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「……え?ち、ちょっ、」
どのくらいそうしていたのか、しばらくリヴァイさんに抱きしめられていたら、不意に抱き上げられ、ベッドに押し倒された。
「なんだ?」
「え!?な、なんだ、って、」
そんな風に聞かれても、もう1回するんですか?なんて、言えるわけ、ないじゃ、ない、です、か…。
「俺に見せるために買ったんだろう?」
「え?」
「ならばじっくり見てやろうと思ってな。」
「え!?い、いいですっ!ほんとにっ!!大したものじゃないんでっ!!」
「そんなことないだろう。お前が泣いただけの価値があるものだと思うが?」
「やっ!ほんとに!!じっくり見るようなものじゃ、っ、」
「フィーナ…」
本当にじっくり見るようなものじゃ、ないと思う(だって下着がすごくても、中身は私だし)
でもリヴァイさんは、いつも以上に時間をかけて愛撫をしてくれた。
…………しかも、いつもは汚れると嫌、って理由で服も下着も全部脱がせるのに、今回は下着を少しズラしただけだった………。
「リヴァイ、さん、は、」
「あ?」
所謂、ピロートークと言うものをしている時、良い機会だし、と、意を決して聞いてみることにした。
「ど、いう、下着が、好きです、か?」
「は?」
仰向けになり、私に腕枕をしている状態だったリヴァイさんが、少し声を裏返して私を見遣った。
「別に、」
「はい?」
「着てりゃなんでもいい。」
「………………」
あぁ………。
この人って、こういう人だった気がする………。
「逆に俺が下着1枚で興奮したり萎えたりするような男だと思われてた方が侵害だ。」
「…そ、いう、わけじゃ、」
そういうわけじゃ、ないじゃないですか………。
こう、少しでも、好みと言うか、体型は変えられないなら、努力で変えられるところは、変えたい、と言うか…。
そういうの、この人にはわからないのかなぁ……。
「だがまぁ…、」
「はい?」
「もう1つの方よりは、こっちの方が好みだ。」
こっち、と、言いながらブラの肩紐をパチン、と指で引っ張るように触ったリヴァイさん。
「これ、リコちゃんと買いに行ったんですが、」
「…」
「こっちは、私もデザインが可愛いな、って思ったし、お店の人のオススメだったんです。それでもう1つの方は、リコちゃんのオススメだったんです。」
「あぁ、『だから』俺の趣味には合わんわけだ。」
「……………」
「あのクソメガネの言うことは早々に信用するな。」
「…リヴァイさんて、」
「なんだ?」
「リコちゃんと仲良くしてくれる気、ないんですか?」
「あ?なんで?」
リヴァイさんは、本当に、なんで?と言う顔で私に聞いてきた。
「……別になんでもないです……。」
「…………」
リコちゃんと仲良くして、なんて、確かに「なんで?」な部類なんだろうけど、さ…。
それでもやっぱり、もっとこう、親友と恋人には、仲良くしてほしいなぁ、と思うわけ…。
でもそれは過剰な期待、になってしまいそうで…。
「まぁ…、」
「…」
「『仲良く』は出来んが努力はする。」
くるっ、と、背を向けた私を、後ろから抱きしめてくれたリヴァイさん。
それに本音は、無理だろうなぁと思いつつも(だってリヴァイさんだけじゃなくリコちゃんもリヴァイさんのこと嫌ってるから)ちょっとだけ、嬉しくなった。
「そういやお前、」
ベッドから出て、着替えている時、リヴァイさんが声をかけてきた。
「俺にどういう下着が好きかと聞いたが、」
「はい。」
「仮に俺が『紐やTバックが良い』と言ったら、それにする気だったのか?」
パチン、と、スカートのホックを嵌めながら、リヴァイさんを見ると、リヴァイさんも、どうするんだ?的に私を見ていた。
「そ、れ、は、ちょっと、」
「…」
「ハードルが、高い、と、言うか…、」
だろうな、と、私の答えを知っていたかのように呟いたリヴァイさん。
「出来もしないのに、聞く必要もないだろう。」
リヴァイさんは、やれやれ、とでも言うようにため息を吐いた。
………………え、それって……。
「す、」
「あ?」
「好き、なん、です、か?紐、や、Tバック…。」
「さぁな。」
送るから早く服着ろ、と言うリヴァイさん。
……え?好きなの!?紐やTバック!!?それはさすがに無理…!!
「何してる?行くぞ。」
「あ、は、はい!」
どうしようどうしよう、と私が考えている間も、リヴァイさんは普通に出かける支度をして、私を家まで送ろうとしていた。
胸にしこりを残しながら、慌ててその後を追った。
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bkm