キミのおこした奇跡side S


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謎の壁と黒ラブ事件


真相


「昨日1日かけてやっと見つけました」


土曜の夜の父さんのヒントから導き出した答え。
そして、そこにあった真実。
月曜の10時、あおいとまた米花公園に来て秋元さんと2人の刑事の前で事件の種明かしだ。


「秋元さんが見た黒い犬」
「本当かい?やっぱり盲導犬?」
「それは見てのお楽しみです。秋元さん、あの日と同じように草むらに横になってもらえませんか?それと刑事さんも」
「俺もか?」
「はい、お願いします」
「工藤くん私は?」
「オメーは俺の隣にいろ」


草むらにスカートで横になってパンツ見えたらどーすんだよっ!!
…よし、準備できたな。
これが俺の初事件、謎の壁と黒ラブ事件の真相だ!


「…誰に手振ってるの?」
「まぁ見てろって!」


彼女が近づいてくる。
そう秋元さんが言う「盲導犬を連れた調教師」が、ね。


「はい!体を起こしてください!」
「…うっ!?」
「…えっ!?…ギター、ケース?」
「そう。黒い犬の正体はギターケースだったんです。酔っていた上にまどろんでいた秋元さんはギターケースを手にした彼女がまるで黒ラブを連れている風に見えたんです。それもハーネスをつけた盲導犬のように」


そこまで説明して、秋元さんたちは立ち上がり歩いてきた彼女の方に歩み寄った。


「確かに俺も一瞬犬かと思った…。俺は酔ってもまどろんでもいないのに…」
「それは僕が刑事さんに現れるのは黒ラブだという先入観を与えていたからです。同じように秋元さんは以前この公園で何度も黒ラブの盲導犬を見ていました。そのことが潜在意識にあって、ギターケースを黒ラブと見間違わせたんです。…最も、似ていることは似ていますよね?僕も昨日実験してみましたが、彼女が歩くにつれ、ギターケースの前後が上下に揺れ、あたかも黒ラブの頭と体が動いてるように見えましたから」
「そうだったのか…」
「なるほどな…」
「改めてお聞きします。先週の木曜の10時半頃、この道を通りましたか?」
「ええ。いつもは公園の中は通らないんだけど、あの日はなんとなく…。それで、ここを通った時、彼を見たわ」
「…これで秋元さんのアリバイは成立ですね!」
「ああ、そのようだな」


よしっ!
これで事件解決だ!


「…ホシが逮捕された。強盗の仕業だったらしい。あんたには迷惑をかけたな」


そう言い残して2人の刑事は慌しく公園を後にした。
これで依頼人秋元さんは自由の身だ。
ギターケースの女性とも別れて、公園に随分と静寂が訪れた。


「良かったですね、真犯人が逮捕されて」
「キミには本当に世話になった。ありがとう」
「…いえ。僕も勉強になりました。それじゃあ、僕たちもこれで。…行くぞ」
「…ついでだし古典も…」
「行くんだよ!」
「…ひゃい」
「キミ!」


あおいと歩き始めたら秋元さんに呼び止められた。


「キミはきっと、良い探偵になれるよ」
「いや…、今回の推理は僕じゃなくて、先に父さんが…」
「え!?優作さんが解いたの!?」
「キミが解いたんじゃないのかい?」
「ええ。…でもいつかは越さなきゃいけない名探偵ですけどね」


そう。
いつかは必ず父さんを、って、


「…オメー何やってんだよ」
「え?何って工藤くんの頭撫でてんの」
「…なんで?」
「昨日有希子さんに『ねぇ、あおいちゃん。新ちゃんもう少しで事件が解決できそうだから、解決したら一緒に抱きついて飛び跳ねて喜んであげて!』って言われたから」


あのババァ…!!


「でも本当は優作さんが解決したんでしょ?だから今回は頑張った工藤くんの頭を良し良しと撫でてあげた!」


なんかイマイチ釈然としねーけど。
…まぁいっか。
たまに。
ほんとにたまになら。
こーいうのも悪くねぇ。
少し顔が熱い気もするけど、そのまま学校に向かった。
…この後蘭ともなんとか和解し、こうして俺の初事件は無事幕を下ろした。

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bkm

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