2000年後もラブソングを


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Devote present to you


1


いつもデートの時は、


「ご、ごちそう、さまでした…!」
「あぁ。」


リヴァイさんが奢ってくれるという流れが定着してしまっている私たち。
でもそこに胡座をかいちゃいけないと思うわけで。
何か少しでもお返ししたいなぁ、と思う安易な私は、


「で、バイトする、と。」
「う、うん…!」


現実的にお返し出来るだけの経済力がないため、人生で初めてアルバイトと言うものをすることにした。


「なんで本屋にしたんだ?」
「…だって、」
「うん?」
「本屋さんなら、人と話さなくていいかな、って。」
「………」


どこでバイトをしようか、と思った時、パッと浮かんだのが本屋さんだった。
なんでなんて、とてもじゃないけどファミレスやファーストフード店のお姉さんたちのようにスマイルなんて初対面の人に提供出来る自信が微塵もなかったからだ。


「本屋でもレジカウンターと言うものがあって接客ってのが必要なの知ってるか?」
「し、知ってるよ!それくらい。」
「本屋の店員も人と交流しなきゃなんだからな?」
「わかってる、けど、」
「第一、あの本どこですかー?とか聞かれたりもするんだよ?どうするんだよ、そうなったら。」
「……」
「それとかオススメの本ありますかー?なんてのも有り得るよな。」
「…………」
「ほんとに本屋でいいのか?」
「…や、やめた方が、いい、の、かな…?」


そりゃあある程度は接客と言うものがあるだろうとは思うけど、ファミレスとかよりはグッと笑顔接客率は低いと思ったのに、リコちゃんの言葉に一気に不安になってきた…。


「まぁ…、とりあえずやってみて、無理そうなら辞めたらいいんじゃない?」
「で、でも、」
「高校生の初めてのバイトなんて、雇う側もそれくらいな気持ちで雇ってる部分もあると思うよ?」
「………」
「そういうこともしなきゃいけない時もある、って頭に入れて、出来るとこまでやってみたら?」
「う、うー、ん…。」
「したいんだろう?あのチビにプレゼント!」
「そ、れは、うん。」
「それじゃあ、がんばんな。」


リコちゃんはそう言って笑った。
バイトを決めた時は、こう…、やるぞ!って思っていたけど、なんだか一気に不安になってきた…。


「は?バイト?」


その日の夜、ごくごく普通にあまり実りのない話をLineで送ったら、文字を打つのがめんどくさい、と言う理由で電話がかかってきた。
そこで初めて、今度アルバイトを始めることにした、と告げたら、若干声を裏返した返事が返ってきた。


「なんで?」
「な、なんで、って………お金、が、ほしいから?」
「いくら?」
「え!?いくら!?い、いや、いくらとかじゃなく、」
「なんだ?」


なんとなくだけど。
すっごくなんとなくなんだけど。
リヴァイさんが不機嫌になってきた気がした……。


「ほ、ほら、スマホを使うのにも、お金かかるじゃ、ない、です、か。」
「…」
「お小遣いを親からもらってるけど、お洋服買ったりとかしてそんなに残らないから、でもさすがに別にスマホ代くれなんて、言えない、し。」
「……」
「だ、だからアルバイトしようかなぁ、って、」
「………」


…………ち、沈黙が痛い……。
重いとかじゃなくて、痛い………。


「どこで?」
「は、はい、あの、駅から少し行ったところにある、」


声のトーンも下がって来ている気がするのは気のせいじゃない気がする…。
現にさっきから、この人3文字しか喋ってないし…。


「本屋?」
「は、はい。本屋さんだったら、あまり人と話さなくていいかな、って、」
「馬鹿かお前。本屋も接客業だ。人と話すだろうが。」
「………ですよね……。」


普段リコちゃんと仲悪いくせに、こういう時は気があうんだから…。
なんて思いながら、1つ息を吐いた。


「まぁ、」
「はい?」
「せいぜい頑張れ。」


リヴァイさんは、しばらくの沈黙の後、そう言った。


「お、」
「あ?」
「怒、って、るんです、か?」
「……別に。」


………そのわりに、その言葉を言う前の沈黙はなんですか?
って、聞きたいけど、聞く勇気がない……。


「お、怒って、ます、よ、ね…?」
「………………」


別にって言葉すらなくなってしまった…!


「…………」
「…………」


あぁ、どうしようどうしよう、と痛い沈黙が広がっていたら、ママからお風呂だと声がかかった。
ちょっとどうかと思ったけど、でも助かった、って思ったのも事実なわけで…。
その日はそのまま断りを入れ、電話を切らせてもらった。



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bkm

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