2000年後もラブソングを


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Devote after school to you


2


「いらっしゃいませー!」


ツカツカと(わりと)早足で歩くリヴァイさんに遅れないようにと歩いたら、お店に着く頃には今度は私の息が少し、上がっていた。
…リヴァイさん…、お昼食べ損ねたって言ってたし、本当にお腹空いてたんだろうな…。
なんて、そんなこと思いながら息を整えた。


「スーツの人ばっかりです、ね。」
「あ?あぁ…、会社帰りの奴らだろ?昼は低価格のランチ、夜は酒も出すって社内でも話題になってたしな。」


制服で着たの、場違いなんじゃ……。
そう思うくらい、私たち以外のお客さんは、スーツ姿の、お兄さんお姉さんたちばかりだった…。


「リヴァイさんも、飲んでいいですよ?」
「俺は飲まん。」


そう言って温かいおしぼりで手を吹き始めたリヴァイさん。
…リヴァイさんは、お酒を飲まない。
いや、飲んでいないわけじゃないみたいだけど(ハンジさんや、リコちゃんのお兄さん談)私の前じゃ一切飲まない。
何か理由があるのかと思ってそれとなく聞いたら、そんな気分じゃないだけだ、と、バッサリと言われたけど、後日ハンジさんに会った時にそれとなく質問してみたら、


「あぁ、リヴァイ?アイツあれでも気遣ってるんだよー?ほら、フィーナ未成年だろう?自分だけ飲むわけいかない、ってあなたの前じゃ飲まないようにしてるんだよねぇ!紳士ぶっちゃって、ぷぷっ!笑っちゃうよね?あははっ!」
「…あんた、最後の一言余計じゃないですか?」


なんて、モブリットさんとの無意識漫才を繰り広げながら教えてくれた。
それを聞いた時、なんだかすごく申し訳ない気分になって、いつか、リヴァイさんとお酒飲めることがあるのかなぁ、とか。
そんなこと思った。


「お待たせしました。こちらが、」


今日も例外ではなく、ノーアルコールで、注文した料理が運ばれてきた。


「お、美味しいですね…!」
「あぁ、悪くないな。」


リヴァイさんの会社の人に人気のお店なだけあって、出されたお料理も本当に美味しかった。
たくさん食べて、じゃあお店出るか、ってなった時、お店を出る前にトイレに行ってきます、と、席を外した。




「失礼します。開いたお皿、お下げ致します。」
「……」
「ふふっ」
「?」
「あぁ、すみません。……仲の良い兄妹で羨ましいなぁ、って思って。」
「兄妹?」
「えぇ。あまり似てないですけど、高校生の妹さん、可愛らしいですね。」
「………」
「私も仕事帰りにご飯食べに連れて行ってくれるようなお兄ちゃん、欲しかったなぁ。」
「……………」
「では、失礼致します。」
「………誰が兄妹だ、クソが。」




「お待たせしました。」
「おい、さっさと帰るぞ。」
「え?あ、はい?」


トイレから戻ると、(なぜか)機嫌が悪いように感じるリヴァイさんが、スタスタと会計へと向かっていった。
………え?き、機嫌、悪い…?
え?なんでなんでなんで?


「おい、早くしろ。」
「は、はい!」


基本、無表情ベースで眉間にシワがオプションなリヴァイさんは、今もそのオプションを存分に発揮していた…。
…え、ほんとになんでいきなり…?
頭の中にクエスチョンマークが飛び交っている中、リヴァイさんが会計を済ませた(以前せめて自分の分だけでも、と払おうとしたら、俺に恥をかかせるな、と一刀両断されて以来、デートの時は暗黙の了解で奢ってもらうことになってしまっていた)


「あ、ご、ごちそう、さま、でし、た。」
「………行くぞ。」


財布を仕舞ったリヴァイさんは、徐に私の手を掴み、お店ののれんを潜った。
…………珍しい。
本当に珍しい。
リヴァイさんが、「お店の中から」手を繋いで歩く、なんて。
ほんとに……私がトイレで席を立った間に、何かあったんだろうか………。
グイグイと、私の手を引っ張り少し前を歩くリヴァイさんの背中を、なんだか不思議な気分で見ていた。
それからしばらく、リヴァイさんに手を引かれ歩いていると、ピタリ、と、リヴァイさんが歩くのを止めた。


「…悪い、上司から電話だ。」
「あ、どうぞ、出てください。」


リヴァイさんは私に断りを入れた後で、繋がれていた手を離し、電話に出た。
そのままリヴァイさんは、私から少し離れて、電話の相手と話していた。
……今日、お昼も食べれなかったみたいだし…、仕事終わったのに、こんな時間に上司から電話とか…、本当に大変だなぁ…。


「あの、すみません。」
「はい?」


なんて思っていたら、突然声をかけられた。


「米花駅の近くにあるポアロってお店に行きたいんだけど、」
「は、あ…?」
「ここら辺詳しくなくって、どっち行ったらいいかわからなくて、」
「あぁ。」
「米花駅って、どっちかわかる?」
「は、はい。この道を真っ直ぐ行って、」


私もここら辺、詳しくないんだけど、って、少しドキドキしたけど、その駅ならわかる、と思って、どこかホッとして説明した。


「うーん…、イマイチわかんねぇな…。」
「え?す、すみません、」
「もし良かったら、案内してくれない?」
「え?で、でも、」


ドンッ!!!


「えっ!!?」
「いってぇっ!!?」


迷子のお兄さん(と言ってもたぶん同い年くらい)に道案内を頼まれた直後、お兄さんの背中に勢いよく誰かの足が飛んできた。
…………「誰か」なんて、そんなの、


「聞こえなかったか?米花駅行きてぇならこの道真っ直ぐ行った先でそこらへんにいる暇人に聞け。」


1人しか、いない……。


「このチビ、何しやがる!」
「なんだとこのガキ。一発蹴り入れた『だけ』で解放してやろうって言う親切心がわかんねぇのかクズが。」
「ち、ちょっ、リヴァイさん、落ち着いてください!!」


リヴァイさんが私の連れだとわかったのか、迷子のお兄さんは(かなり)暴言を吐き捨てて去っていった。
………よ、良かった、前にオルオとぺトラを助けた時みたいな大惨事にあの人がならなくて…!!


「いたっ!?」


なんてホッとしたのも束の間、リヴァイさんにデコピンされた…。


「お前は何やってんだ?」
「な、何、って、」
「隙だらけだからあぁいうクソにナンパされんじゃねぇか!」
「え?ナンパ?違いますよ!あの人、道を聞いてきただけです。」
「…あ"?」
「ナンパ、って言うのは、ご飯食べに行こう、とか、カラオケ行こう、とか、そういうののことですよね?あの人は、駅まで連れてってくれ、って言ってきただけですよ?迷子になって困ってた人ですって。」
「…………」
「変な誤解して、あの人蹴ちゃって…。だいたい私、ナンパなんてされたことないですから。」
「………………」


自分で言ってて虚しくなるような私の言葉を聞いたリヴァイさんは、右手で額を抑え、大きなため息を吐いた。

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bkm

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