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「…ん…」
どのくらいそうしていたのか、腕の中のフィーナが身動ぎしたことで目が覚めた。
…あぁ、あのまま寝たのか俺も…。
何がうつさないように努めるだ。
むしろこれでうつらない方がおかしいだろ…。
「…」
だがまぁ…、しないよりはした方がいい。
そう思い、今更感は否めないが、フィーナに背を向け再び眠りにつこうとした。
……時だった。
「おい。」
「…」
フィーナが俺の体に腕を回してきた。
「…おいフィーナ、」
「リヴァイさんのからだ、」
「あ?」
「あったかいですね…」
どこか寝呆けてるような声を出しながら、俺の背中にくっついて来るフィーナ。
「『あったかい』じゃねぇ。『熱い』んだよ。」
フィーナが来る前に計った体温は39度2分。
昼間は39度6分あり、それに比べりゃ下がったとは言え、まだまだおかしいくらい熱を持っている。
「でも、」
「あ゛?」
「部屋が少し、冷えてきたから気持ちいいです。」
そう言い終わると、背中にピタリと顔をつけてきたらしいフィーナ。
「…うつっても知らねぇぞ。」
「いいですよ。」
「あ?」
「リヴァイさんの風邪なら、うつっても、いいですよ。」
笑ったのか、背中に振動が伝わった。
「お前、」
「はい?」
「俺が病人だってわかってるのか?」
「はい…?」
俺はこの時初めて、男と言う生き物は例え体温が40度だろうが下半身だけは別物なんだと言うのことを知った…。
「…っ、」
「あ、気がつきました?」
どのくらい寝ていたのか、いつもの通り部屋に空の明るさが反映され始めた頃目を覚ました俺の顔を、フィーナが覗き込んできた。
「熱はー…まだ熱いけど、少し顔色良くなりましたね。」
俺の額に手を当てた後で、念のため測ってくれと、体温計を差し出してきた。
ピピッ
「何度ですか?」
「…」
「えぇー、っと…38度2分!良かった、少し下がってる!」
計測終了を知らせた体温計を無言で差し出した俺の手から奪い取り、数字を確認して明らかに嬉しそうな声をあげたフィーナ。
「あの、リヴァイさん、」
「あ?」
「私、学校行かなきゃで、」
フィーナは嬉しそうに声をあげた直後、実に申し訳なさそうに口を開いた。
「ご飯、作っておきましたし、学校終わったらすぐ来ますけど、何かあったらすぐ呼んでくださいね?」
そう言いながらテーブルの上にあったスマホここに置いておくので、とベッド脇のサイドボードに俺のスマホを置いた。
「…何時に帰ってくる?」
「え?」
じゃあ行ってきます、と玄関に向かおうとするフィーナに思わず漏れた
言葉は本人の耳にしっかり届いたらしい。
俺の言葉を聞いて驚いた顔をしながらフィーナが振り返った。
「16時には戻ってくるので、」
1度俺に背を向け玄関に向かっていた体を再びベッドの上で体を起こしていた俺のところまで引き戻り、
「良い子にしててくださいね。」
俺の頭を撫でながらそう言った。
「さっさと行け。」
「はい、行ってきます。」
「……………チッ!」
クスクスと笑いながら出て行くフィーナの背に盛大にため息を吐いた。
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bkm