も入っていたからな。それを見た病院側が連絡入れたようだ。」


盗まれなくて良かった、と、リヴァイさんは言った。


「じゃあ、エレンの家には?」
「アイツの家には、会社に緊急連絡先としてアイツの家の番号が登録してあるからだろ。」
「…そう、なんです、ね…。」


淡々と語るリヴァイさんはいつものリヴァイさんだ。
それは安心した。
連絡も取れなくなって、すごく心配だったけど、いつものリヴァイさんが目の前にいる。
それは本当に良かったと思う。
…だけど…。


「なんだ?どうした?」
「…」
「おい、黙っててもわからな」
「私っ、」


この病室に入った時に、ハンジさんやエレンの話を聞いた時に思ったこと。


「リヴァイさんに何かあってもっ、1番最後に知らされるんですか?」


ハンジさんは、会社経由で朝の段階で聞いたと言う。


「昨日の夜、Lineのメッセージ送ったのに朝になっても既読つかなくて何かあったのかって、ずっと心配してたのにっ、」


エレンは、今朝会社から電話で知ったと言う。


「みんなが知らされた、1番最後に、私のところに連絡が来るんですかっ?」


でも私は、リコちゃんのお兄さんが「たまたま」この病院にいたから…。
そしてリコちゃんのお兄さんが私に気を使ってくれたから、ようやくお昼過ぎに知ることが出来た…。
それはもしかしたら、世間一般の「恋人同士」であるなら、極当たり前のことなのかもしれない。
でも私の中では、そりゃあプロポーズの言葉らしい言葉、なかったけど、指輪だってもらったし当然、いつかはそのつもりでいる。
なのに…。


「フィーナ。」
「…」
「今あまり動けない。こっちに来い。」


いつも通りのリヴァイさんを見て、すごくホッとした。
だけど、それと同時に、なんで、どうして、っていう拭い去れない思いも出てきて…。
それらを言葉にしたら、一気に思いが溢れて、止めどなく涙が出てきた。
それを見たリヴァイさんが、自分の近くに来い、と、手を差し出してきた。


「…」


その手を取って、イスから立ち上がり、ベッドの上に腰を下ろした。


「…悪かった…。」


ベッドの角度を変え、体を起こしていたリヴァイさんの首に抱きついた。
盲腸だから、お腹、と言うか、体にあまり密着しないように気をつかないながら。


「………」
「………」


私もリヴァイさんも一言も喋らない。
ただリヴァイさんが私の頭をぽんぽん、と、あやすように撫でていた。


「………」
「………」


それからどのくらい時間が経ったのかわからないけど…。


「退院したら、」


リヴァイさんが独り言のように呟いた。


「籍、入れるか。」
「………え?」


その言葉に驚いて、体を起こしてリヴァイさんの顔を見ると、いつも通り、何を考えているのかわからない表情のまま、私を見ていた。


「そうしたら俺に何かあれば、お前のところに真っ先に連絡がいく。」


リヴァイさんのその言葉に、頭が真っ白になった気がした。


「たかが紙切れ1枚のことだが、その紙切れでも意味があることもある。」
「…」
「どうせ今か後かの違いなだけだしな。」


リヴァイさんはそう言いながら、私の髪を梳いてきた。
……籍を、入れる、って言うのは、つまりそういうことなわけで…。
そりゃあリヴァイさんから指輪も貰って、ゆくゆくは、ってつもりでいたし、リヴァイさんだってそりゃあそのつもりだったとは思う。
でもそれは全て「私が卒業したら」と言うことが前提なわけで…。


「わ、たし…」


いきなりのこの展開に、頭がついていかなくなった。
もしまたこういうことが起こった時に、リコちゃんのお兄さんがまた近くにいて、連絡をくれるとは限らない。
今回は入院して早い段階で教えてもらえたけど、もしかしたら、全てが終わってから聞く、なんてこともあり得るかもしれない…。
そんなことは本当に嫌。
だけど…。
だからって、いきなりのこの展開を手放しで受け入れられるほど、…なんと言うか…、楽観的に物事を考えられない、と言うか…。
リヴァイさんの言う通り、紙切れ1枚のことなのかもしれない、けど…。
でもそんな私の我が儘な感情1つで、決めてしまうことが、怖いと言うか…。
そこで即決できるほど、自分に自信がないことが、全ての原因だと、思うけど…。


「………」


押し黙った私に、リヴァイさんがどう思ったのかはわからない。
だけど…。


「まぁ、籍入れる云々は置いて、会社の緊急連絡先をエレンの家じゃなく、お前の家に変える。」
「え?」
「…その前にお前の親に了解を取らないとだがな。」


今すぐ籍入れることに比べたらすんなり了承するだろ、と、リヴァイさんは言った。


「な、なん、か、」
「あ?」
「…す、みま、せん…。私…、」


その先を続けることが出来なかった。
何に対して謝罪すれば良いのか、自分でもわからなかったから…。
だけど、私の言葉が、リヴァイさんを困らせてる気がして……。


「4〜5日で退院出来るそうだが、」
「はい?」
「術後1週間は安静だそうだ。お前、看病に来れないか?」


自然と俯いて来ていたけど、リヴァイさんが投げかけた言葉で、一気に顔が上がった。


「どうだ?来れるか?」
「い、行きます!」
「そうか、助かる。」


後になって、そんなに大きい傷じゃないんだから、術後1週間は安静、って言っても、元から一人暮らししていた人。
なんら不自由なく過ごせたんじゃないか、って思った。
そして、パパ、ママを説得(主にパパだったけど)し、リヴァイさんが退院してから3日間リヴァイさんちに泊まり込むことになった。



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bkm

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