2000年後もラブソングを


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Devote music to you


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証言者1 中学からの親友、リコちゃんのお兄さん
「リヴァイはほんとに歌上手いよ?元々クラスの女の子もリヴァイに歌ってほしくて文化祭でやれやれ騒いでたくらいだし。まぁ…、アイツはそういうの嫌うからあっさり俺に押しつけたんだけどね…。でも聞いて損はないと思うけどね。普通に上手いから。」


証言者2 会社の同僚、ハンジさん
「あー、リヴァイの歌?そうそう、あーんな顔してすっごい上手いんだよ!前に忘年会だか新年会の余興で歌わされたんだけどさ。めちゃくちゃ上手いものだからもう、会社の女の子たちがキャーキャー騒いでそっからリヴァイ人気に火がついた、って言うか、あ!別にそんなに落ち込まないで!リヴァイはそういう子たちぜんっぜん!相手にしてないから!」


証言者3 会社の部下、モブリットさん
「リヴァイさん?あぁ、すっげぇ歌上手いよ。て、言っても俺会社の飲み会の余興の1回しか聞いたことないけど。なんて言うか…、意外と言うか…、うん、とにかく上手かった。」


リヴァイさんとの共通の知り合い、と言うのは、数えるほどしかいないけど…、聞けば聞くほど、リヴァイさんの歌声を、聞いてみたくなった。
けど…。


「ドライブ中って、自然と口ずさむみたいですよね。うちのパパもママもそうなんですが…。リヴァイさんも気軽に歌って良いですよ。」
「俺は歌わん。」
「…」
「お前は?」
「え?」
「歌わないのか?」
「え!?」
「…あぁ、今度お前が歌いそうな奴、i-podに落としとくか。」
「えっ!?い、いいです!私は別に、」
「お前は歌が上手い。歌えばいいだろう。」


敵はなかなか手強いようだ…。
幸いなことに私は音痴ではない。と、思う。思いたい。
でもだからって、みんなに「歌がすっごい上手い」なんて言われるような人間じゃないわけで…。
みんなから「すっごい上手い」って言われてる人に言われるのは、なんか、ちょっと…。
どうすれば、歌ってもらえるのか、なぁ……。


「まぁ…、普通にカラオケとか?」
「…でも、」
「うん?」
「行ってくれる気がしない…。」
「あぁ…。」


そんなすっごい難しい歌を歌ってほしい、とかじゃなくて、ほんの一小節でもいいから、歌ってるとこ、聞きたいだけなんだけど、なぁ…。
リコちゃんに相談してみるものの、解決策なんて出るわけもなく…。
ただただ、日だけが流れていた。


「…んっリ、ヴァイっ、さ、…アッ、」
「…ハァ……フィーナ…」


社会人のリヴァイさんと会える時間は限られている。
でも、デートのたびにこういうこと、してるわけじゃない。
もともと、あまり会えない上、デートのたびにしてるわけじゃないから、気がつくと1ヶ月、2ヶ月とても健全に過ごしていることがある。
だからなのか、久しぶりにこういうことすると、なんと言うか…………激しい、気が、する……。
どのくらい、って、情事の後、まどろんでしまいそのままうっかり寝てしまうくらいは、それ以前とは、違う。気が、する……。
その日も、気だるい体と、リヴァイさんの温かいぬくもりに逆らうことなく、微かに聞こえるスピーカーからの曲に耳を傾け、目を閉じた。



−〜♪〜−


「(………あぁ、なんでこんな曲流れてくるんだと思ったら、コイツが好きそうだから落としてたんだったな…)」
「…」
「(そういや最近コイツ、やたらと俺に歌わせようとしてる気がする…)」
「……」
「(またハンジのクソ野郎がくだらねぇこと吹き込んだんじゃねぇだろうな…)」
「………」
「…自分で歌うより、お前の歌を聞いてる方が好きなんだがな…。」
「…………」
「…〜♪〜」




「…ん…」
「…………」


あぁ、私寝てしまったんだ、と、未だボーっとする体を起こして、隣で横になっているリヴァイさんを見た。


「今、」
「うん?」
「…歌、って、ました?」
「俺がか?まさか。」


リヴァイさんは無表情にそう言った。
……そう、だよ、なぁ……。
と、思ったとき、スピーカーから聞こえる曲が鮮明に耳に入ってきた。


「…珍しい、です、ね。」
「あ?」
「リヴァイ、さん、が、こういう曲、聞くの…。」
「あぁ…。これは俺じゃなくて、お前が好きそうだと思ってな。」


確かにスピーカーに乗って流れてくる曲は、私好みな曲だった。
……………なんか、ずるいなぁ…。
私はどうやったらリヴァイさんに歌声聞けるだろうか、って、必死になってるのに、リヴァイさんはそういうところにいない、って言うか…。
こういうことだけじゃなく、普段からだけど…、私とは一段違うところにいて…大人、って、言う、か…。
歳も離れてるんだから、当たり前なんだけど、さ…。
それでもちょっと、悔しいような、そんな気分だ。


「この前、」
「うん?」
「リコちゃんのお兄さんに高校の卒業アルバム見せてもらったんです。」
「…………」
「リヴァイさんがバンドしてたなんて、知らなかった。」
「知らなくて良い。あれは俺の人生の汚点だ。女生徒の勢いに押された男の担任に内申点チラつかされたファーランが断らなかったばっかりに無理矢理やらされる羽目になった記憶から消したい産物だ。お前もあの写真は忘れろ。」
「でも、」
「あ?」
「いつか、聞かせてくださいね。」
「………機会があったらな。」


そう言って少し、眉間に皺を寄せ目を瞑ったリヴァイさんに、あぁ、歌、と、言わずにギターを聞かせてもらう機会は、きっとこないんだろうなぁ、なんて、ちょっと思った。




「(くだらねぇこと吹き込んだのは、ハンジじゃなくファーランだったか…。あの野郎ただじゃおかねぇ…)」

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bkm

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