キミのおこした奇跡side S


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卒業。そして、


歴代1位


「忘れようとも忘れられるはずない。夜の帳よりも深いその艶やかな黒髪、その漆黒の瞳」


相変わらず目を白黒させてるあおいの頬を触りながら台詞を言う。


「どのような姿であれ、姫を見間違うわけなどない。あなたこそ、私が捜し求めていた姫だ。…名を、教えてはくれないか?」
「…シンデレラ」
「シンデレラ!ああ、ようやくその名を知ることが出来た!」


園子もドラマの見すぎだっつーの!
よくこんな恥ずかしい台詞思いつくよな。


「姫。改めて言わせてほしい。…我が妃は姫しか考えられない。私の、私だけの姫に、なってはくれないか?」


チラッと舞台袖でカンペを構える園子が目に映る。


もっと感情込めろ!!!


わかってる。
アイツはこの舞台の演出家で、これは舞台の上の「シンデレラの王子」としての台詞だ。
「工藤新一」が言ってるわけじゃない。
でも恥ずかしいもんには変わりねーんだから仕方ねーだろ!?


こくこくこくこく


首折れるんじゃねーの?
ってくらいの勢いであおいが首を縦に振った。
…おい、園子。
ほんとにアレやんのかよ…。


「なんという幸運な日だ!」


どうしても躊躇う俺がいるのは確かで。
でも、


そのままいけ!!


…知らねーぞ、どうなっても。


「我が愛しき人よ」


あおいの左手を取る。


「愛しています」


俺は王子役だから手袋してるが、灰かぶり役のあおいは素手のまま。
その薬指に、クチビルを落とした。


「あなただけを」


台本通り。
あおいを舞台の中央で抱き寄せた。
そりゃー、見た目がこれだけちいせぇんだから、十分考えられることなんだけどな。
それでも実際にこうやって抱きしめると、ほんっとちいせぇんだな、とか。
コイツ確か俺と同じもん食ってたはずだよな?とか。
そんなこと思った。


「いっ」


そんなこと思ってる最中、あおいが何か口走った。
…い?


「いやぁあああ!!!」
「ぐあっ!?」
「あ、ちょ、あおい!!!」


いっ、てぇぇぇぇぇ!!!
あのバカ女人の顔面ぐーで殴りやがったっ!!
何してくれんだよっ!!?


「ぷっ」


客席からそれまでの静寂を打ち消すかのように、噴出す声が聞こえた。


「あはははははは!!工藤フラレてやんの!!」
「うるせぇっ!!あんなシンデレラこっちからお断りだっ!!!」


あのバカ女!!
手加減ナシで思いっきり殴りやがってっ!!!


「し、新一、口切れてる・・・」
「わーってるよっ!!」


舞台袖に引っ込んで蘭からハンカチを借りる。


−え、えーっと、こうして、シンデレラと王子は添い遂げることなく、別々の人生を歩むのでした。め、めでたし、めでたし?−


園子のナレーションで館内が大爆笑する。
幕が上がる前に俺が公言した意味とは真逆の意味で歴代1位になったであろう謝恩会が終わった。

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bkm

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