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「よーし、お前ら準備出来たか?今日1日しっかり売り上げるんだぞ!」
そしてあっ!と言う間に文化祭当日。
担任のハンネス先生の号令の元、私のクラスの喫茶店がオープンした。
コンセプトは「アリスのお茶会」だそうで、私たちの衣装はもちろんのこと、ただの教室も、今日は「店内」として、どことなくそんな感じに飾られていた(と言っても高校生の手作りのお店だからよく見ると雑なのかもしれないけど、そこは味わい深いと言ってもらいたい)
お客様に提供するものはコーヒーか紅茶、食べ物はクッキーを用意している。
「え?リコちゃん行っちゃうの?」
「だって私店番じゃないし。」
「…そ、だけど、」
「終わる頃また来るから、頑張って!」
クラス委員として今まで頑張ってきたリコちゃんは、今日は特にすることはないようで緊急事態になったら呼んでと言って早々に去っていってしまった…。
…………ウェイトレスなんて、すでに緊急事態なんだけど、なんて言ったらすっごく呆れられるのが目に見えてる。
早く店番の時間、終わらないかなぁ、って、始まった直後から思っていた。
「いらっしゃいませー」
事前にチケットを捌いていたおかげで、オープン後からちらほらお客様がやってきた。
1人目こそ戸惑ったものの、ワーッとやってこなかった分、なんとか対応出来始めたと思った時だった。
「フィーナ。」
「え?リヴァイさん!お兄さんも!」
後ろから私を呼ぶ声が聞こえて振り返ると、リヴァイさんとお兄さんが立っていた。
「やぁ、アリスの衣装なんだ?似合うね。」
「あ、りがとうございます。」
「………」
お兄さんが爽やかな笑顔で言ってくれたのとは対照的に、リヴァイさんは(いつものことだけど)何を言うこともなく、教室に用意された席に座った。
…リヴァイさん、本当に私が店番の時に来たんだ…。
しかもお兄さん連れて…。
ミスらないように気をつけなきゃ、なんてぐるぐると思いながら接客に向かった。
「え、えぇ、っと、メニュー、です、」
「…………コーヒー。お前は?」
「あ、じゃあ俺も。」
「コーヒー2つ、と、クッキーは味が3種類あって、」
「任せる。」
「え?」
「適当に持って来い。」
そう言ってメニューを私に突き返すように差し出してきたリヴァイさん。
…それは誰がどう好意的に見ても、あまり機嫌が良いとは言えない状態なわけで…。
「…」
チラッと、リヴァイさんと一緒に来たお兄さんの顔を見たら、困ったように笑っていた。
「あ!俺はセサミクッキーね。」
「は、はい。…じ、じゃあ、リヴァイさんは、紅茶クッキー、で、いいです、か?」
「あぁ。」
やっぱり機嫌悪いなぁ…、なんて、思いながら、オーダー表を手に準備に取り掛かった。
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bkm