2000年後もラブソングを


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Devote my life to you++


2


「は、い…?」


家庭教師をしてもらっていた頃、お兄さんからたまに電話が着たことはあったけど、こんな、学校にいる時間帯に来るなんて初めてで。
恐る恐る通話ボタンを押した私に、


「フィーナちゃん?」


お兄さんの声が耳に響いた。


「今休憩中?大丈夫?」
「あ、は、い…?」


一体何事だろう、と、お兄さんの出方を待ってみることにした。


「あのさぁ…、俺今大学病院で研修中なんだけど、」
「はい?」


お兄さんの言わんとするところがわからず、頭にクエスチョンマークを飛ばしながら答えた。


「昨日の夜うちの病院に着た急患の名前が見たことあるからまさかなぁ、って思ってたんだけど、」
「はい。」
「今ようやく時間出来て患者に会いに行ったら、やっぱり本人でさ。フィーナちゃん、きっと知らないと思うから俺から連絡しとこうと思って。」
「…は、い?」
「昨日、リヴァイがうちの病院に運び込まれて着たんだ。」


ドキン、と、心臓が大きく音を立てたのがわかった。


「あ、でもただの盲腸でもう手術もしたし大丈夫なんだけど、」
「…」
「リヴァイ本人ももう目覚めてるし。」
「……」
「ただフィーナちゃんには自分から連絡する、って言ってたけど、退院まで多少時間かかるし、倒れた時にスマホ落としたみたいで今現在連絡の取りようがないんだよね。」


まさか病室で俺のスマホ使わせるわけにはいかないし、とお兄さんは言った。


「い、」
「うん?」
「今、リヴァイさんは!?」
「あぁ、うん。今は病室のベッドで休んでるよ。」
「私っ、行ってもいいですか!?」
「え?あ、うん、リコに場所聞いて、学校終わったら」
「今から行きますっ!!」
「え!?ち、ちょ、」
「リコちゃん!!」
「ど、どうした?」
「お兄さんが研修してる病院てどこっ!?」


すっかりパニックになった私は、午後の授業なんて全く頭になく、リコちゃんにお兄さんの、…リヴァイさんがいる病院の場所を聞き出した。




「ファーラン、フィーナに電話して着たのか?」
「え?あー、うん。」
「…なんだ?何かあったのか?」
「いや、あった、って言うか…。今きっと昼休みだろうから、午後の授業終わったらおいで、ってつもりで話してたんだけど、どうも今から来るみたい?」
「……」
「どうせ盲腸だし、生きる死ぬじゃないんだからそこまで慌てなくてもいいんだけどな…。俺言い方まずかったかな?」
「………これから来るのか?」
「え?…あー、たぶん、あの勢いなら放課後待たずに来るんじゃねぇかな?」
「…そうか…。」
「ただの盲腸なのにな。」
「………」
「リヴァーーーーーイ!!!!!お見舞いっ!!!!!!来て!!あげたよーーーっ!!!!」
「ファーラン、追い出してくれ。」
「何それ!あなたが盲腸でぶっ倒れて入院した、って聞いたから、貴重な休憩時間を割いてお見舞いに来てやったって言うのにっ!!!!」
「おい、モブリットはどうした?」
「モブリットは急遽休んだあなたと、あなたのお見舞いに着てる私の代わりに貴重な休憩時間を割いて働いてるよ!」
「…お前、上司としてどうなんだ…。」
「いいの、いいの!病院帰りに美味しーーい!ケーキ買って帰る、って約束したら快く見送ってくれたから!」
「…相変わらずモブリットくんの苦労が偲ばれるな…。」
「やぁ、ファーラン!そんなところにいたの!!」
「…ハンジよりもずっと前からこの部屋にいたけどな…。」
「いやぁ、病院から会社に電話が着た時は驚いたけど、あなたがいる病院なら安心だね!」
「おいハンジ。」
「なにー?」
「ただの盲腸だ。さっさと帰れ。」
「…わかってないなぁ、リヴァイは!」
「あ゛?」
「ただの盲腸なら現代医学じゃ薬でどうにかなるんだよ!けどあなたはそこをあえて切った!」
「…切った、と言うか、切らざるを得なかっただけだけどな?」
「おい、ファーラン、コイツの話につきあうな。」
「つまりだよ!盲腸の手術をして、その体にメスを入れた…!てことはっ!!」
「(嫌な予感しかしねぇ…)」
「(やばい、先が読めた…)」
「リヴァイってもしかして、剃毛したのっ!?」
「「(やっぱりな………)」」
「ねぇ!ねぇ!どうなのどうなの?剃った?剃ったの!?今ツルツルなのっ!?ぷぷっ!」
「おい、ファーラン。」
「あー、うん、会社電話して、モブリットくん呼ぼうか。」
「なんで!気になるだろう!?リヴァイは今ツルツルなのかどうか!そしてそのことで弄り倒せるのかどうかっ!!」
「おい、モブリットを呼べ。そのことで滞った仕事は退院後俺が責任持って全てやると言ってくれ。」
「とりあえず、ハンジ。ここ病院だからな?ここに俺は今研修に『来させてもらってる』立場なんだからな?俺たちがバカ騒ぎしてた学生時代と混同するな。もう少し静かに騒いでくれ。」
「静かに騒げとか、相変わらずファーランはレベル高いこと言ってくるよね!」
「(さっさと帰れコイツら…)」
「失礼しまーす…。リヴァイさん、大丈夫ですか!」
「あれ?君たち確か、」
「(また煩ぇのが来た…)エレン、ミカサ…。お前たち学校はどうした?」
「今日は短縮授業なんです!」
「…ので、エレンがどうしても行こうと聞かなかったから…。」
「えぇーっと、リヴァイのいとこだっけ?」
「…どうも。」
「じゃああなたは?」
「あ、俺はコイツの………家族です。」
「『家族』?」
「は?お前自分でそう言ってなかったか?」
「そう、だけど…(エレンから言われるとなんか…)」
「じゃあ家族だろ。」
「………」
「何お前不満なのか?」
「…別に。」
「別に、ってなんだよ、別にって!」
「だから別に。」
「はぁ!?お前なぁ、リヴァイさんが倒れたって聞いたから見舞いに来てんのに、何なんでお前が機嫌悪くなんだよ!?」
「別に機嫌悪くない。」
「お前なぁ…、その態度で機嫌悪くないとか言って誰が信じるんだよ!」
「(どーでもいいが、)」
「(この2人初めて見たけど、)」
「(わざっわざ俺の病室にまでやって来て、)」
「「「(何痴話喧嘩してんだ…?)」」」




リコちゃんから聞いた場所は、私も知っている場所で。
あぁ、そこならバスが通ってるからすぐに行ける、って勢いよく学校から飛び出した(後のことはリコちゃんにお任せした)
バスに乗っている間も、そしてバスから降りて病院に向かってる間も、ドキドキドキドキと、心臓が、鳴り止まなかった。


「あ、あのっ、昨日急患で運ばれた、」
「あぁ、妹さん?」
「え?あ、や、私は、」
「そこのつき当たり右の507号室ですよ。」
「あ、ありが、とう、ございます。」


ナースステーションで聞いた通りの病室に行き、ノックをすると、


「はいはーい、どーぞー!」


陽気な女の人の声が聞こえた。

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bkm

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