2000年後もラブソングを


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Devote my life to you+


2


リヴァイさんがうちに挨拶に来る当日。


「あ、そろそろ着くって。」
「あら、もうそんな時間?」
「外に出て待ってるね。」
「………」


1人異常に不機嫌な父と、先日の「リコちゃんのお兄さんの親友」と言うリヴァイさんのポジションを聞いてからどこかご機嫌な母を家に残し、家の外をウロウロしていた。


「フィーナ。」
「リヴァ、イ、さん…」


名前を呼ばれて振り返った先には、


「ス、スーツで来たんです、ね…。」
「あ?私服で来るわけねぇだろ。」


ビシッ!とネクタイを締め、髪も少し固めているリヴァイさんがいた。
…わーわーわー!
スーツ姿はただでさえカッコ良さが割増になるのに、今日はさらに倍!って感じがする…!


「ど、どうぞ…。」


そんなリヴァイさんを見たら、急にこれは一大事な気がしてきて(元々一大事だとは思っていたけどそれ以上に)ドキドキしてきた。


「パパ、ママー、来たよー?」


私の声にママがパタパタとリビングからやってきた。
けど…。


「ママ、この人が、リヴァイさん。リヴァイさん、母、です。」
「初めまして、フィーナの母です。」
「初めまして、お嬢さんとおつきあいをさせていただいてます。ご挨拶が遅れて申し訳ありませんでした。」
「いいえー。こちらこそわざわざすみません。」


当然のごとく、パパがリビングから出てくることはなかった…。
この時すでに先行きが不安になったのは、私だけなんだろうか…。


「あ、上がってください。」


リヴァイさんがママに手土産のお菓子を渡したところで、家に入って、と、薦めた。
…こういうところも卒なくこなせるから、やっぱり私より年上で、それなりに場数踏んでいるんだと思う。


「パパ、リヴァイさん来たよ?」
「…………」


私の父は、決して無口ではない。
けど今日は、朝から一っ言も言葉を発していないから、パパの機嫌は地面を這いつくばっているどころか、地下に潜ってしまっているんだと思う。


「ご挨拶が遅れて申し訳ありませんでした。」


リヴァイさんはここでも、さっき玄関でママに言ったように、自分の非だと詫びていた。
チラッ、と、顔を見ると、相変わらず無表情で、この人、緊張とか、することあるのかなぁ?なんて、少し他人事のように思っていた。


「フィーナから紅茶がお好きだって聞いて、」
「ありがとうございます。」


ママがお茶を持って現れ、リヴァイさんやパパに配り、ソファに腰を下ろした段階で、リヴァイさんが口を開いた(ちなみにパパは未だに一言も喋っていない)


「すみません、僕は口下手なもので回りくどく言えないので単刀直入に言わせてください。」


そこまで言うと、リヴァイさんはソファから下りて、フローリングの床に膝をつき、


「お嬢さんを、僕にください。」


パパとママに向かい、土下座をした。


「………」
「………」
「………」


今日はやっぱりこういう流れになるんだろうな、と思ってはいたけど、それでもリヴァイさんのいきなりのこれに(だって我が家に到着してまだ5分も経ってない!)うちの家族は無言になった。
それを破ったのは、


「君は、」


パパだった。


「うちの娘がいくつか知っているのかな?」


今日初めてパパが話した言葉がそれだった。


「今年で18ですね。」
「あぁ。『まだ』17歳の子供だ!そんな子を嫁になんてやるわけないだろう!」
「もちろんすぐにとは言いません。高校の卒業は待つつもりですし、彼女が進学を希望するのであれば行かせるつもりです。その間の学費くらい出せますし。」
「…さすが『あの』ダリスに勤めてるだけあるわねぇ…。」


パパが一方的に火花を撒き散らしている時、ママがボソッと言ってきた。
そこで思わずママを見ると、ママだけがこの状況でにこにこ笑っていた…。


「金の問題じゃないっ!とにかく駄目なものは駄目だっ!話は済んだな?俺は出かける!」
「あ、ちょ、パパ!」


フン!とリビングを飛び出して行ってしまったパパの後を追おうとしたら、ママに引き止められた。


「いいのいいの、放っておきなさい。」
「で、でも、」
「リヴァイさん、でしたっけ?」
「はい。」
「ごめんなさいね。でもあれは予定通りの行動だから許してあげて。」


ママが苦笑いしながら、未だフローリングに膝をついているリヴァイさんにソファにかけるように促した。


「予定通り、って何?」
「ん?んー…、フィーナには言ったことなかったけど、」


私がママに聞いたら、ママは昔話を始めた。


「パパもね、おじいちゃんに挨拶に来た時、すっごく反対されたのよ。」
「え?」
「最初は『挨拶の仕方も知らんのか!』とかそんな理由だったかなぁ?」
「…おじいちゃんらしいね…」
「でしょ?初めて会ってから2年くらいかかって、パパはようやくおじいちゃんの説得に成功したの!」
「…へー…」
「それからようやく結婚。で、フィーナが生まれた時パパが初めてフィーナを抱っこしながら言ったのよ。」
「…なんて?」


そう聞いた私に、ママはにっこりと笑いながら言った。


「『20年か30年後、この子をくれって言う男が現れたら俺も2年は反対するからな!』って!」
「…………つまり俺は自分がやられた仕返しをされてるわけですね?」
「まぁ…、そうなっちゃうわよね。」


あはは、とママは笑った。


「けどまぁ、仕方ないと思ってくれる?20年どころかまさか17年でそんな人が現れるなんて思いもしてなかったんだから。」
「あぁ、まぁ…、そうですよね…。」


ママの言葉に、リヴァイさんは1つ息を吐いてから紅茶に手を伸ばした。


「お義母さんは反対じゃないんですか?」


リヴァイさんが紅茶に口をつける直前にそう聞いてきた。


「私は娘を信じてるもの。」


…………の、わりに、あの指輪を私の部屋で見つけた時は怒ってませんでした…?
とは、決して口に出せなかった…。


「それにリコちゃんのお兄さんの友達なら信頼出来るしね。」
「ファーランも知ってるんですか?」
「そりゃあ、以前この子の家庭教師してくれた子だもの。真面目で礼儀正しい好青年!…その子の友達なら、信頼出来るかな、と。」
「なるほど。ならファーランのためにも期待を裏切るようなことは出来ませんね。」
「そうね。…あ、そうだわ、フィーナから聞いたんだけど、」


リヴァイさん、普段はあんなに口数少ないのに、さすがと言うか…。
飛び出していってしまったパパはまるっと無視して、和気あいあいとしだしたママとリヴァイさんを、なんだか不思議な気持ちで見ていた。

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bkm

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