2000年後もラブソングを


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Devote breakfast to you


1


「なんだ?」
「…お願いが、あります。」
「断る。」
「今、マンションの、部屋の前にいるんで、入れてください。」
「…今度は何だ?」
「エレン、と、ちょっと…。」
「…………今仕事で抜けられない。知り合いを送る。そこにいろ、いいな?」
「はい。」




「あ、電話だ…。」


1日の授業も終わって、今日はバイトもなくて、のんびりと家に向かっていた時、まだ仕事中のはずのリヴァイさんから電話が着た。


「はい?」
「フィーナ、悪いが頼みがある。」
「頼み、です、か?」
「あぁ。俺の家の鍵はあるな?」
「はい。」
「うちの前にガキが1人立ってる。赤いマフラー巻いてるはずだからすぐわかる。そいつを中に入れてやってくれないか?」
「子供、ですか?」
「あぁ。俺は仕事があって遅くなるから頼めるか?」
「はい、大丈夫です。」
「悪いな。」


何事かと思ったら、リヴァイさんの知り合いが家に来てるようで…。
まぁ今日は暇だし、と、そのままリヴァイさんのマンションに向かった。
リヴァイさんの部屋のある階について、しばらく歩くと、リヴァイさんの部屋のドアの前で蹲っている子を見つけた。


−赤いマフラー巻いてるはずだからすぐわかる−


そうリヴァイさんが言った通り、丸くなっているその子の首には赤いマフラーが巻かれていた。


「あ、の、」
「………」


私の言葉に、顔をあげたその子。
……………スカート履いてる、から、女の子なのはわかった、けど、この子、すっごい美人………。


「リヴァイさん、から、頼まれ、て、」
「あぁ…。」


私がそう言うと、その子は立ち上がった。


「…………」
「…………」


ん、だけ、ど、この子、身長、いくつ…?
絶対リヴァイさんより大きい、気が…。
この子は、いったい…………。


「開けないの?」
「え?あ、あぁ、はい。」


リヴァイさんより大きい=私よりも大きいわけで…。
だいたい、「ガキ」ってリヴァイさん言ったけど、そんな子供になんて…。


ガチャ


「あ、開きまし、た。」
「…どうも。」


ガチャっと音を立てて開いた鍵に、その子は私を見て一礼した。
…よく見たらこの子、制服着てる…。
え?これどこの制服?
どこの学校の子?


「な、なに?」
「鍵。」


私がぐるぐると考えていたら、マフラーの子は、手を出してきた。


「返しておくから、」
「え?あ、い、いや、これは、」
「トイレ行きたいから早く。」
「あ、は、はい…。」


これは借りたのではなくて、と言おうとしたら、トイレ行きたいから早くしてなんて言われて、思わず流れでリヴァイさんから貰った合鍵を、その子に渡してしまった…。
鍵を受け取ったその子は、どうも、ともう1度お礼を言って、ばたん、とリヴァイさんちのドアを向こうに消え、ガチャ、っと鍵をかけた…。
………………私、締め出された…?
てゆうかあの制服の子は誰で、今のこの状況は、何?
え?あの子普通にリヴァイさんちに入っていったけど(しかも鍵かけた)
リヴァイさん、と、どういった関係の子…?
そして私、このまま帰れ、ってこと…?
いやでもそんな、見ず知らずの人がリヴァイさんちに入っていって(あげく合鍵取られた)このまま帰るなんて出来ないし、したくないというか…。
せめてさっきの制服の子が誰で、どういう状況なのか説明してほしい、って言うか…。
どうしよう、どうしよう、どうしよう。


「……これはどういう状況だ?」
「お、おかえり、な、さい。」


悩んだ結果、やっぱりそのまま帰るなんてことが出来ない私は、リヴァイさんの帰宅を待つことにした(もしかしたらあの子も出てくるかもしれないし)


「なんでお前がそこにいる?」
「あ、鍵、渡してしまって…。」
「………」


そして私が待ち始めてから3時間くらい経ったんじゃないか、って時(冷静に思えば、きっとすっごい迷惑な行為だったと思う)リヴァイさんが帰宅した。


「お前も中で待ってれば良かっただろう。」


リヴァイさんは盛大にため息を吐きながらそう言った。
…そう、なのかも、しれない、けど…。
でも見ず知らずの制服を着た女の子と部屋で2人きり、って、ちょっと…。


「ほら、入れ。」


とりあえず腹減ったからメシ食ったら家まで送る、とリヴァイさんは言いながらドアを開けた。


「お、お邪魔、し、ます…。」


そう言ってこそこそと来慣れたリヴァイさんちに入った。


「お帰りなさい。」
「お前、いきなり着た分際でなんでフィーナ締め出してやがる。」
「え?…………会社の、バイトの人かと思って、」
「そんな奴に家の鍵預けるか、馬鹿が。」


いつものように部屋に入ると、いつものリヴァイさんの部屋はすっかり彼女の寛ぎスペースと化してたようで、


「勝手に人のDVDを見るんじゃねぇ!」
「暇だったし、」


私の存在に一瞬驚いた顔をしたけど、そのままリヴァイさんと話を進める彼女。


「フィーナ、紹介する。」


彼女の言動に、大きく1つため息を吐いた後で、リヴァイさんは私に向き直った。


「俺のいとこのミカサだ。」
「…いとこ…。」
「どうも。」
「あ、ど、どうも。」
「ミカサ、フィーナだ。」


リヴァイさんの簡単な紹介に、頭を下げる。
………リヴァイさんのいとこ……。
あんまり…似てない……。
や、必要最低限のことしか言わないあたり(私が初対面なせいかもしれないけど)似てると言えば似てる…。


「おい、お前。『いさせてやる』んだ、メシくらい作れ。」
「…そこ。」
「あ?」
「出来てる。さっき食べた。」


リヴァイさんはネクタイを緩めながら、ミカサさんに言うと、ミカサさんは相変わらずDVDを見ながらも、キッチンの方を指差し答えた。


「フィーナ、お前メシは?」
「あ、ま、まだ、です。」
「…じゃあこれで足りねぇな…。」
「じ、じゃあ、」
「ラーメンでいいよな?座ってろ。」


リヴァイさんはスーツを脱ぎ捨て、腕まくりを始めた。
……じゃあ私帰ります、って、言いそびれた……。
チラッと、盗み見るミカサさんは、真剣にDVDを見ていた。
…確かにリヴァイさんとは似てないけど、でもすっごい美形だ…。
何しに来たんですか?とか、今いくつですか?とか。
声かけた方がいいのかなぁ?
でも真剣にDVD見てるし…。
話すタイミングと内容が…。


「出来たぞ。」
「あ、ありがとう、ございます。」


ほら、っと、湯気の出ている器を持ってきたリヴァイさん。


「…………」
「…………」
「…………」


ミカサが見ているDVDはアクションもので、現在戦闘シーンが繰り広げられている。
銃の乱射音の中、ちゅるちゅるちゅるーと、ラーメンをすする音が響く。
……………なん、か、これ、どうしたらいいんだろう、って、思うの、私、だけ…?
そもそも、この子がいとこなのはわかったけど、それでどうするんですか、この子のこと、って聞いていいの?
うーーん、と悩んでいるうちに、ラーメンを平らげてしまった…。


「…ごちそう、さま、でし、た。」
「あぁ。……じゃあ適当に支度してろ。」
「え?」
「家まで送る。」


食終わったら、まるで追い出すかのように、帰宅準備を促された私…。


「あの、」
「あ?」


あと一息でDVDが終わる、ってところのミカサさんに聞こえないように、リヴァイさんの傍で小声で尋ねた。


「ミ、カサ、さん、は、どうするんです、か?」
「あぁ、アイツは泊まるからいい。」
「とま」
「支度出来たか?なら帰るぞ。」
「ま、待ってください!!」
「あ?」


さも当たり前、って感じに言い放ったリヴァイさんに、思わず声をあげた。


「泊めるんですか!?女の子をっ!?」
「は?」


だってミカサはリヴァイさんのいとこであるかもしれないけど、いとこってことは極端な話、結婚だって出来るわけで…。


「お前何考えてんのか知らんが、さっきも言った通りアイツは俺のいとこで、」
「でも女の子ですよっ!!」
「ガキだろうが、馬鹿言ってんじゃねぇ。」
「ガキ、って、でも私と同じくらいじゃないですかっ!」
「まぁ…、俺とよりはお前の方が歳が近いのは違わねぇが、」
「そんな子泊めるんですか!?」
「お前なぁ…、」


私の焦りにも似た何か(むしろ焦りだけかもしれないけど)を、全く意に介そうとしないリヴァイさんは、大きな大きなため息を吐いた。


「お前には俺が中学生のガキに手出すようにでも見えてるのか?」
「ち、」
「何勘違いしてるのか知らんが、ミカサは14、中2のガキだ。」


誰が欲情するか、と鼻で笑ったリヴァイさん。
…………中学生!?あれがっ!!?
チラッと見たミカサと、


「……………」
「……………」


バッチリ目が合ってしまった私は、苦笑いするしかなかった…。

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bkm

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