2000年後もラブソングを


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Devote after school to you


3


「あ、の?」
「……帰るぞ。」


頭を抱え、しばらく動かずにいたリヴァイさんに声をかけると、明らかに眉間にシワを増やしながら言った。


「おい。」
「はい?」
「送る前にうちに寄るから着いて来い。」
「え?で、でも、時間、が、」
「すぐ済む。」


それだけ言うとリヴァイさんはスタスタと歩き始めた。
着いていこうと歩き出そうとした私を前に、ピタリ、と、歩くのを止め私を振り返った。


「何してる、早く来い。」


そう言って左手を差し出して来たリヴァイさん。


「は、はい…!」


慌ててその手を取って、歩き出した。
その後何を喋るわけでもなく、黙々と2人、リヴァイさんのマンションを目指した。


「ここにいろ。すぐ戻る。」


マンションの自室に行くと、玄関先で待ってろと言ってきたリヴァイさん。
………部屋に寄る、って、わけじゃないなら、最初から下で待ってたのにな…。
なんて思いながらリヴァイさんを待っていた。


「フィーナ。」
「はい?」


リヴァイさんが本人が「すぐ戻る」と言った通り、部屋の中に消えたと思ったのもほんの数秒で、リヴァイさんはすぐに私のいる玄関に戻ってきた。


「手出せ。」
「え?手?…はい?」
「………」


手を出せ、の意味がわからず両手を出すと、リヴァイさんは私の右手首を掴み、鍵を乗せ握り締めさせた。


「いいか、よく聞け。」
「は、い?」
「もう2度とその姿のお前と外で待ち合わせはしない。」
「え?」
「これから俺が早く仕事が終わる日があったらそれを使ってここで待ってろ。いいな?」


リヴァイさんはそう言って私の手首から手を離した。
握らされた拳を開くと、中から銀の鍵。
…………えぇー、っと。


「これ、」
「なんだ?」
「ここ、の、鍵?です、か…?」
「他にどこの鍵だ?」
「そう、ですよ、ね…。」


現在私の手の中にある鍵は、リヴァイさんちの鍵なわけで。


「い、」
「あ?」
「いい、ん、です、か?」


伺うようにリヴァイさんを見ると、現在玄関の下にいる私と、1段高い廊下にいるリヴァイさんはいつも以上に目線に差が出て、いつになく上目遣いに見上げることになった。


「駄目ならばやるわけないだろう。」
「…そう、です、が…。」


リヴァイさんは、何言ってんだお前、って言う顔をしながら体の前で腕を組み、私を見下ろしてきた。


「いいな?これからはその鍵を使ってここで待ってろ。」
「…」
「返事。」
「え?あ、は、ぁ…。」


どこか、納得、と言うのか…、イマイチすんなりと受け入れられない私は曖昧な返事をした。


「なんだ?納得いかなかそうな言い方だな。」
「そ、いう、わけ、じゃ、」
「何が不満だ?」


不満、と、言うか…。
手の中のこれは所謂「合鍵」と言うものなわけで、それはつまり、リヴァイさんから相応に信頼されている、ってことだと思う。
だからそれはそれで嬉しいんだけど、なんと言うか…、普通にこれを受け入れることも嬉しいけど、でも、私としてはやっぱり、滅多に外で待ち合わせないのに、あぁやってドキドキしながら待てる、って言うのも嬉しいわけで。
いや、結果的にリヴァイさんのお家で、リヴァイさんの帰りを待っている、なんて、すごく贅沢なことだと思うからそっちの方が比重が大きいような気がするけど、でもなんて言うか…、少し小走りで待ち合わせに来てくれたリヴァイさんを見たら、「この人が私の恋人なんです!!」ってみんなに言いたくなるような、そんな気がして、あれはあれで、リヴァイさんのお家で待っている、ってこととは別に、贅沢なような気が、したんだけど、な……。


「…………」
「…………」


そんなことを手の平の鍵を見つめ、ぐるぐると口にすることなく1人思っていたら、必然的に私を見下ろしているリヴァイさんとは長い長い沈黙に包まれてしまい…。
自分の考えを脳内でぐるぐるとかけ巡らせていた私は、どのくらいそうしていたのかはわからないけど、ハッと現状に気がつき、チラッとリヴァイさんを盗み見るように覗くと、


「…………」


相変わらず眉間にシワを寄せながらも、どこか困ったような顔をしているリヴァイさんが見えた。


「…………」


あぁ、どうしよう、何か言わなきゃ、って思うけど、何を言ったらいいのか…。
ありがとうございます?
嬉しいです?
え、どうしようどうしよう。


「い、」
「あ?」
「いただき、ます…?」


どうしてその言葉が出たのか、自分でもわからないけど、口から出たのはそんな一言だった。
その一言に、


「………あぁ。」


リヴァイさんは短く答えただけだった。


「そ、そういえば、」
「うん?」
「リヴァイさんのお家で待ってる、って、ご飯とか、どう、するん、ですか?」


リヴァイさんのお家の鍵を貰って、うちまで送ってもらう途中、リヴァイさんに聞いてみた。


「適当に食材買って来てくれりゃ、俺が作ってもいいしな。」


リヴァイさんは1人暮らしが長いから、私より料理が上手い(実に由々しき問題だ)
だからってそこに甘んじるのは、さすがにどうかと思うわけで。


「な、なら、一緒に作ります、か?」
「……あぁ、それでもいいな。」


放課後デートらしく、外で待ち合わせ出来ないのは、やっぱりちょっと残念だけど…。
でもリヴァイさんのお家で一緒にご飯作れるならいいかなぁ、とか。
そんなこと思いながら家路についた。

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bkm

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