2000年後もラブソングを


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Devote my heart to you+


1


私の家のお隣には、


「フィーナ!」
「ナナバさん!」


ナナバさんと言う、物凄くカッコいいお姉さんがいる。
私とは少し歳の離れているナナバさんは、


「制服可愛いねぇ!」
「あ、ありがとう、ございます…!」


そこらへんの男の人よりも、カッコいいお姉さんだ。
ナナバさんは、高校卒業後1人暮らしを始めた。
そのまま家に戻らずずっと1人暮らしをしていたけど、ナナバさんちのお父さんの病気をきっかけに、家に戻ってくることになった。
しかも、


「よー、フィーナ!」
「ゲルガーさん…、お、おは、よう、ござい、ます…」


ゲルガーさんと言う、お婿さんを連れて戻ってきた…!
ナナバさんにはすっごく申し訳ないけど、何を思ってこの人に決めたんだろうか…、ってくらい、謎な人を連れて戻ってきた(何せ今のこの時代にリーゼントな人だし…)
本当に、すごく失礼なことなんだろうけど…、ゲルガーさんは、私のような人間にも気軽に挨拶してくれる人だけど、ちょっと…、打ち解けるまで物凄く時間がかかるんじゃないか、って思わせる人だった…。


「すみません、レジお願いします。」
「は、はい!」


元々、人との距離と言うのがきっと物凄くある部類の私は、ナナバさんとはゆっくり話してみたいものの、ゲルガーさんと言う障害がある以上、なかなか人並みに話すことすらままならない日々を送っていた。
そんなある日、


「あれ?」
「あ、」
「何、ここでバイトか?」
「は、はい…。」


ゲルガーさんが私のバイト先の本屋さんにやってきた。
手に持っているのは、「イタリア料理大全集」


「ナナバさん、」
「あ?」
「に、です、か?」


物凄くゲルガーさんに不釣り合いなその本に、思わず自分から聞いてしまっていた。


「お前知らねぇの?」
「え?」
「アイツ、料理出来ねぇんだぞ?」
「………え!?」


ゲルガーさんは財布を用意しながら、驚いた顔をした。


「これは俺が作るの。」
「えっ!?」
「俺こう見えてコックで、料理全般大好き。」


俺、と、自分を指さしながらゲルガーさんは言った。
……今の一瞬で(何故か)頭にねじりハチマキをして、お寿司握ってるゲルガーさんを想像してしまった……。


「コ、コックさん、なんです、ね…。」
「おー。まだまだ半人前で給料だって並以下で結婚なんて出来ねぇ、って言ったら、ナナバが『私が食わせて行くからうちに来い』って言ってな。」


ナナバさん…、なんて男前なんだろう…!


「アイツ本当に稼ぎいいしさ。なら日々の料理くらいは、なぁ?」


どこか照れたように笑うゲルガーさんは、全然怖い、とか、そういうものはなくて…。
あぁ、「だから」ナナバさんは、この人と一緒に戻ってきたのか、な…、とか。
そんなこと思った。


「110円のお返しです。」
「おー、さんきゅ。んじゃあ、まぁ、頑張れよ、バイト。」
「は、はい!」


今度俺の作ったメシ食わせてやる、と、ニヤリと笑いながらゲルガーさんは去っていった。
…………見た目はちょっと、怖い人、だけ、ど、意外、と、言う、か……。
ナナバさんが選んだ人なだけあって、良い人、なの、か、な、って。
お隣の「ナナバさんのちょっと怖いお婿さん」ていう認識から、お隣の「ゲルガーさん」と言う認識に変わった瞬間だった。
見た目がちょっと怖い感じだけど実は優しい良い人、なんて。
なんかリヴァイさんみたいな人だなぁ…、とか。
そんなこと思った。


「は?隣の兄ちゃん?」


そんなこと思ったら、なんとなくリヴァイさんどうしてるかなぁ、なんて思って(頻繁に連絡してるし会ってはいるけど)思わず電話した。


「はい。昔お世話になったお隣のお姉さんが連れて来たお婿さんです。」


そしてそのままゲルガーさんの話をした。


「…いくつだその男。」
「え?や、い、くつでしょう、ね?リヴァイさんと同じくらい、か、なぁ?」
「………」


見た目怖い感じだけど良い人そうです、って話をしたらゲルガーさんの年齢を聞いてきた。


「あ、の…?」
「…まぁ、なんでもいいが、あまり深入りするな。」
「え?」


そしてそう言うだけ言って、リヴァイさんは電話を切った。
……深入りするな、って、お隣さんなんだけど……。
なんて。
この時のリヴァイさんがどういうつもりでそう言ったのか思い至るなんてこと出来るはずもない私は、頭全体にクエスチョンマークを飛ばしながら通話終了ボタンをタップした。



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bkm

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