2000年後もラブソングを


≫Clap ≫Top

Devote present to you


3


「お昼、どこにします?」


そして、念願の初お給料を頂いた私は、ほくほくとお金を下ろし、リヴァイさんとのデートに出かけることになった。


「どこでもいいぞ。」
「そ、れが、1番困ります…。何か食べたいもの、ないんですか?」
「………じゃあ、」


私の言葉にリヴァイさんは一瞬考えるような表情をしたけど、徐に口を開いた先は、


「いらっしゃいませー!何名様でしょうか?」


まさかの格安ファミリーレストランだった…。
エスコートのお姉さんに2人、と伝えて席に通してもらった後で、少し身を乗り出してリヴァイさんに尋ねた。


「珍しいです、ね。リヴァイさんがこういうところに来たい、って。」
「まぁ…、たまにはな。」


こういう格安のファミレスは煩くて嫌がる人だと思ってたけど、この人でもたまにはこういうところ来たくなる時があるのか、って。
なんだか不思議な気持ちになった…。


「…それしか食べないんですか?」
「昨日酒飲んでまだ残ってるのか、食欲がな…。」


いつものリヴァイさんならもう少し食べてるような?って思って聞いたけど、お酒飲んで胃もたれとか、確かにうちのパパも言ってる時あるし、「つきあいで」と言う飲み会は、やっぱり大変なんだろうと思った。
注文したものを食べるだけ食べて、じゃあ出よう、とした時、


「あ、あの!」


今日はそのために…!と思い、リヴァイさんに声をかけた。


「こ、ここは私が払いますっ!」
「…」
「ほ、ほら、いつも奢ってもらっているので、初めてお給料も出たし、」
「……」
「だからここはっ…!」


リヴァイさんは以前、私がお金を払おうとしたら「俺に恥をかかせる気か?」と言った人だ。
だからこういうこと、嫌いなのかもしれない…。
でもやっぱり、初めてのお給料の使い道は、日頃お世話になってるリヴァイさんに、って決めてたし、ここは譲ってもらわないと、って1人必死に説得を試みようと思ったら、


「あぁ…、じゃあ、まぁ…、そうしてもらおう。」


意外なほどあっさりと伝票を私に譲ってくれた…。
あまりにもあっさりしすぎていて(眉間のシワとかもなく)なんだか拍子抜けした。


「こちら、308円のお返しになります。」


先に出てる、と、お店の外に行ったリヴァイさんを横目に、会計を済ませお店を出た。


「お待たせしました。」
「…フィーナ。」


お店の外で待っているリヴァイさんの元に駆け寄ると、リヴァイさんが私の名前を呼んだ。


「はい?」
「…………ごちそうさま…でした。」


「ごちそうさま」の後の「でした」が、あまりにも取って付けたように感じるけど、リヴァイさんに(格安だったけど)ご飯を奢ってあげれたと言う、なんだか達成感に似たものを感じ、


「はい!」


自然と笑顔になった。




「(…………年下の、しかも高校生にメシ奢らせるとか考えられねぇが、モブリットの意見通り、やっすいメシでも奢らせたら気済んだみてぇだし、まぁ、いいか。………それにしても食い足りねぇな………)」




そしてその日は珍しく、夕方になろうとしたくらいに、喫茶店に入ろう、とリヴァイさんから言ってきた。


「あ、ここも私が、」
「ダメだ。『学生』に全部出させるわけいくか。黙って財布仕舞え。」
「でも、」
「俺に恥を掻かせるな。」


胃もたれが落ち着いた、と言ったリヴァイさんは、本当に珍しくケーキセットを頼んだ。
さっきのお昼ご飯、格安だったし、ここも、と思って口にしたら、今度は若干不機嫌になりつつ、拒否られてしまった…。
「恥を掻かせるな」なんて言われたら、財布を仕舞わざるを得ない…。
でもさっきのお昼が格安だった分(しかもリヴァイさんは少食だった分)結局私の方が多くお金を出してもらってしまったわけで…。


「な、なん、か、」
「あ?」
「結局、いつもと変わらない気が……。」
「………」


ごちそうさま、を、言った後で、リヴァイさんに思ってることを言ってみた。
今日はリヴァイさんを接待しよう!くらいなつもりで来ていたのに、気がついたら、いつものように、リヴァイさんから奢ってもらっていた…。


「じゃあ、まぁ…、また来月にでもメシ奢ってくれ。」
「らいげつ…」
「…なんだ?もうバイト辞める気だったのか?」
「ち、違い、ます、けど、」
「じゃあ来月な。…それよりお前、親に何か買って帰ったらどうだ?」
「え?親、です、か?」
「大事な娘が生まれて初めて『給料』なんてものをもらって、その金で買ったものならなんでも喜ぶもんじゃねぇか?」
「…そ、う、です、か、ね…?」
「と、思うがな。」
「で、でも、何を買ったらいいのか…。」
「あぁ、じゃあ見に行くか。」


ほら行くぞ、と、リヴァイさんは私の手を取って歩き始めた。
「リヴァイさん」に何かやろう、ってことに頭がいっぱいで、すっかりパパやママの存在を忘れていた…。
ご飯とは別の「何かプレゼントを」って思ってたけど、それはまた来月かな…。
来月、ご飯の時に一緒に出す、とか、いいかもしれない…!
なんて思いながらリヴァイさんに手を引かれていた私が、リヴァイさんがなぜか私のお給料が出た後の最初のデートの前日は飲み会で、デート当日はいつも胃もたれをして食べる量が少ないと言う事実に気がつくのは、もう数ヶ月先のことだった。

.

prev next


bkm

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -