2000年後もラブソングを


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Devote my heart to you+


4


「んじゃー、まぁフィーナの男も来た、ってことでかんぱーい!」


キン、と、本日何度目かのグラスがぶつかる音が部屋に響いた。
トイレから出ると近くに誰もいなくて、先ほどまで飲んでいた部屋に戻ると、リヴァイさんの肩を抱きながら(たぶん酔ってるから)上機嫌なゲルガーさんと、すっっごい嫌なんだろうな、って感情を隠そうともしないリヴァイさんと、それを微笑ましそうに見ているナナバさんがいた。


「いやー、俺なんか誤解してたわ!」


じゃあ乾杯し直すぞ、っていうゲルガーさんのかけ声の元、何故かそのままお酒を飲むことになった私たち。


「実はフィーナが女子高生、ってだけで手出したロクデナシかと思ってた!」
「………」


ゲルガーさんの陽気な声とは裏腹に、物凄い重たい空気が辺りを包んでいるような気がしなくもないけど、現在絶賛酔っ払いに入る私にはその空気は幾分軽減されて感じられていた、と、思う。


「りばいさんは、そんなひとじゃないです、」
「うんうん。ナナバに喧嘩売ろうとするくらいは本気だってのは伝わった!」


なぁ?と肩を組んでるリヴァイさんをニヤニヤと見ながら言うゲルガーさん。
に、青筋が立っている気がしなくもないリヴァイさんがいた。


「でもさぁ、」
「あ?」
「なんで私を『ゲルガー』だと思っていた時の態度と、実際本人を見た時の態度が違うの?」


グィ、とグラスを傾けながらナナバさんがそう聞いた。
それに対してリヴァイさんは我関せず、な顔でグラスを傾けた。


「………」
「ねぇ、なんで?」
「俺も知りてぇかも。なんでだ?」
「………」
「おい、フィーナも知りてぇよな?」
「は、はい…!」
「…」


私のこの一言に、リヴァイさんが思いっきり眉間にシワを寄せながら私を見てきた。
きっと普段なら私を「睨んできた」の域に入るであろう顔で…。


「なん、で、です、か?」
「………」


リヴァイさんはムスーっとした顔で私を見たかと思ったら、1度目を伏せ、口を開いた。


「コイツが男だった場合の方が厄介だと思ったからだ。」


コイツ、とナナバさんを親指で差した後、再び重く口を閉ざしたリヴァイさん。
…の、言動の意味がわからない現在の私。
えぇー、っと、と考え始めた時、


「それってつまり、私の方が男前だった、ってことだよね?」
「…………」


ナナバさんが、うーん、と一唸りした後で呟くようにそう言った。
それに対しリヴァイさんはもう我関せず、で、無言。


「なんだそれ、どういうことだよ?」
「だから私の方があんたよりも何倍もカッコよくてさっさとフィーナの前から始末しておきたかった『男』なんだって。」
「…………はぁっ!?」
「まぁ仕方ないんじゃない?私たち2人で歩いてて逆ナンされても私の方に女の子来るし。」
「…………」


今にも叫び出しそうだったゲルガーさんを、ナナバさんがたった一言で黙らせたように感じた。
…そしてそれに伴い機嫌が斜めになったような空気のゲルガーさんのグラスにお酒を注ぎながら苦笑いしていた。


「しっと、」
「あ゛?」
「…した、って、ことです、か?」
「………………」


そんなナナバさんたちをよそに、リヴァイさんに近づき思ったことを口にすると、これでもかぁ!!!ってくらいの、深い深いシワを眉間に刻みながらこっちを見てきた。


「なんか、」
「…」
「うれしい」
「…………あ?」


リヴァイさんは私を泣き上戸だと言った。


「りばいさん、しっとしてくれて、うれしい」
「………」


そうなのかなぁ?って実は気になっていたけど、普段泣かないようなところで涙が出てくるんだから、やっぱりそうなんだと思う。


「お前、そんなことくらいで泣くんじゃねぇ。」
「……だって、」
「あ?」
「わたしばっかり、いつも、どきどきしたり、ふあんになってて、」
「…………」
「いつもいつも、わたしばっかりで、」
「……ハァ……」


酔って怖いなぁ、と思うのは、普段抑えていた(もしくは目を背けていた)感情が一気に噴き出ることじゃないのかと思う。
1度涙が流れ始めたら、もう自分でも止められない勢いになってしまいひたすら泣きながら話す私にリヴァイさんは大きな大きなため息を吐いた。


「『だから』お前を外で飲ませるのは嫌なんだ。」
「ぇ?っ、」


直後、リヴァイさんは片手で私を抱き寄せた。


「…あ、の…?」
「…………」


リヴァイさんは、人前でこういうことするのを、すごく嫌う人だ。
それはかつてハンジさんに弄り倒されたせいにあるんだろうと、リコちゃんのお兄さんが言っていた。


「…………」


リヴァイさんは何も言わず、ただ抱きしめてくれていた。


「りばいさん、」
「…」
「だいすきです。」
「んなことは知ってる。」
「りばいさんは?」
「…あぁ、好きだ。」
「そんなこと、しってます、よ。」
「そうか。」
「はい。」




「ここ俺たちの家だって言っていいのか?」
「んー…、もう少し黙っててあげようよ。」
「いやでもこのまま先進まれても、」
「その時はあのおチビちゃんだけ追い出すから。」
「………お前蹴られそうになったこと、」
「全然許してない。」
「やっぱり?」




すっかり上機嫌になった私は、ナナバさんたちのそんな会話耳に入ることもなく(未だ)涙を流しながら、気がついたらリヴァイさんの腕の中で眠りについていた。

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bkm

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