2000年後もラブソングを


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Devote early summer to you+


1


「…フィーナ。」
「はい?」
「お前、まだこれ持ってたのか?」


放課後、恒例と化したリヴァイさんちでの制服デート中。
リヴァイさんが私のカバンを見て少し眉間にシワを寄せながら言った。


「当たり前じゃないですか。持ってますよ。」


私のカバンについてる、小さなぬいぐるみ。
それは大事な思い出の品。




「「あ、」」


中3の夏休み。
リヴァイさんの代理家庭教師期間も終わって、…会うこともなくなって…。
でも月日は流れるもので、夏休みの間だけ、塾に通うことになった私。
だから普段通学では通らない道を通るようになっていたんだけど。
先生のお家こっちだったなぁ、ちょっと、近くを通ったり、なんてしちゃったら、不審者さかな…、なんて思いながら通っていたのは事実。
でもまさか本当に、ばったりと、また会えるなんて思いもしていなかった。


「先生!」
「…久しぶりだな。こっち方面に用か?」
「夏休みの間だけ、塾に通ってるんです。」
「そうか。」


リヴァイさんは、少し驚いた顔をしていたけど、私の言葉に返事をしてくれた。


「先生は、もう風邪は大丈夫ですか?」
「あぁ…あ、お前今時間あるか?」
「え?はい。塾、は、もう、終わったので…。」
「じゃあ少し…そうだな、そこのコンビニで涼んで待っててくれないか?」
「はい?」
「すぐ戻る。」


そこ、と言って指さしたコンビニは、リヴァイさんが熱を出した時、ポカリを買いに来たコンビニだった。
振り返るとリヴァイさんは、すでにマンションの方へと走って行ってて…。
どうしたんだろう、って思いながらも、言われた通り、コンビニで待つことにした。
すぐ戻るってどのくらいで戻るんだろう、とか。
なんだろう、何の用だろう、って。
久しぶりにリヴァイさんに会えたこと。
リヴァイさんと話が出来たこと。
しかもリヴァイさんに待ってろだなんて言われたことが一気に心に広がって、ドキドキと胸が高鳴っていったのを覚えている。
雑誌コーナーで、読むわけでもなく(というか頭に入らなかっただけ)雑誌をペラペラと捲っていたら、


コンコン


私がいるあたりの窓ガラスが叩かれ、顔をあげるとリヴァイさんがこっちに来い、と、顎をくぃっと動かし合図をしてきた。
それに慌てて雑誌を置き、店から出た。


「悪いな。」
「い、いえ、」
「これをお前にやろうと思ってな。」
「え…?」


これ、と言って渡されたのは可愛くラッピングされた袋。


「あ、の…?」
「熱出て寝込んだ時の礼だ。」


その意図がわからず、聞いてみたら、リヴァイさんがそう言ってきた。


「あ、開けていいですかっ…!?」
「あぁ。」


ただでさえドキドキしていたのに、それが倍増して、少し手が汗ばんできたのを覚えている。


「…リトル・グリーン・メン!」


袋から出てきたのは、私が大好きなディズニーキャラクターの小さなぬいぐるみだった。


「お前の置き手紙に描かれてた奴だよな?」
「はい!私これ好きなんですっ!ありがとうございます!」
「…買っておいて何だが、『それ』が好きなのか?」
「はい!可愛くないですか!?」
「…いや、」
「このちょっと気持ち悪い感じが可愛いんですって!!」
「…そうか?」
「はいっ!『トイ・ストーリー』って映画に出てくるんですけど、先生は見たことありますか?」
「ない。」
「可愛いんでみてください!あ、でもお話的にはですね、『モンスターズ・インク』の方が好きなんです!」
「あぁ、なんか聞いたことあるな…。」
「それも見てないんですか!?名前の通り、モンスターがいっぱい出てくる映画なんですけど、そっちも可愛いキャラ多いんですよ!でもやっぱり、リトル・グリーン・メンには負けるかなぁ。」
「…」
「ディズニーに行くと、この子の帽子が売ってるんで、それを被ってパーク内周るのがすっごく楽し、く、って、」
「…」


リヴァイさんからのまさかのプレゼントにすっかり興奮してしまった私は、リヴァイさんを置き去りにして喋りだしてしまったいた。
喋りながら、フッ、と、リヴァイさんを見たら、


「………」


柔らかく、目を細めながら聞いていた。
その表情を見たら、急に恥ずかしくなって次の言葉が出なくなった。


「す、すみま、せん…。」
「いや。やった甲斐があった。」


リヴァイさんが、軽く目を伏せ、口の端を持ち上げて薄く笑っているのがわかった。


「お前はこのあと帰るのか?」
「は、はい。先生は?」
「俺は出かけるところだ。」
「そうなんですね。気をつけて。」
「あぁ、お前も気をつけて帰れよ。」
「はい!じ、じゃあ、また。ありがとうございました。」


たまたま道で会っただけなのに、リトル・グリーン・メンのぬいぐるみを貰ってしまうなんて、なんて今日は良い日だろう!
これは宝物だ!なんて、そんなこと思いながら家路についた。




「このお店美味しかったね。」
「そうだな。」
「今日うち寄ってくよね?」
「あぁ。」
「じゃあ帰る前にDVD借りて行かない?リヴァイは何が見たい?」
「…トイ・ストーリー?」
「はっ?」
「いや、モンスターズ・インクでもいいが…。」
「ディズニー見たいのっ!!?」




この時のリヴァイさんが、当時の彼女さんとこんな会話していたなんて知る由もなく、ちゃっかり「また」とか言っちゃった!とか、すっかり脳内お花畑になりながら、その日は塾の復習もはかどっていた。

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bkm

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