2000年後もラブソングを


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Devote my heart to you+


2


「フィーナ、いらっしゃい!」
「お、お邪魔します…!」
「おー、来たか!上がれ上がれ!」


それから数日後、ゲルガーさんは言葉通り、ナナバさんちのお夕飯に私を招待してくれた。


「あ、あの、コレ、」
「あー、わざわざゴメンねぇ、ありがとう。」
「お!このワイン美味ぇんだよ!お前よく知ってたな!」


まさか手ぶらで行くわけにも行かず、ママにワインボトルを持たされお邪魔した。


「私じゃなくて、ママがこれ美味しいから、って、」
「あぁ、おばさんワイン好きだったもんね。本当にありがとう。」


そう言ってナナバさんは柔らかく微笑んだ。
…昔から思ってたけど、本当に男の人とでも、女の人とでも、どっちにも取れる、背もスラーッと高く、柔らかい物腰の凄く素敵な人だよなぁ、って。
ナナバさんを見ながら改めて思った。


「出来たぞー!」
「…ピザ焼いたんですか!?」
「そ。朝から生地捏ねるとこから始めてたんだよ。」
「す、すごい、です、ね…。」
「これくらい普通、普通!」


あははー!って豪快に笑うゲルガーさん。
…すごい、ほんとに料理得意なんだ、この人…。


「じゃ、乾杯しよっか。」
「待て待て、フィーナ、お前も飲めって!」
「え!?い、いや、私まだ高校せ」
「いーーって!!お前の家は隣!ここには俺たちしかいない!誰もチクらない!!飲める飲める!!」
「ゲルガー、やめなって…。」
「俺たちの結婚祝いだと思ったら飲めるよな?」
「え!!?う、あ、は、い…?」
「よーし!ナナバ、グラスもう1個持ってこい!!」


私まだ高校生で、と言いかけたけど、ゲルガーさんの押しに負け思わず頷いてしまっていた…。


「最初の一口で止めていいんだからね?」
「す、すみま、せん…。」


ナナバさんが本当に心配そうな顔をしていたのが印象深かった。


「んじゃあ、かんぱーいっ!!」
「乾杯。」
「か、かんぱい…?」


もしかして料理作りながら飲んでたんじゃ、ってくらいすごく陽気にゲルガーさんが言った後、キン、と、グラス同士が触れる音が辺りに響いた。


「どうフィーナ?飲めそう?」


ナナバさんが一口、お酒を口に含んだ私を見て聞いてきた。


「は、はい…!美味しいです。」
「お!?お前イケる口か!?飲め飲めっ!!」
「あ、や、で、でも、ちょっとだけで、」
「いーって!!明日は休み!!俺が許すっ!!飲め飲めっ!!」
「ゲルガー、ほんとにやめなって。」


最初の一口で、なんて飲みやすいんだろう、って言葉のチョイスを間違え、うっかり「美味しい」なんて言ってしまった私に、ゲルガーさんは情け容赦なくグラスにワインを注いできた。
……………ら、当然、酔っ払って自分を見失うと言うものだ(何せ飲酒経験自体が片手で数えるほどしかないのだから…)


「はっ!?お前男いんのかよっ!!」


一体なんの流れでそうなったのかはすでにわからないけど、ゲルガーさんから恋人の有無を聞かれ(しかもこの人いないこと前提で聞いてきた)いる、と、答えたらこう言われた。


「しかもおばさんの話だと、ただの『彼氏』じゃなく『婚約者』らしいよ。」


私の言葉を付け加えるように、グラスを傾けながらナナバさんが言ってきた。


「はっ!!?婚約者!!?お前女子高生だろっ!?いつの時代の話だよ!!もっと遊べよ女子高生っ!!!」


ナナバさんの言葉に、ゲルガーさんが多いに反応したのはうっすら覚えている。


「あそんでますよ、」
「遊んでねぇだろ!!なんだよ婚約って!!相手どこのどいつだ!!?」
「それが『あの』ダリスコーポレーションの社員!」
「はぁぁぁっ!!?おまっ、援交してたんじゃねぇだろうな!?」
「…あんたなんでそんなに必死になってるの…。」
「お前はなんでそんなに冷静なんだよっ!!お前が俺にコイツを『一人っ子だった自分の妹のような子』って言って紹介してきたんだろうがっ!!お前にとって妹なら俺にとっても妹だろうがっ!!!」
「………ゲルガーさんて、」
「あ!?」
「いいひとですねぇ…!」
「でしょー?見た目からは想像出来ないでしょう?」
「はいー」
「何和んでんだお前らはっ!!!」


なんだかよく覚えてないけど、とにかくゲルガーさんは見た目と違ってなんて良い人なんだろう、って感じていた。
その私の言葉に、ナナバさんがノロケのように(ように、ではなくノロケそのものなんだろうけど)にこにこと答えたのを覚えている。


「お前、遊ばれてんだよ。」


それから何をどう話したのか、話の中心はリヴァイさんのことで。
唐突にゲルガーさんがリヴァイさんは遊びだ、と言ってきた。


「そ、んなこと、」
「いいや、遊ばれてる!お前よく考えてみろ。お前の話だとソイツはカッコよくてめちゃくちゃ仕事も出来て社内で言い寄る女もゴロゴロいるんだろ?」
「ちがいます、」
「あ?」
「すっごく!カッコよくて、めちゃくちゃしごともできる、です。」
「…………すっげぇ、カッコよくて、めちゃくちゃ仕事も出来るんだろ?」
「はいっ!」


ゲルガーさんが今さっき出してくれたこのトマトペンネ、美味しいなぁ、なんて思いながら口にしていた。


「そんな奴がお前みたいな女子校生と本気でつきあうか?」


作り方教えてもらって、今度リヴァイさんに作ってあげようかな、なんて思った時、ゲルガーさんがそう言ってきた。


「ちょっとゲルガー!」
「いやだって冷静に考えてナナバだってそう思わねぇか?」
「…そりゃあ、まぁ…、ちょっとどうなんだろうなぁ?とは思ったけど、」
「だろ!?普通に考えておかしいよな!?なぁ、お前騙されてんじゃねぇのか?」


この時、私が何を思ったか、なんて、自分でもわからない。
だってゲルガーさんの言葉に本当に頭が「真っ白」になったんだから。


「そ、んな、こと、」
「あるだろ!?お前、自分でもそう思ってるから言葉に詰まんじゃねぇのか?」
「……ち、ちが、」
「おい、俺たちがソイツ見てやるからここに呼び出せ。」


後々になって、ナナバさんからこの時すでにゲルガーさんも相当出来上がってた、って聞いたけど、この時の私はそんなことわかるはずもなく(何せ自分の方がすでにヤバかった)
冷静になって考えたらそんなこと迷惑極まりないのに、半泣きになりながらリヴァイさんに電話をかけていた。

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bkm

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