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現在、
「メリー、クリスマス、」
「メリークリスマス。」
「………」
「………」
2人で行うクリスマスパーティーの準備も終わり、乾杯もして(シャンメリー)さぁ、パーティーの始まり、ってところなんだけど…。
「………」
「………」
沈黙が…重い、って言うか、痛い…。
どうしよう、どうしよう、ってぐるぐる考えていたら、
「フィーナ。」
リヴァイさんが口を開いた。
「…さっきの女だが、」
「いいですっ!!」
「……あ?」
リヴァイさんの言わんとすることを珍しく先に察知できた私は、その言葉を聞く前に止めに入った。
「ほ、ほらっ!人には、い、いろいろあるじゃないですか!」
「…」
「だ、だから別に、深く聞かなくても、私は、全然大丈夫なんでっ、」
「……そうか。」
「は、はい…!」
本当は、聞きたい、の、かも、しれない。
けど、聞きたくない、思いも、ある。
矛盾する思いを抱えながら、ドキドキドキドキとしている心臓を抑え、とにかく今はこの話題から話を逸らそうと必死だった。
なのに…。
「それでさっきの女なんだが学生の頃つきあっていた奴だ。」
………………だから聞かなくていいって言ったじゃないですかっ!!!!
って、叫びだしたいくらい、あなた私の話全く聞いてないですよね?って言う返答をしてきたリヴァイさん。
………あぁ、やっぱり改めて本人の口から「元カノ」さん、て聞くとダメージが……。
そりゃあリヴァイさんは私よりもずっと歳が上で、私と違って今まで恋人がいなかったわけないわけで。
…でもやっぱりなんかなんかなんか…。
「まぁ…トータルでつきあった期間は、確かに長いかもしれん。」
「…トータル?」
「あぁ。2回よりを戻して3回別れた。」
だからまぁ、どのみち合わないってことだな、と、リヴァイさんは言った。
………でもそれって、2回もよりを戻すくらいは相性というか、良かった、って、わけじゃないです、か………。
「だがお前より長く続いた奴はいない。」
リヴァイさんはそう言うと、私の頭を引き寄せキスしてきた。
「ちょっ、」
「…なんだ?」
「ほ、ほら、食べ物が、」
「そんなの後でいいだろ。」
「やめ、……んっ……」
そのまま、ベッドに連れていかれたんだけど…。
いつもだったら、きっと、リヴァイさんに触れられる、ってことは、すごく嬉しいこと。
しかも今日はクリスマスイブで、初めてちゃんとお泊りする日で、すっごくドキドキしてた。
でも…。
…私がリヴァイさんのおうちに来ているように、あの人も、この部屋に来ていたのかなぁ?って。
私が今横になっているこのベッドに、あの人、寝たのかなぁ?って…。
そんなことが頭を覆ったら、心にどこか、すきま風が吹いたような気がして…。
触れるリヴァイさんの温もりは温かいのに、なんだかすごく、寒いような気がした…。
「あぁ、そうだ。」
ベッドで2人、横になっていたら、リヴァイさんが突然、ベッド横にあるサイドボードの引き出しから、可愛くラッピングされた箱を取り出した。
「クリスマスだからな。」
そう言って私にその箱を手渡してきた。
「あ、あー…」
「うん?」
「わ、たし、プレゼント、家に忘れてしまって、」
「は?」
「す、みま、せん。今度会う時に、渡します、ね。」
「…………」
だって、リヴァイさんはもう、新しい腕時計持ってるんだから。
きっと私じゃ買えないような高い時計。
そんなの持ってるのに、渡せない、し…。
もう学校も冬休みに入ったから、明後日にでも、別のプレゼント、買いに行ける、し…。
でもなぁ…。
時計じゃ、ない、なら…、何にしよう…。
やっぱりお財布?
けど正直なところ、もうあんまり、高いの買えるだけのお金、残ってないんだよなぁ…。
「おい。」
「はい?」
「…開けないのか?」
「え?」
ぐるぐると考えながら、横になっていた体を起こし、リヴァイさんがくれた箱を、サイドボードに置いた私に、リヴァイさんは眉を顰めながら聞いてきた。
「…だって、クリスマスプレゼントなんですよね?」
「あぁ。」
「なら25日の朝に開けないと。」
「あ?」
「え?知りません?クリスマスプレゼントはイブの日にもらっても、一晩枕元に置いて、25日の朝に開けるんですよ。」
「…そんなこと初耳だ。」
「そうなんですか?うちはいつもそうでしたよ。『良い子にしてたら24日の夜にサンタさんがプレゼントを届けてくれるけど、サンタさんが大切に選んでくれたプレゼントだから貰ってすぐ開けるんじゃなくて、まずそのことにありがとう、って感謝してね。じゃないとサンタさんがプレゼント持って帰っちゃうよ』って。だから夜中に目が覚めてプレゼントが枕元にあっても、開けていいのは25日の朝だったんです。」
「…」
「だから今も、イブにプレゼントを貰ってもその日は枕元に置いて、25日の朝に、開けることに、して、て…。」
あぁ、でも、ちょっと幼稚なこと言ってしまったかも…。
なんて、自分の言動を後悔し始めた時、
「ならば、お前が泊まりに来て正解だな。」
「え?」
「じゃなければ、お前がそれを開けた時の顔を見ることが出来ない。」
リヴァイさんが再び私を抱き寄せながらそう言った。
「それにしてもさすがに腹減ってきたな…。」
「あ、じゃあ、もう1度温めますね。」
「あぁ。」
2人でベッドから起き上がり、ルームウェアに袖を通す。
…今日は、すっごくドキドキしていて、すっごく楽しみにしていた日。
けど…。
−ならば、お前が泊まりに来て正解だな。じゃなければ、お前がそれを開けた時の顔を見ることが出来ない−
それに対する答えが、口から出て来なくて、曖昧に笑っていた。
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bkm