キミのおこした奇跡side S


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謎の壁と黒ラブ事件


与えられたヒント


翌火曜日2時間目化学。
ちょーっと液体を混ぜて化学反応起こさせ教室中がパニックになってる隙に学校を抜け出した。
米花公園で昨日同様に聞き込みをするも、全く収穫なし。
さすがに空振りが続くと凹む。
公園近くの動物病院でも黒い大型犬についての情報の聞き込みをしてみるもののこっちも手がかりナシ。
翌水曜日2時間目体育。
外周中にうまいこと抜け出し公園へ直行。
昨日とは違う顔ぶれだ。
やっぱり毎日来て見ないとわからないものだ。
今日の聞き込みでここを散歩コースにしている黒い大型犬のいる家に直接お邪魔して聞き込みをするものの、ここでも空振り。
うーーーん…。
だいたい10時半頃に散歩で使いそうな黒い大型犬がいる人のところには聞きこみに行ったんだけど、どうも…。


「今日も調査?」
「ん?あー。どうも引っかかるんだよなぁ…」
「でもさ、」
「あん?」
「今日の2時間目音楽だから工藤くんは出た方がいいよ。今後のためにも」
「…どういう意味だよ」


あおいが心配して声をかけてくるものの俺の決意は変わらない。
…いや、あれは心配か?
木曜日2時間目音楽。
今日は犯行があった日と同じ曜日。
初心に帰ってもう1度ロビンくんに聞いてみる。
真新しい手がかりはなし。
そして金曜日。


「あれから4日間米花公園に通ってみました。でも、秋元さんを見た人は…。あのおばさんは壁の向こう側を歩いていたって言い張ってますし…。偶然壁のこちら側を同じ犬が通った可能性があると思って聞き込みをしたんですが…」
「見つからないんだね?」
「ええ…。残念ながら」
「これ…手がかりになるかわからないんだけど…」


喫茶店で情けない調査報告をしていた時、秋元さんが口を開いた。


「黒い犬を見たときフッと、盲導犬かな?って思ったこと思い出したんだ」
「盲導犬、ですか?」
「ああ。前によくあの公園を黒ラブの盲導犬を連れた人が歩いてたから。訓練士さんだと、思うんだけど…」
「わかりました!明日その線でも調べてみます」


翌土曜日。
秋元さんの情報を元に盲導犬センターなどに聞き込みを行い、すっかり日も暮れ自宅へ。
家に帰って自然と足が書斎に向く。
…黒ラブの盲導犬、か。


カチャ


「ん?」
「あら、新ちゃん!ここにいたの?」
「ああ…。この部屋にいると何故だか落ち着いて考えられるんだ…」
「そう。で?例の謎の壁と黒ラブ事件は解決したのかしら?」


部屋に入ってきたのは一昨日帰国してきた父さんと母さん。
俺が必死に調査してること、あおいが喋ったらしい。


「今日1日盲導犬センターとか回ったんだけど、これといった収穫は…」
「ふぅん…。ねぇ優作。相談に乗ってあげたら?」
「ん?ああ…。あの米花公園ならよく散歩するがいろんな人を見かけるよ。例えば、」
「いいよ!父さんの助けは借りない!あくまでも俺1人の手で解決したいんだ」
「…なんて、大人ぶるのが好きなんだからぁ!」


そんなんじゃねーし!
…どうして秋元さんは黒い犬を見た時盲導犬だと思ったんだろう。
確かに盲導犬に黒ラブは多いけど、それだけが理由だろうか…。


「気分転換に、バイオリンでも弾いてみたらどうだ?小さなホームズくん?」
「今そんな気にならないよ!…それに、ホームズがバイオリンを弾くのは行き詰った時じゃなく、事件と事件の余暇だって父さんも知ってるだろ?」
「残念!久しぶりに新ちゃんのバイオリン聞きたかったのにぃ!」


…あっ!
ガラスに映る自分の姿を見る。
まさか…、まさか!
もしかしたら、だから父さんは…。


「そう言えばあおい君が昨日トランペットを吹いてくれたな」
「え?」
「そうそう!あおいちゃんトランペット吹く時楽しそうね?って言ったら楽しいですから!ってすっごい可愛い笑顔で答えてくれたのよ!今度新ちゃん、セッションしたら?」
「…アイツ昨日うちに来たのかよ」
「あーら、だって新ちゃんが調査で忙しいからあおいちゃん1人になっちゃうかもって思ってお夕飯一緒に食べたのよ!ねぇ、あなた?」
「そうそう。いくら事件調査に忙しいとは言えたまの一家団欒、夕飯くらいは一緒できないものかと零したら、あおい君が…」


そこまで言ったら父さんがフッと思い出し笑いをした。
それにつられて母さんまでニヤニヤと。


「…なんだよ」
「ううんー!あおいちゃんたらね!工藤くんは今中学生探偵として一生懸命頑張ってるんですからそんなこと言わずに応援してあげてください!って私たちに言ってきたのよー!」
「まさかあの子からそんな説教される日が来るとは思わなくてな」
「なんかもう内助の功って感じで私感激しちゃった!!」


アイツそんなこと…。
少しだけ、口元が緩む自分に気づく。
だけどその直後さらにニヤニヤした母さんと目があった。


「もー新ちゃんたら顔赤くしてうっれしそうに!」
「べ、別に嬉しそうになんかしてねーだろっ!」
「事件解決したらあおいちゃんとのセッション聞かせなさいよー!」
「新一のバイオリンとあおい君のトランペットか…。それを聞きながらコーヒーを飲むのもいいかもしれないな」
「あら、じゃあお茶菓子用意しておかなきゃね!」


俺の言い分に全く耳を貸さず、話がどんどん進んでいく。
いつものことだけど。
…事件解決はすぐそこまで来てる。
あと一歩だ。

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bkm

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