2000年後もラブソングを


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Devote bathing suit to you


3


「リ、リコちゃん、に、」
「あ゛!?」


私はリコちゃんに誘われただけで、何も悪いことなんてしてない。
強いて言えばリヴァイさんに行く前にちゃんと言わなかったことくらいで…。
でもそれだって、「言わなかった」っていうより、「言うタイミングを逃した」って言うか…。
言うつもりはあったんだ、ってことは認めてもらいたい。
だからキュッ、と、胸の前で両手を握り締め、意を決して、リヴァイさんに話しかけた。
…の、だけど、今まで以上に「あ?」と言う一言に力の入った返事をされ、もう今すぐにでも帰りたい衝動に駆られていた。


「リコがどうした?」
「…リ、リコちゃん、が、行こう、って、」
「海にバーベキューしに行くと言ったのか?」
「え?は、はい、そう、です、けど…。」
「2人だけで行くなんざ思ってたわけじゃねぇよな?」
「そ、れ、は、まぁ、最初、から、リコちゃんと仲の良い先輩たちと行く、って、」
「『仲の良い先輩』?」
「…さっき、リコちゃんを連れて行った人、で、」
「……」
「リコちゃんの、部活の先輩、です。」
「…………」


ジリジリと。
いや、もしかしたらチリチリと。
肩が焼けていくのがわかる気がした…。


「じゃあ何か?」


私、このパラソルの日陰に入っていいんだろうか、って思い始めた時、リヴァイさんが口を開いた。


「テメェは最初から男がいるのわかってて来た、ってことか?」
「え、」
「わかった上で、俺に何も言わずに来た、ってことなんだよな?」


あぁ、私今この日陰に入っちゃまずいんだな、って。
ビーチチェアに座ったまま私を睨みあげてくるリヴァイさんに、肩に感じる日差しとは反比例して、足元が冷えてきた気がした…。


「そ、そう、言う、言い方するなら、そう、です、けど、」
「………」
「で、でも、言わずに来た、とかじゃ、なくて、」
「じゃなくてなんだ?」


もしかしたら私は、未だかつてこの人からこんな風に睨みあげられたこと、なかったんじゃないか、って勢いで睨まれている…。


「な、なん、だ、って聞かれても、困ります、けど、」
「………」
「で、でも、ほんとに、言わなかった、とか、そういうわけじゃ、」
「おい。」
「は、はい?」
「テメェ、下手な言い訳しようものなら容赦しねぇぞ。」


……それはどう、容赦しないつもりなんでしょう、か……?
なんて、怖くてとてもじゃないけど、聞けなかった…。


「で、でも、」
「あ゛ぁ?」
「……………」
「でもなんだ?」
「リ、リヴァイさん、だって、」
「あ?」
「…リヴァイさん、だ、って、言わなかったじゃ、ない、です、か。」
「はぁ?」


私の言葉に、リヴァイさんは明らかに眉をひそめた。


「だ、だって、リヴァイさんも、海でバーベキューなんて、」
「俺は会社の奴らと出かけると行ったはずだ。」
「そ、れは、まぁ…、そうです、けど、」


何が問題だ?とでも言うかのようにビーチチェアの背もたれに寄りかかり、物凄く…言うなれば尊大な態度で私を見てきた。


「で、でもっ、」
「なんだ?」
「あ、あん、な風に、抱きついてくる人が一緒、なんて、聞いてない、し、」
「………」
「だ、だいたい、あの人同じ部署なんですよね?それって毎日、」
「つまりお前は自分のことを棚にあげて俺を責めるんだな?」
「そ、…いう、つもり、じゃ、」
「そういうつもりじゃないならなんだ?」


あぁ、どうしよう…。
あっちじゃ、きゃっきゃきゃっきゃと楽しそうな声が聞こえるのに、今すごく泣きたい気分……。
いや、気分じゃなく、泣きたい…むしろ泣く……。
なんて思っていた時、


「………」


それまでドカッ!と尊大にビーチチェアに座っていたリヴァイさんが立ち上がり、立ち去ろうとした。


「ど、どこ行くんですか!?」


思わず、リヴァイさんが来ていたパーカーの裾を掴んで言った。


「…このままお前と話してても時間の無駄だ。」
「む、」
「さっさと離せ、俺の分の肉が無くなる。」


イラァ、とした態度を隠そうともせずリヴァイさんが言った。


「…………」
「…………」


リヴァイさんは私を無言で睨む。
…………今の、この状況、というかリヴァイさんのこの態度なら、手を離した方が、良さそうな気も、しなくもない。
けど………。
今手を離す、ということは、あっちで待機してる(モブリットさんが上手い具合に止めてくれてるようにも感じる)あの顔も体も素晴らしいお姉さんのところに行く、と言うわけで。
そんなあんな顔も体も素晴らしい人のところに行かれたら(しかも相手は水着)太刀打ち出来ないどころか、私の「恋人」と言う立場すら霞んでしまうんじゃないかという危機になるんじゃないだろうか……。
だって私が男の人だったら、絶対こんな貧相な体よりもあのお姉さんの体の方がいいもの(しつこいようだけど、しかも水着)
だから今この手を離すと言う行為は絶対避けなければいけないことだと思う。


「い、」
「あ?」
「行かないでくださいっ!」


私のその言葉にも、リヴァイさんが顔色を変えることはなかった。
むしろうざいからさっさと手を離せ、と体全体で言ってる気すらしてきた…。
何か言わなきゃ、何か言わなきゃ、とあまりにも短い時間内で脳内をフル回転させ考えに考え抜いた結果、


「わ、私!」


何故この言葉をチョイスしてしまったのか、後々疑問視されるような、


「私の方がっ、リヴァイさんを幸せにしますっ!!」


そんな言葉を口走っていた………。


「……………」


でもこの時の私はただただ必死で、客観的に見て自分がおかしなことを言っただなんて思いもしなかった(というか、そんなところまで思考が行き着く余裕、微塵もなかった)

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bkm

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