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今までの自分の恋愛遍歴において、「そろそろ次のステップへ」などという言葉は存在しなかった。
初めて恋人と言う存在が出来た時ですら、1週間もしないうちにヤっていた気がする。
むしろ最近じゃ会ったその日に、だった。
だが…。
「リヴァイさん、」
「どうした?」
「…なんでもないです。」
俺の名を呼び、ふふっ、と笑うコイツを見てて思う。
……どうやってその「次のステップ」とやらに進むんだ?
「お前はいいよなー、女子高生の可愛い彼女がいて!」
お前、半年前までは人を病人か何かのように扱っていなかったか?というファーランが、ここ最近じゃすっかり俺を羨望の眼差しで見るようになっていた。
「お前も作りゃいいじゃねぇか。」
「作ろうと思えば出来るってもんじゃねぇだろ!」
「そうか?その気になればゴロゴロついてくるだろ。」
「常に合コンで『お持ち帰り』してたお前と同じだと思うなよ?」
「…いや、確かお前もだいぶ持ち帰ってたよな?」
「百発百中のお前と一緒にするな!俺の成功率は7割8割ってところだ。」
「じゃあいいじゃねぇか。」
「だからー!俺はヤリたいんじゃなくて、『恋人』がほしい、って言ってんの!可愛い恋人が!!」
「だから作ればいいだろ?」
「…あー、はいはい。お前に言ってもわかるわけねぇよな…。」
「あ゛?」
世間一般じゃ、年下の恋人は無条件で「可愛い恋人」の烙印を押されやすいそうだ。
まぁ、確かに?
「なんだこれ?」
「あ、この間雑貨屋さん行ったらあったんですが、リヴァイさんが言ってのこれのことかなぁ?って、」
「…あぁ、そういや言ってたな、そんなこと。」
素直で従順な恋人が可愛くないわけがない。
そして人並みに性欲と言うものが存在する俺としては、まぁ…、なぁ…?
「フィーナ…」
フィーナから勉強を教えてほしいと言われたため、俺の家で勉強を見てやっていた。
一区切りついて、休憩、となった時、ありきたりな展開だが、俺としてはこの展開を望んではいた。
「リ、ヴァイ、さん…んっ…」
「…………」
違和感、と言うほど大層なもんじゃないが、この時既に、思っていた行動とは、違っている気はした。
「…っ、あっ!」
今までヤってきた女は全員、処女じゃないと言うこと前提で行為に及んでいた。
理由は1つ。
後々面倒なことは避けたいからだ。
ただフィーナの場合は、コイツの性格はもとより、その年齢からも、当然、俺が初めての男なんだろう、と思っていた。
確認はしていなかったがな。
だが…。
「あっ…イクっ…イっちゃうっ、やぁぁあっ!」
この反応は誰がどう見ても、俺が初めてじゃない。
…つまりコイツは、俺以外の男に既に股を開いてた、ってことだ。
「…はぁ…はぁ…」
隣で弾む息を整えようと胸を抑え深呼吸しているフィーナを見遣る。
俺は自分自身でもデリカシーと言うのをどこかに忘れてきた男だと思っている。
「お前、」
「…は、い?」
「初めてじゃなかったんだな…。」
だからってこんなこと、絶対に聞かないし、そもそもにして詮索などしたことがない。
今まで、病気じゃねぇだろうな、とは思ったことはあっても、こんなこと聞くような女とはヤってこなかった。
「え、だ、だめ、でした、か…?」
YES、と、言われたわけじゃない。
が、これはどう好意的に聞いても直前の俺の質問を否定する言葉ではない。
「…………別にそういうわけじゃないが…」
誰とヤってようが、それは俺と出逢う前の話だ。
つまり俺が干渉出来る得る範疇外のことだった、ってことだ。
ならば駄目かどうかと問われた時、駄目だ、などと言えるわけがない。
………ないんだが、ただ異常なほど、胸糞悪い気分は拭えない。
「で、でも、私リヴァイさんの前は、1人『しか』経験ないですよ。」
「…………あ゛?」
さも当たり前かのように、自分の下着に手を伸ばしながらフィーナは言う。
「みんなもう3人目、とか、4人目、とか言ってるけど、さすがにそれはちょっと…。」
「…」
「だって、こういうことって『真剣に想いあった人』と、って、思いません?」
「……」
「『誰でもいい』ってわけじゃ、ないじゃないですか。」
「………」
目の前で服を着始めながら言うフィーナ。
……つまりお前は、幼いながらも俺より前に「真剣に想いあった男」がいたわけか?
そいつにさっさとヤらせたわけか?
…………あぁ、くそっ!!
ジリリリリリリ
その音に、ビクリ!と体が動いた。
「…………」
ジリリリリリリ
咄嗟に現状が理解出来ない。
が…、
ジリリ カチッ
鳴り止まない音に、体を起こし、目覚ましのスイッチを止めた。
「…………」
いつになく、寝汗が酷い。
そして寝覚めの気分が最悪だ。
なんて夢見てんだ……。
そんな最低最悪な気分のまま、1日が過ぎていった。
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bkm