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リヴァイさんとお兄さんに出すものを用意しながら、ひたすらに、ミスらないように、ドジらないように、とまるで念仏のように唱えていた。
「お待たせしました。」
オーダーを受けた物を若干緊張で手を汗ばませながら、リヴァイさんたちがいるテーブルへと運んだ。
「そういやリコはどうしてるの?」
「リコちゃんは学級委員で今までいろいろ頑張ってくれてたんで、今日は1日フリーなんです。だからオープンしたらすぐどこかに行っちゃって、」
「へー。」
「ただ問題があったら来るからすぐ呼べとは言われてるんですが、」
「ははっ、アイツらしいね。」
「はい、すごくリコちゃんだなぁ、って。」
「………」
お兄さんとほのぼのと話している中でも、リヴァイさんは黙々とコーヒーを口にし一切会話に入って来なかった…。
………やっぱり気のせいじゃなく、リヴァイさん機嫌悪い…?
どうしようかと思って、お兄さんを見たら、
「その衣装、フィーナちゃんの手作り?」
ニコニコと爽やかな笑顔で聞いてきた。
「あ、いえ、安く売ってるところがあって、レースとかは後から衣装担当の子たちがつけてくれたんですが、」
「へー!その衣装、終わったらどうするの?」
「え?終わったら、です、か?」
「そ。記念にもらうの?」
「い、や…、どう、で、しょう、ね…?」
お兄さんに言われて初めて、そう言えばこの文化祭が終わったら、この衣装どうなるんだろう…って、思った。
「もらっちゃえば?」
「え?」
「で、それ着てリヴァイとアリスごっこしてみたり?お前もどうせだからマッドハッターくらいしてみたらどうだ?」
そう言うだけ言って、お兄さんは吹き出した。
「あぁでもお前はマッドハッターって感じじゃねぇな。」
「イカレてるのはハンジだろうが。」
「あー、確かに確かに。」
くくっ、と笑うお兄さんに、リヴァイさんが呆れながら答えていた。
…さすが中学の時から10年以上のつきあいなだけある。
余計機嫌を損ねそうな話題なのに、リヴァイさんが普通に話してる…。
とりあえず、無言タイムから脱出したらしいリヴァイさんに、ホッと安堵のため息が漏れた。
ホッとしたと同時に、別のお客様が入ってきたため、ウェイトレスとしての仕事に専念するため、リヴァイさんたちにペコリ、と1度頭を下げて、仕事に戻った。
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bkm