2000年後もラブソングを


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Devote early summer to you+++


4


いつの間にか出来ていた彼氏という存在に、なんだかふわふわとしたような気持ちで家まで送ってもらった(しかも手を繋いで歩いた!)


「あ、じ、じゃあ、」
「あぁ。」
「また、連絡、し、ます…?」


この日起こった出来事が自分の中で処理出来なさすぎて、本当にふわふわしていたと思う。


「先生、本当にありがとうございました。」


そんな中でも、最後にもう1度、合格出来たことへのお礼を述べたら、


「違う。」


リヴァイさんは短く答えた。


「え?違う?」
「もう『先生』じゃない。」
「…」
「リヴァイだ。言ってみろ。」


キスした、と言う事実はあってもあまりにも突然で(しかもいきなりディープなものだったし)そんな事態になるなんて全く想像すら出来ていなかった私には、さっきのあれはどこか現実に起こった出来事とは思えなかったのかもしれない。


「リ、ヴァイ、さん…?」


だからなのか、キスされた後よりも「先生」から「リヴァイさん」と呼び方が変わった瞬間の方が、ずっと恥ずかしさが押し寄せ、一気に体温があがったのがわかった。


「…」


私のその言葉に満足したのか、リヴァイさんは口の端を軽くあげながら、くしゃり、と、私の頭を一撫でした。


「リコちゃん、」
「んー?」
「…実はね、」


自分でもいつの間にかそうなっていたことに対して整理をつけて、リコちゃんに話したのは高校に入学して1週間が過ぎた頃だった。
…そのことをリコちゃんがお兄さんに話したため、



「お前っ!結局つきあいだしたのかよっ!?いつからだ!!」
「…うるせぇなぁ。俺はお前と違って会社の研修で忙しいんだ。くだらねぇことで電話してくんじゃねぇよ。」
「あ、おいっ!!」




お兄さんとリヴァイさんの間で、そんなやり取りがあったらしい。
それが、私とリヴァイさんのつきあいはじめた時の話。



「リヴァイさん、は、」
「あ?」
「記念日、覚えてます?」


リヴァイさんちでまったりと過ごす昼下がり。
昨日見た、リコちゃんのプリクラを思い出していた。


「記念日?何の?」
「私たちの、ですよ。覚えてます?」
「…………4月29日か?」


しばらく悩む素振りを見せた後でリヴァイさんは答えた。
でも…、


「そ!の、日じゃなくて、」


リヴァイさんが告げた日と言うのは記念日と言えば記念日だけど、


「なんだ、顔赤くして思い出したのか?いやらしい奴だな。」
「違いますっ!」


つきあった日じゃなくて、初めて、その…、仲良くした日、とでも言うのか、その日のことだった。
…高校が始まって1カ月。
そしてリヴァイさんも仕事が始まり、初めてまとまったお休みの初日だったわけだけど、一応進学校のうちはゴールデンウイーク中にもがっつり宿題が出て、その宿題を教えてもらおうとリヴァイさんの家に、今思えば中学卒業後初めてお邪魔した時に、…それまで以上に仲良くなった。
だからまぁ、記念日と言えば記念日ではあるのかもしれないけど、そんな記念日をすぐあげられるのはちょっと…(ゴールデンウイークの初日で、毎年お休みな日だから嫌でも頭に残るのはわからなくもないんだけど…)


「リコちゃんみたいに、半年記念、とかそういうのいいなぁ、って思っただけで、」


リヴァイさんは男の人だから、記念日とか気にしないんだろうなぁ、なんて思いながら、独り言のように呟いた。


「あぁ、なら今日を記念日にすりゃいいだろ。」
「え?今日?…なん、の?」
「フィーナがリコに唆されて記念日がほしくてゴネた記念だ。」


…そんな記念日、全く嬉しくないんですが…。


「それか、フィーナが初めてヤった日を思い出して赤面した記念だな。」
「な、んで、そういうこと言うんですか!」


ムッとして、リヴァイさんのお腹辺りを叩いた。


「なんだ、気に入らないか?なんならフィーナが俺にからかわれてムクれた記念でもいいぞ。」
「…もう知りませんっ!」
「ははっ!」


すっかり機嫌を斜めにした私に、リヴァイさんはおかしそうに(珍しく)声をあげて笑った。


「フィーナ。」
「…」
「そう怒るな。」


リヴァイさんはそう言いながら、私を抱き寄せた。


「だいたいお前これから何年、俺といるつもりだ?」
「え?」


私の髪を梳くように触れるリヴァイさんの指はとても優しい。


「今後10年、20年一緒にいて、嫌でも『記念日』なんてのは増えてくだろうが。それをいちいちあーだこーだと言って、お前は365日記念日にする気か?」


そう言うリヴァイさんの瞳も、いつも以上に優しかった。


「べ、つに、そ、いうわけじゃ、」
「そういうのは最低限のものだけ覚えてりゃいい。」


だからその日が貴重になる、とリヴァイさんは言う。


「最低限、て言うと、誕生日、だけ、ですか?」


私の言葉に、


「それだけで不満なら初めてヤった記念日は祝ってやってもいいぞ。」


ニヤっと笑いながらリヴァイさんが言った。


「…そ、いう、記念日はいりません!」
「そうか?毎年休みだし、飽きるほどヤりまくる日でいいじゃねぇか。」


リヴァイさんはそう言いながら、私をソファに押し倒して来た。


「リ、ヴァイ、さんは、」
「うん?」
「最近、言うことがオジサンみたい…。」
「オジ、」


私のこの一言は、


「…」


思った以上にリヴァイさんに刺さったようで、この日はわりとどんより空気で過ごすことになってしまった…。
…結局、私たちのおつきあい記念日はうやむやのまま終わってしまったけど、リヴァイさんの言う通り、365日記念日にするわけでもないし、最低限な記念日をきちんと大事に祝っていたらいいのかな?って。
どんよりムードのリヴァイさんを苦笑いで見つめながらそう思った。



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bkm

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