2000年後もラブソングを


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Devote my life to you+


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「リヴァイ、さん?」


パパの枕元に近づき、そこら中に包帯が巻かれているパパの耳元に顔を近づけた。


「お義父さん、聞こえてますよね?人間、心臓が止まっても最後まで耳だけは聞こえてるそうだから、きっと聞こえてると思います。」


リヴァイさんは、いつもと変わらない口調でお父さんに語りかけ始めた。


「朝までに目が覚めなかったら、一生植物人間だそうですよ。」
「ちょ、リヴァイさん!?」


本人の耳元で何を言ってるんだと、慌てて止めに入ろうとしたら、それをリヴァイさん自らが、片手で待て、と伝えてきた。


「時間で言うと…残り9時間、てところか。それまでに起きねぇと、あんたは一生寝たきりだ。」
「…」
「聞いたところによると、あんた最低2年間は俺たちの邪魔をするつもりらしいじゃねぇか。」


リヴァイさんの言わんとするところがわからず、やっぱり止めに入ろうと思ったら、今度はママが私の腕を掴み、無言で待て、と、静止した。


「どうする?2年どころか一生そうやってゴネて娘を嫁に出さねぇ気か?」
「…」
「だが俺も気が長い方じゃないんでね。あんたが目覚めるまで待つなんざご免だ。」
「…」
「残り9時間。朝までだったら待ってやる。その時間内にあんたが起きなきゃ、明日の朝一で娘は俺がもらう。」
「…」
「それが嫌ならさっさと起きるんだな、クソオヤジ。」


フン、とでも言うようにリヴァイさんは体を起こし、パパから離れた。
そのまま病室を出て行こうとするリヴァイさんを目で追っていた時、


「パパッ!?」


ママの声が病室に響いた。


「パパ!わかる!?ねぇっ!!」
「パパッ!!」
「…はい、どうされました?」
「主人がっ!主人が目を覚ましました!!」
「今行きます。」


そこからは数分、もしくは数十分、バタバタと看護師さんやお医者さんが部屋を行ったり来たりとしていた。
その間邪魔にならないように、ママと2人、部屋の隅で手を握り合っていた。


「もう、大丈夫です。」


お医者さんのその言葉に、本当に、心の底から、ホッとした。
ママと2人、頭を下げて、看護師さんたちが去ってから、パパの枕元に近づいた。


「パパ!大丈夫?」
「……か、」
「うん?」
「なんだか、物凄く、胸糞悪い夢を見た気がする…。」


それが、目が覚めたパパが私たちに話した最初の言葉だった…。
そしてその後、しばらくの入院を強いられたけど、パパは事なきを得て、退院出来るほどに回復した。




「はい?どうぞ。」
「失礼します。」
「君は…、仕事はどうした?休みか?」
「いえ、外回りついでです。明後日退院だと聞いたので、自宅に戻ってまた逃げられる前に逃げ場のないここで会っておこうと思いまして。」
「……………」
「良かったですね、目が覚めて。」
「…あぁ、君の『機転』も妻から聞いた。」
「別に機転でもなんでもないですよ。俺は本気でしたから。」
「……………」
「まぁ、目が『覚めちまった』んで、聞いたところの2年間くらいは、つきあってやってもいいですけどね。」
「………君のような男が、」
「はい?」
「君のような男が、なんでうちの子なんだ?」
「え?」
「大企業に勤めていて、相応の収入があり、頭の回転も早い。容姿だって悪くない。引く手あまただろう?何もあんな取り柄のない女子高生じゃなくてもいいじゃないか。」
「…本当に、」
「うん?」
「『何の取り柄もない女子高生』だと思ってるんですか?」
「え?」
「純粋さも、努力家なところも、俺には十分美徳に思えますけどね。」
「………」
「少なくとも今まで俺の周りには、あんな女、いなかったですから。」
「……………参ったなぁ。君には借りが出来てしまったし、そんなこと言われたら君が良い奴に思えてくるじゃないか。」
「あぁ、別にすぐに認めてもらわなくてもいいですよ。」
「え?」
「先日のアレを見たら、お義父さんもなかなかからかい甲斐のある人だと思ったんで。」
「…え?」
「楽しませてくれるんですよね?2年間、俺を。」
「……………君は性格に問題があると言われたことはないか?」
「よくありますが実力でカバー出来るんで大した問題じゃないですね。」
「…………なんでこんな男をうちの娘はっ…!」
「『大企業に勤めていて、相応の収入があり、頭の回転も早い。容姿だって悪くない。引く手あまた』の俺を選んだあたり、見る目あるんじゃないですか?」
「………………」
「おっと、そろそろ仕事に戻る時間だ。じゃあ、お義父さん、」
「あぁ、もう2度と来るな!」
「えぇここには2度と来ないのでまたお宅に伺います。それでは。」
「…………くそっ!!」




『お疲れ様です。今日、父が無事退院しました。いろいろお世話になりました。』

『あぁ、良かったな。』

『それで、週末に退院祝いをしようと、母と目論んでるんですが、リヴァイさんもご一緒にどうですか?』

『それはぜひ参加させてもらおう。』


「ママ、リヴァイさん退院祝いに来てくれる、って!」
「そう?じゃあどうしようかしらね?あ、パパにはまだ内緒だからね!」
「うん、わかった。」


パパ曰く「胸糞悪い夢」を見てから、それまでは頑なにリヴァイさんを避けていたけど、何か思うところがあったのか、


「…なんだ、君も来たのか。」
「えぇ、せっかくなんでお邪魔させていただきます。」


無難に会話するくらいになっていた(と、言ってもまだまだチクチクチクチクと言葉に棘がある気がするけど…)
一時は大丈夫かなぁ、とか思っていたけど、これならママが言う通り、2年くらいでどうにかなりそう、なんて、少しホッとした。

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bkm

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