キミのおこした奇跡side S


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謎の壁と黒ラブ事件


深まる謎


「秋元さん、お待たせしました」
「やぁ、工藤くん…と、そっちの子は妹さん?」
「ああ、コイツは僕の助手です」
「芳賀あおいです」


公園に着き依頼人秋元さんと合流。
…見た目だけじゃあおいが俺の姉貴に見えることだけは絶対ないからなぁ。
助手?って感じの顔をしている秋元さんに、朝蘭から聞いた情報を伝えた。


「黒ラブ?」
「ええ!恐らく今日もあの道を通るはずです。それまで一緒に目撃者を探しましょう」
「しかし、ほんとにいいのかい?授業の方…」
「3時間目には戻ります」
「え!?戻るの!?3時間目あの眠くなる古典だよ!?」
「戻るんだよ!!」
「…ひゃい…」
「休み時間も合わせて45分間はここにいられますから」


うーわ、コイツあからさまに授業サボりたいです!って顔してやがる!
だからオメーはバカなんだよっ!!


「お!…すみません、ちょっとお聞きしたいんですが」


公園内が騒がしくなったと思ったら、園児を引き連れた保育士が散歩にやってきた。
さっそくその人たちに話を聞くことにした。


「見なかったと思うけど?」


まぁ、いきなりうまくいくわけがねーか。


「なぁに?どうしたの?」
「先週の木曜日、あちらの方を見なかったか、って」
「…さぁ」
「俺見たぜー!」
「私も見たー!」
「僕も見ましたー!!」


え?


「本当かい?キミたち」
「うん!あのね、歩美ちょうちょさんを見つけたの!」


目撃者・帝丹幼稚園吉田歩美ちゃん(3)の話によると、同小嶋元太くん(3)と円谷光彦くん(3)の3人でちょうちょを追いかけてこのブロック塀を超えて芝の上にやってきたところ、横になっている秋元さんを目撃。
死んでいるのかと思ったが、寝ているだけだと安心したところ先生に声をかけられ秋元さんの前から去っていった、と。
いいぞー!


「どうです?これで秋元さんのアリバイは成立ですね!」
「だがな、3歳児の証言じゃ…」
「ですよねぇ…」


たとえ子供でもはっきりと目撃者がいるなら他にも目撃者がいておかしくない。
後はしっかりとした大人の目撃者を探すだけだ!


「じゃあ、秋元さんが見た黒ラブの女性を見つければ、この子たちの証言と併せてアリバイを認めてもらえますか?」
「んー?」
「聞こえてたんでしょう?僕たちが話してるの!」
「まぁ…考えてもいいが?」


あおいはと言うと、すっかり小さな目撃者たちと仲良くなっていた。
…コイツにこういう特技があったとは知らなかった。
チビ同士意気投合したのかもしれない。
先生とか?向いてんのかも、とか思った。


「ありがとう!君たち」
「バイバイ!またね!」
「「「ばいばーい」」」


小さな目撃者に手を振るあおいを横目に、秋元さんと向き合った。


「子供達ではなく、先生が見ていてくれたらな…」
「でも、収穫はありましたよ!後はその黒ラブのおばさん。そろそろ来てもいいころだけど?」


ワン!ワンワンワン!


「この声だ!」


ワン!ワンワンワン!


でも黒ラブの姿は見えない。
…まさか、


「ここにいてください!」
「あ、工藤くんどこ行くの!?待ってよ!!」


壁の裏側に行くと大きな黒ラブを連れたおばさん。
あの人だ!


「すみません!この犬ロビンですか?」
「そうよ。この子はロビンちゃん!」
「先週の木曜日、この壁の向こう側の道を通りませんでした?今と同じ時刻に」
「通らないわ。いつもこの道を通るってこの子が決めてるから」
「でも、たまには向こうの道を通ることもあるんじゃないですか?よーく思い出してください。4日前の木曜日です」
「だから、通ったのはこの道ですって。木曜はちょっと肌寒い日で、今日と同じように壁の上にカラスが止まってて。この子吼えたのよ。だからよく覚えてるわ!」


…どういうことだ?
秋元さんが聞いた声は十中八九このロビン。
でも、壁のこっち側を歩いてたんじゃ秋元さんから見えるはずがない。


−きっと、透視能力があるのよ!−


んなバカなっ!!
認めねぇ!
俺はそんな非現実的なことぜってぇ認めねぇ!!
絶対に何かトリックがあるはずだっ!!
深まる謎に、少しの焦りを感じはじめていた。

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bkm

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