キミのおこした奇跡side S


≫Clap ≫Top

謎の壁と黒ラブ事件


キミの言葉の威力


話を要約するとこう。
依頼者秋元さんは3日前の木曜日の午前10時半頃起こった殺人事件の犯人として疑われている。
木曜日被害者宅を訪れる予定だった秋元さんは、水曜日から翌木曜日の朝まで飲んでいて、帰宅途中にこの公園の茂みで寝ていた。
その間10時から1時間程度。
木曜日はそのことがきっかけで風邪をひき被害者宅には行かなかった。
だが勘違いから犯行時刻である10時半にマンションにいたと答え、その後実際のアリバイを訂正したが時既に遅く、警察の心象を著しく悪くしたため疑われている。
そこで自らここで自分を見た目撃者を探している、と。
なるほど…。


「わかりました。まず第1に目撃者探しは日曜日ではなく、平日の方がいいでしょう。平日であれば、ここのような広い公園は同じ時間に散歩やジョギングをする人が多いですから。本当は事件が起きた日と同じ木曜日がベストですけど」
「ああ、そうだね」
「それと、他に何か覚えていることはありませんか?秋元さんの方で誰かを見た、とか」
「それが…ずっと考えてるんだけど思い出せなくて…」
「壁打ちや壁蹴りをしてる人は?」
「その時は…いなかったな…」
「じゃあ音はどうです?例えば−」


ワンワンワン


「黒い犬だ!」
「え?」
「そうだ!あそこでまどろんでいた時、犬の声を聞いた気がして体を起こして見たんだ!そしたらこの道を黒い犬を連れた女の人が通っていった!」
「その女の人の顔は?」
「うーん…、いや、覚えていない…」


石垣越しに見えた黒い犬を連れた女性。
石垣の高さは50センチ強。
てことは大型犬だ。
黒のラブラドールか、フラットコーテットレトリバー、それにドーベルマンあたりか…。


「手がかりになるかな?」
「十分です。明日の月曜日、10時にまたここで会いましょう。うまくいけばその犬を連れた女性に会えるかもしれません」
「しかし、君、学校は?」
「なーに、こっちの勉強の方が僕にとっては大事ですから!」


そう。
これは「探偵」としての第一歩の事件。
俺がぜってぇ解決してやる!



「てなわけで、今日の2時間目俺フケっから!」


月曜の朝、あおいと蘭に事件の説明をしながら学校に向かう。


「先生に見つかっても知らないよ?…それより、その人が見た黒い犬ってロビンくんじゃないかしら?」
「「ロビンくん?」」
「うん。うちの近所にいつも黒ラブつれてるおばさんがいてね?私も犬好きだからロビンくん撫でながら時々立ち話するんだけど、毎朝9時半から1時間くらい米花公園を散歩させるって言ってたよ?」


よっしゃ!
いきなり有力情報!!
さすが蘭!
地域密着型の生き方してるだけあるぜ!


「最後に壁の裏側を通るのが散歩コースだから間違いないと思う」
「そーかぁ!よし、今日も…って、壁の裏側じゃなくて表側だろ!」
「え?」
「壁の裏側じゃ秋元さんがいた場所から」
「ううん、壁の裏側だって言ってた。その道がロビンくんのお気に入りで」
「そんなはずねーよ!壁の裏側じゃ壁に遮られて見えねぇだろーって!」


秋元さんが言っていたあの位置からは壁の裏側が見えるわけがねぇ!
その日はたまたま表側を通ったに違いない。


「わかったー!きっと透視能力があるのよ、その秋元って人!」
「「はいぃぃ?」」


今蘭の発言とは思えない、どちらかと言うとあおいの発言とも取れる言葉を聞いた気がした。


「もしかして私のことバカにしてない!?」
「いいやぁ、別に?」
「新一は信じないかもしれないけど!予知能力とかテレパシーとかほんとにあるんだよ!」
「バーロォ!んなのほんとにあったらなぁ!事件なんてみんな未然に防がれて警察も探偵もいれねぇ平和な世の中になってるっつーの!バーカッ!!!」
「何よ!バカバカ言わないでよ!世の中にはねー、新一なんかじゃ解けない謎がいーーーぱいあるんだからっ!!」
「んなもんあるわけねー!」
「ある!!」
「ないっ!!」


俺に解けねぇ謎だと!?
そんなのあるわけねぇ!!!


「あおいはどう思うっ!?」
「え?」
「オメーはどっちだっ!!?」
「え!?………く、工藤くんなら解けるんじゃないかな?」
「はあああああ!!?」


−なれるよ。工藤くんなら−


ほら、な!
コイツなら、わかってくれる。
俺に解けねぇ謎なんかねーんだよっ!!
この言葉で俄然俺のヤル気スイッチが入ったのは言うまでもない。


「もう知らないっ!!!!あおいもあんまり新一調子に乗せないでよ!!!」


そう言って蘭は怒って先に歩いて行った。
あの単純短気女が!


「蘭怒って行っちゃったよ?」
「いーんだよ!あんなヤツ放っとけば!」


蘭なんか放っとけっての!


「それより、さ!」
「え?」
「オメーも行くか?」
「どこに?」
「…オメー話聞いてなかったのかよ」
「…あ!米花公園行くんだっけ?」
「そー。行かねぇ?オメーも!」
「…うーん…」


コイツが着いてきたからって、はっきり行って猫より役に立たないと思う。
でも、俺の初めての事件、コイツに見ててほしいって、なんでかそう思った。


「2時間目だっけ?」
「そ!ハゲの数学!」
「行く!」


コイツ、ハゲに集中攻撃されるもんな…。
あおいだけじゃなく、平均点以下の人間にねちねちねちねちと…。
でもまぁそのお陰で一緒にぬけるんだし、いいか。


「じゃ、俺が声かけたら後ろからこっそり抜けんぞ!」
「でも2人で抜け出してバレないかなぁ?」
「大丈夫!オメー教壇から見たらいるかいないかわかんねーくらい小せぇから!」


…コイツ今明らかに「ちっ」って顔しやがった。
まぁそれも今のうちだぜ?
中学生探偵・工藤新一をオメーに見せてやるよ!

.

prev next


bkm

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -