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「し、つれい、します…。」
あれ?この声聞いたことが、なんて思いながら、リヴァイさんがいるであろう病室のドアを開けた(ちなみに個室)
「やぁ、フィーナ!あなたも来たの?」
「…ハンジさん!?」
ドアを開けた私を1番最初に迎え入れてくれたのはハンジさんだった(思っていた以上に人がいたことに驚いたけど、1番最初に知り合い認識出来たのはハンジさんだった)
「え?し、仕事は?」
「今休憩中!」
あははー!と笑いながら言うハンジさん。
「朝出勤したら、病院から連絡あった、って言われてさぁ!同期としては心配だろう?だから社員代表でお見舞いに、」
「来るなうぜぇ。」
ハンジさんの言葉に反応したのは、ベッドの上のリヴァイさん。
「リヴァイさん…!大丈夫ですか?」
「あぁ、問題ない。」
「だってもうすっかり切ったしね!」
「お前は黙ってろ。」
ベッドの側に寄ると、ハンジさんの言葉に眉間にシワを寄せながら答えるリヴァイさんの姿が目に映った。
いつも通りの光景に、心底ホッとした。
「あの、すみません、」
その声のする方に振り返ると、
「もしかして、ミカサが言ってたフィーナ、さん…?」
ミカサと、もう1人、男の子が立っていた。
「は、い…?」
「やっぱり!ミカサから話聞いて会ってみたかったんです!!」
この前はチラッと見た程度だったし、と、言うその少年。
「…もしかして、ミカサを迎えに来た、エレン?」
「はい!」
にこにこと、爽やかに笑うエレン。
…の、隣に静かに佇むミカサ。
「え?2人はどうしてここに?」
「あぁ、今朝うちに連絡が入ったんです。リヴァイさん、倒れたって、リヴァイさんちの会社から。」
「………え?」
かなり以前、リヴァイさんのお家の家庭の事情をチラリと聞いたことがある。
リヴァイさんにはご両親がいない。
なんでなのかはわからないし、もしかしたら単なる不仲とかで、厳密にはいるのかもしれないけど、少なくとも私はそう聞いていた。
何かあった時の自分の後見人には、親戚に頼んである、ってその時言っていた。
………でも、ミカサとは血縁関係だけど、エレンとは違うんじゃ…?
なんて思った私の考えは丸っと筒抜けなようで、
「以前、ミカサの親が俺の保護者代わりだったが、今は海外に行ってるからな。成人したからいらないんだが、なんでかコイツの親がそのままその役割を引き継いでる。」
ため息を吐きながらリヴァイさんが言ってきた。
「…そう、なんです、ね…。」
リヴァイさんの言葉に、1度頷いた。
「それよりフィーナも聞いた?リヴァイ盲腸だって!」
その直後、ハンジさんが私に声をかけてきた。
「あ、はい。聞きました。」
「盲腸の手術だよ?盲腸の手術!」
「おい、ハンジ、」
「てことはきっと今リヴァイはツルッツル!ぶはっ!」
そう言って噴き出したハンジさん。
盲腸の手術は、昔おじいちゃんがした時の記憶がある。
そしてその時のおじいちゃんたちの会話も覚えている。
だからこのハンジさんが言う「ツルツル」が何を意味するのか、すぐわかった。
「ハンジてめぇ、」
「そーんな怖い顔してもツルッツルだと思うとなーんにも迫力ないからね!」
ハンジさんの言葉に、さらにリヴァイさんが青筋を立てた。
「ねぇフィーナもそう思わない?」
「え?」
「ハンジ!」
「いっつもクールぶってる年上の恋人が、ぷくくっ!」
ハンジさんは笑いを堪えきれません!と言う表情で私に振ってきた。
「あなたも笑っちゃうだろ!?」
「…いえ、私は…、」
「え!?なんでなんで!?」
「なんで、って…、」
「リヴァイがこーんな顔してツルッツルだったらそりゃあもう」
「でも、」
「うん?」
「…手術したら、みんなそう、なんですよ、ね?」
「え?」
「べ、つに、おかしいことじゃ、ない、と、思う、し…?」
「勝負あったな。」
私とハンジさんの会話に、お兄さんが入ってきた。
「残念だったな、ハンジ。フィーナちゃんはお前と同レベルじゃねぇんだよ。」
「なんだよソレ!私が変みたいな言い方!」
「むしろお前が真っ当だって言う奴の方が変だろうが。…と、こんなことしてられねぇや。もうそろそろ行かねぇと。」
お兄さんが腕時計を見ながら言った。
「あ、お兄さん、ありがとう、ございました。」
「…どーいたしまして。じゃあリヴァイ、またな。皆さんもごゆっくり!でもハンジはさっさと帰れよ?」
「ファーランは冷たいなぁ…。でも私も本当にそろそろ行かないとだから。じゃあリヴァイお大事にー!」
お兄さんと一緒に、ハンジさんも病室を出て行った。
「あ、あー…、俺たちも、行くか?」
「…うん。」
「え?あ、で、でも、ゆっくりしていったら、」
「あ!いいですいいです!また今度、リヴァイさんちにお邪魔しますから!」
「来んな、ガキ。」
「リヴァイさんは、すーぐそういうこと言うんだから!今度オヤジから聞いた美味いつまみもって行くんで!」
「………」
「じゃあフィーナさんも、また!」
「あ、は、はい。」
また!と、手を振るエレンと、ぺこり、と無言で頭を下げたミカサも病室から出て行った。
「………」
「………」
そしてこの病室に、2人取り残されたわけだけど…。
会話が…。
「そこのイスに座ったらどうだ?」
「あ、は、はい。」
リヴァイさんに促されるまま、腰をかけ、再び2人きりの病室に沈黙が訪れた。
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