2000年後もラブソングを


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Devote early summer to you


1


春も終わり、って頃。


「でもいいよなぁ、フィーナはカッコいい彼氏がいて!」


クラスメートたちの目下の話題は、いかに夏休みを彼氏と過ごすか、になっていた…。


「う、うん…?」
「しかも年上!」
「てかイケメンだった!この前チラッと見たけど!!」


私は、自分で言うのも何だけど、人づき合いと言うのがあまり得意じゃない。
当たり障りなく、人の輪の中にはいれるのかもしれないけど、それは「当たり障りない」関係なだけで、取り立てて仲が良い、とは、思わない。
唯一仲が良いと声に出して言えるのは、


「あんなチビをイケメンとか言ってる段階で、お前たち今年も彼氏は絶望的だね。」
「うっわ、バッサリ!」
「リコ酷い!」
「事実だからね。」


リコちゃんだけだ。
リコちゃんには本当になんでも話せる。
けど…。


「でもさぁ、そんな年上の彼氏、どうやってつきあうことになったの?」
「…………気がついたら?」
「はぁ!?なにそれ!気がついたらヤられてたってこと!?」
「ち、違うって!そういうんじゃなくて、…ねぇリコちゃんも何か言って、」
「アイツ、ロリコンな上フィーナがボーッとしてるから気がついたらヤられてたに一票!」
「…リコちゃんまで酷い…」


リコちゃんにも言ってないことが、1つだけある。
…リコちゃんのこの口調は、たぶん、リヴァイさんが何かしらのアクションを起こしたから結果今に至る、と、思っているんだと思う。
でも本当は…。




「じゃあ俺の方で見てくれそうな奴、探しておくね。」


あれは中3の春の終わり。
リコちゃんのお兄さんに家庭教師をお願いしていたんだけど、お兄さんのいくつかのレポート提出の時期と重なってしまって、しばらくは見れない、となった時。
お兄さんがその間代理で見てくれる人を探してくれる、と言ってくれた。
正直、年上の男の人は苦手なんだけど(というかひたすら緊張してしまうのだけど)リコちゃんのお兄さんは、年上の男の人、と言うより「リコちゃんのお兄さん」と言うことから先に入ったためか、あまりそういう抵抗がなかった。


「フィーナちゃんは代理期間、女の先生の方がいいよね?」
「は、はい。出来れば…。」
「だよね。」
「す、すみま、せん…。」
「大丈夫、大丈夫。ちょっと知り合いあたってみるからさ。」


お兄さんは、私のそういう…人見知りと言うか、コミュニケーション能力のなさを考慮して、代理の先生は女の人で探してみる、と言ってくれた。
リコちゃんのお兄さんが忙しい人だから、お兄さんの講義が早く終わる曜日に、リコちゃんの家にお邪魔して勉強を見てもらっていた(その方が駅から近くてお兄さん的に都合が良かったそうだ)
その日は勉強を見てもらう日じゃなかったんだけど、リコちゃんと話が盛り上がり、学校帰りそのままリコちゃんちにお邪魔する、ってことになった。
この日以前に1度だけ、リヴァイさんとは面識があった(以前リコちゃんちにお邪魔した時、リヴァイさんもたまたまお兄さんのところに来ていたところに出くわしたってだけだったけど…)
だからその日もお兄さんのところにいたリヴァイさんを見ても、なんら違和感はなかった。


「げっ、兄さんまたあのチビ連れて来たのかよ…。」


玄関先にあったリヴァイさんの靴を見たリコちゃんのつぶやき。
この頃すでにリヴァイさんと仲が良くなかったリコちゃんの言葉は、今でも忘れない…。


「あ、っと、フィーナごめん、ちょっとリビングで待ってて。」
「あ、うん。いいよ。」


リコちゃんは、少し片付けてくる、と言って先に自室に行った。
ので、リビングにお邪魔させてもらったわけだけど、そこには先客がいた。


「あ、いらっしゃい。」
「…お、邪魔、します。」
「リコもしかして部屋片づけてる?」
「た、ぶん…。」
「ごめんねぇ。こっち座って待ってて。」


ちょうど出かける直前のお兄さんとリヴァイさんが、リビングにいた。
お兄さんに言われるがまま、リビングのソファに腰を下ろしたけど……。
………お願い、リコちゃん早く戻ってきて………。
って、すっごく心の中で思っていた。


「あ、そういやリヴァイお前内定決まって暇って言ってたよな?」


そんな時、お兄さんが口を開いた。


「…あぁ。」
「フィーナちゃんコイツは?」


コイツ、と言いながら、お兄さんは親指でリヴァイさんを指した。


「なんの話だ?」
「俺の代理で家庭教師しないか、って話!ほら、レポート重なっちまってしばらく…そうだな、3週間くらいか?見れなくなるから、その間代わりに家庭教師してくれる子探してたんだけどさ。週2で見れるって子なっかなかいなくてどうしようか、って思ってたんだよ。」
「引き受けるとは言ってねぇぞ。」
「暇なんだろ!?金も出るし、3週間だけ代わってくれ、って!俺のバイト先をなくさないでくれ!!」


お兄さんの懇願に、リヴァイさんは大きくため息を吐いた。


「フィーナちゃんもさ…。希望は女の先生、ってことだけど、なかなかいなくてね…。それにコイツこう見えて教え方上手い、って言うか、子供に宿題教えてやったりしてるしな?」
「あれはいとこのガキとその連れが馬鹿すぎるから教えてやってるだけだ。」
「ちょーっと、口が悪いかもしれないけど、根は良い奴だし、3週間だけだし、駄目かな?」


駄目です、女の先生がいいです。
……………なんて、言えるわけ、ないじゃないです、か…………。


「…」
「ほんとに!?ごめんね、ありがとうっ!」


そんなこと思いながら黙って頷いた私に、お兄さんは良かった良かった、と、胸を撫でおろしていた。


「は?うちで教えろって言うのか?」


じゃあ連絡先を、ってなった時、今どうやって教えてるか、お兄さんがリヴァイさんに言ったら、リヴァイさんが眉間にシワを寄せた。


「あー、そっかお前1人暮らしだしさすがにマズイか…。」


この時の私は、お兄さんの言葉通り、1人暮らしの男の人の家に勉強を教えてもらいに行くだけとは言え、1人で行くのはちょっとなぁ…なんて思っていたけど。
この時のリヴァイさんは、なんで見ず知らずのガキを俺の家に入れなきゃいけないんだ汚ぇ、と、潔癖故に全く別のところが引っかかっていたんだろうな、って、気づいたのはずーっと先のことだ。


「あ、じゃあ駅マックは?100円コーヒーあるし!」


別にうちでも良かったんだけど、両親共働きなうちに、お兄さんにお願いしているような時間帯でリヴァイさんがやってきたとしても、家に2人きりになるわけで。
それもマズイ、って言ったお兄さんが、駅マックを勉強の場にしたらどうだと提案してきた。


「あぁ、まぁ、それが無難だな。」
「だろ?フィーナちゃんもそれでいい?」
「は、はい。」
「じゃ、決まりね!」


こうして、中3の春の終わり、リヴァイさんから週2回、駅マックで勉強を見てもらうことが決定した。

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