2000年後もラブソングを


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Devote bathing suit to you


1


「海でバーベキュー?」
「そう!行かない?」
「え?2人、じゃ、ない、よね?」


リコちゃんには現在、彼氏と言う存在の人がいない。
本人は別にそんなんじゃない、って言ってるけど、


「イアンとその友達と!」


リコちゃんの部活の先輩だった、現在大学生のイアンさんのこと、好き、なの、かな?とか。
そんなことを思っていた。


「で、でも、イアンさんの友達、って、大学生?」
「そ!で、その友達も自分の友達に声かけるって言うし、私も友達連れて行く、って話になって。」


だから行こう、って言うリコちゃん。


「ね?準備もあっちがしてくれる、って言うし、美味しい肉食べて来ようよ!」


リコちゃんが、男の人と出かけよう、と言うのは、このイアンさん以外にいない。
だからやっぱり、リコちゃんにとってイアンさんは特別なんだろうな、って思った。


「うん、いいよ。」
「やった!じゃあさ、放課後、」


どこかうっきうきなリコちゃんに誘われ、海でバーベキューをする予定が組み込まれた。
……ことを、リヴァイさんにどう言おうかなぁ、って思いながら電話したら、


「週末は会社の奴らとちょっと、な。」


リヴァイさんにも予定がある、って言われた。


「お前は?」
「あ、私はリコちゃんと、」
「あぁ、じゃあちょうどいいな。」


リコちゃんと、リコちゃんの先輩と一緒に海でバーベキューです、と言い終わる前に、リヴァイさんが話を打ち切ってしまった…。
そしてそのまま話が終わってしまい、結局言えずじまいだった。


「フィーナ、イアンとは面識あるよね?」
「こんにちは、フィーナちゃん。こっちが大学の友達でミタビと、」


そして当日。
リコちゃんの言った通り、イアンさんと、イアンさんの友達、その友達も友達を呼んで、と、人数も集まり、12人で海に来たわけだけど…。


「ね、ねぇ、リコ、ちゃん。」
「んー?」
「男の人と女の人で、6人ずつなんだ、ね…。」
「え?うん、そうだけど?」


何が問題なの?って顔で聞いてくるリコちゃん。
…や、別に何も問題ないんだけど、でもそれって、見方によったらこう…、男女ペアで行動、なんて事態になりはしないか、っていう、さすがにそれはちょっとリヴァイさんに後ろめたいと言うか(そもそも何も言ってないし)だって水着で、って私が気にしすぎ…?


「リコー!悪いけど、」
「はいはい!」


リコちゃんはイアンさんと準備があるらしく、そんなこと全く気にしてない(どころかどこかウキウキ中…)
…でも、どうせバレなきゃいいか、なんて。
後ろめたさもあるものの、それ以上にバレた時のことを考え黙っておこう、なんて邪なことを思った直後、


「あっれー?フィーナ?」
「ハ、ハンジ、さん…。」


人生と言うものは、不幸な偶然に見舞われるものだと思う。


「なになに、遊びに来たの?」
「は、はぁ…。ハンジさん、は?」
「私ー?リヴァイから聞いてない?うちの部署の毎年恒例バーベキュー大会!」


あははー!ってハンジさんが笑った瞬間、


「……テメェ、ここで何やってる?」


ハンジさんのその笑顔と真逆な表情をしているリヴァイさんが、ハンジさんの後ろから現れた…。


「う、」
「あ゛?」
「…う、み、に、遊び、に、来て、ます…。」


たった一文字の「あ?」と言う言葉にも、すでにリヴァイさんのご機嫌斜め具合がありありと出ていた…。
まだここに来たばかりで何もしてないけど、むしろ何もしてないうちに既に帰りたくなってきた……。


「………………」
「………………」


リヴァイさんと私(と、その斜め上にハンジさん)の間に、蒼天の空からは程遠い、重たい空気が流れ込んでいた。


「あ、フィーナいたいたー!」
「リコちゃん、」
「…なんでこのロリコンチビがいるわけ?」
「あ゛?俺も休日までテメェのツラ拝みたくねぇんだよ、クソメガネ。なんでお前らがここにいる?」
「は?なんでってなんで?私たちバーベキューしに来たんだけど?」
「あ゛ぁ?バーベキューだぁ?」


ギロリ、と、効果音が間違いなくついたと思うような目で私を睨みつけてくるリヴァイさん。
………………お肉いらないから、帰りたい…………。


「おい、フィーナ。」


でもですね、私は言おうとしたんですよ?
だけど勝手に話終わらせたのあなたじゃないですか。
そこのところは汲み取っていただきたいと言いますか、汲み取ってもらわなければ困ると言うか…。


「あ!先輩いたぁ!逃げちゃだめじゃないですかぁ!!」


私がどうしよう、どうしよう、とぐるぐるない脳みそをフル稼働させていた時、ドン、と、リヴァイさんの体が前に半歩、ズレた。
リヴァイさんの体を動かした声の人物を見ると、


「もう探しましたよー!」
「俺に近づくな。」
「先輩、ひどーい!!」


どうだぁぁぁ!!!とでも言いたいのか、それはそれはセクシーな水着から素晴らしい体を惜しげもなく出しているお姉さんが、リヴァイさんの腕に抱きついていた。
…………何、この人………?
しかも、機嫌悪いリヴァイさんを物ともせずにべったりくっついてる……!!!
え、この人が前にハンジさんが言ってた会社の飲み会とかで「リヴァイさんに言い寄ってる」って言う人…?
えっ!?
こんな人が同じ部署にいるのっ!!?


「ねぇねぇ、あなたフィーナの友達?」
「え?あ、はぁ…。」
「てことは女子高生?」
「そうです、けど…?」


私たちの間の空気を丸っと無視してハンジさんがリコちゃんに話しかけた。


「じゃあ一緒にバーベキューする子たちも高校生?」
「え?いや、高校生もいますけど、だいたい大学生で、」
「へー、大学生!女の子ばっかり?どこの大学?」
「…シーナ大の女の子もいますけど、男は全員ウォール医大です。」


ハンジさんの質問攻めに、リコちゃんはものすっごく不審そうな顔をしながら答えた。


「医大生っ!?あなたたちの『連れ』はどこっ!!?」
「…………あっちですけど。」
「モブリット!!みんな呼んできてっ!!」
「は?なんでです?って、ちょっと!!ハンジさんっ!!」
「さぁ、あなたの『連れ』のところに案内してっ!!!」
「え!?ち、ちょっ、」


戸惑うリコちゃんをグイグイ引っ張って、ハンジさんはイアンさんたちがいる場所へと向かった。


「やぁやぁ、…えぇーっと、あなた名前は?」
「…リコです。」
「いい名前だね!リコのお友達の皆さん!偶然にも私たちもこの浜辺でバーベキュー大会をしようとしてたんだけどね!」
「…誰だ、この人?」
「さぁ…?」
「聞けばあなたたち学生らしいじゃないか!そこで、だ!私たちがスポンサーになるから、一緒にバーベキュー大会しようじゃないかっ!!」
「「「……………」」」


これは、いったいどこからどうツッコミを入れればいいんだろうか…。
1人この場を取り仕切るハンジさんに誰もが着いて行けずにいるのをいいことに、当の本人であるハンジさんは、話をどんどん進めて行った。


「学生のあなたたちの変わりに、ここにいるうちの社員たちがスポンサーになって美味しい肉を食べさせてあげようじゃないかっ!!」


ザワッ


「あなたたちはパッと出の私たちを疑ってるかもしれないけど、私たちこう見えて全員ダリスコーポレーションの社員だからね?」


ザワザワッ


「ダリスコーポレーションて『あの』ダリス!?」
「そう!みんながよく知ってる『あの』ダリス!!」
「マジかよ、超有名企業じゃんっ!!」
「そうだろう、そうだろう。学生たちの反応はそうだろうね!!」
「ほ、ほんとに奢り…?」
「もちろん!!」


ハンジさんが突如バラした社名バリューは、想像以上に効果があったのか、あっという間にみんなハンジさんの意見に賛同した。


「ち、ちょっとハンジさん!何勝手に話進めてるんですかっ!俺たちだって向こうで準備して、」
「あぁ、モブリット!みんな連れてきてくれたんだね!良かった!」
「良くないですよっ!!俺たちが朝から場所取りして、」
「よく聞け男子諸君っ!!ここにいる女の子達はっ!!現役女子高生と女子大生だっ!!!!」


ザワッ


「そして女子諸君っ!!ここにいる男の子たちはっ!!ウォール医大生だっ!!将来のっ!!お医者さん候補たちだよっ!!!」


ザワザワッ


「さぁみんなっ!!楽しくバーベキューをしようじゃないかっ!!!」
「「「おーっ!!!」」」


ハンジさんの丸め込み作戦により、あっ!!と言う間に、私たち学生グループと、リヴァイさんたち社会人グループの共同バーベキュー大会が、


「………………」


物凄い不機嫌な人を1人綺麗にスルーしたまま、始められた…。

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bkm

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