■3
ピンポーン
フィーナの母親のLineメッセージから10分も経たないうちにチャイムが鳴り響いた。
…お前、そこは合鍵使って入って来いよ…。
なんて思いつつも、アイツの性格じゃ俺が部屋にいるの知ってていきなり入ってくるわけねぇか、と思いため息混じりに立ち上がった。
…あー、まだフラフラするな…。
ガチャ
「大丈夫ですか!?」
「…」
その袋は何事だ?と言うくらいの量の袋を持ち、ドアが開いた瞬間に俺に向かって聞いてきたフィーナ。
「リヴァイさん?」
「あぁ…まぁ、よくはねぇな…。」
「そっ、そうですよね!とりあえず寝てなきゃ!!」
大変大変、と騒ぎ出すフィーナを室内に入るように促し鍵をかけた。
「ところでお前、なんだその荷物…。」
よく見りゃ両手にパンパンに物が詰まったスーパーの袋をぶら下げていたフィーナに堪らず声をかけた。
「熱がすごく出てるから水分は摂らないとって思ってポカリ2本と、食べる物って言っていたから食材をいろいろ。」
ポカリ2本(しかも2リットル2本)とお前俺が病人だってほんとにわかってるのか?って量の食材を買い込んできたフィーナ。
…予想以上の量だ。
「とりあえず、ペットボトルはこっちに、」
「あ!私がやるんで寝てくださいっ!!」
「いやこれくらい、」
「ダメですっ!寝てくださいっ!!」
珍しく強い口調で言うフィーナに、ベッドまで背中を押された。
「いいですか?ちゃんと寝ててくださいね?」
ベッドの縁まで辿り着いても押す力を弱めることのないフィーナに、片膝がベッドに乗った。
その直後、人差し指を立てながら寝るように言うと、俺に背を向け買い出して来たものを片づけに行った。
「…」
こういう状態の時のアイツに何を言っても聞かないのは充分理解してる。
だからきっと今何を言っても無駄だろうし、むしろ今言うことを聞いておかなければ後あと面倒なことになりかねない。
「おい、」
「寝ててくださいっ!」
「…そこの引き出しにマスク入ってる。お前も使え。」
「わかりましたから、寝ててください!」
「…はいはい。」
そして予想通り、自分を曲げないフィーナの声を背に、俺自身もマスクをつけながらベッドに潜り込んだ。
「…っ…」
それからどのくらい経ったのか、フッと目が覚めた。
軽く体を起こすと、パサッと額に置かれていたらしい濡れたタオルが体の上に落ちた。
「…」
そしてベッドの縁には、フローリングに座り込み、両腕と顔をベッドに乗せて寝息をたてているフィーナが目に入ってきた。
「馬鹿が。そんな格好で寝てたら風邪引くだろうが。」
「…」
インフルエンザの俺に言われたかねぇだろうが、どうみてもこれは体に良い寝方ではない。
「ったく…」
この時の俺に、布団を出してやってソファで寝かせると言う選択肢はなく、そのままフィーナを抱き上げベッドの中に引き入れた。
「気持ち良さそうに寝やがって…。」
「…」
俺の呟きに答えることはなく、規則正しい寝息を立てるフィーナを抱き寄せ目を閉じた。
.
bkm