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「フィーナー!こっちこっち!」
リヴァイさんと会わなくなって1ヶ月、Lineのやり取りすらなくなって、20日は過ぎた頃、リコちゃんとショッピングデートをすることにした。
「これすごい可愛くない!?」
「うん、リコちゃんに似合うと思う!」
本日のお目当てバーゲン。
リコちゃんが可愛くない?って聞いてくるものは、本当に可愛いものばかりで、イアンさんとのデートで着るのかなぁ、とか。
そんなこと思いながら、試着するリコちゃんを見ていた。
「フィーナは?そのスカート買うの?」
「うーん、どうしよう、かなぁ?」
買い物でも私の決断力のなさは発揮されるようで…。
可愛い!…とは、思っても、着ていくところないからな、とか。
チラリ、と、リヴァイさんの顔が脳裏に掠めながらも、その服は諦めることにした。
「連絡、してないの?」
大漁、大漁、とでも言わんばかりの袋を持つリコちゃんと、結局アウター1着と小さめ鞄を1つ買っただけの私は、カラオケしようって話になってそのままお店に雪崩れ込むものの、結局歌わず人生相談が始まっていた…。
「だ、って…、」
「何もしかしてこの前私が言ったこと気にしてるとか?」
「…」
「は?図星?…お前ねぇ、あの時も言ったけど別にお前のメッセージが、」
「わかってるよ!」
リコちゃんが言いかけたことに、思わず声を大きくしていた。
「わかってる、けど…、絶対ないとは、言い切れない、じゃん…?」
私のその言葉に、リコちゃんは何も言わず、ただ1つ大きなため息を吐いた。
「アイツからも連絡来ないの?」
「ん…。」
「一言も?」
「うん…。」
「…そっか。」
ズーン、とますます心が沈んできた時、
「!?」
急に室内にスピーカーから大音量が響き渡った。
「ま、今日は私とのデートだし?せっかくだからフィーナの家の門限ぎりぎりまで歌ってこーよ!」
そう言ってマイクを持ってリコちゃんは立ち上がった。
「ほら!次フィーナだろ!早く曲入れる!!」
リコちゃんの歌をぼーっと聞いていた私に、1曲歌い終わったリコちゃんが検索機を渡してきた。
うーん…、とか最初は思ってたけど、
「〜♪〜」
「上手い上手い!」
このモヤモヤする思いを歌って発散だ!って思った私は、リコちゃんに続き大熱唱を繰り広げた。
「けほっ…ちょっと、歌い過ぎたね…。」
「あー…、だね。」
現在午後9時ちょっと過ぎ。
かなりがっつり歌いまくった私たちは、やや声を嗄らしながら家路へと向かっていた。
「スッキリした?」
「…うん。ありがと。」
ただ歌っていただけだけど、思いのほかスッキリした私は、喉を抑えながらも笑顔でリコちゃんにお礼を言った。
「…アイツ、長くても2ヶ月って言ってたんだろ?」
「え?」
「後1ヶ月、がんばれそ?」
そう言いながら、私を伺うように見てきたリコちゃんに、胸があったかくなった。
「ふふっ!」
「何?」
「リコちゃん大好き!」
「…どーも。」
私の言葉に、リコちゃんは少し照れたような顔をした。
「あ、れ…?」
リコちゃんと2人、くだらない話をしながら繁華街を少しだけ足早に歩いていた時、リコちゃんが立ち止まった。
「うん?どうし」
「あ、バカ!見るな!!」
立ち止まったリコちゃんの視線を辿ったら、いわゆる飲み屋街と呼ばれる通り辺りを歩いているリヴァイさんがいた。
…しかもやたら親しそうにリヴァイさんと腕を組んで歩く、髪の長い女の人と一緒に歩いていた…。
「………」
え、えぇー、っと…?
今の状況が何で、どうなっている、ん、だっけ…?
「君たち2人ー?良かったらこれからメシでも一緒にどう?」
「と、とりあえず、帰ろ?」
「ねぇねぇ、帰るだけならさー、」
「煩いな!馬鹿は相手にしたくもないんだよっ!」
「…あ?なんだこの女、」
「ほら、行くよ!」
リコちゃんに手首を思いっきり引っ張られたことで、その場からようやく動き出すことが出来た。
…さっきのあれ。
あれはリヴァイさんに違いない。
遠目でも、リヴァイさんを間違えるわけないもん。
でも、じゃあ、なんで、
「あの女の人、誰ぇ…?」
「……」
リヴァイさんは、私以外の女の人と、腕を組んで歩いていたんだろう。
なんで、その手を振りほどくようなことしなかったんだろう。
私の言葉に、リコちゃんは答えることなく、黙々と腕を引っ張り歩いていた。
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bkm